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元旦。

【初めましての方へ】


 前作ありの作品ですが、

 できる限りこの話からでも入れるように説明を入れつつ書いていこうと思います。

 (7/14更新時点ですでにちょ、ちょっと難しいかな……となってきてます。すみません)

 個人的には以前までのお話の反省を活かし、

 文章的にも物語的にもこちらの方ではもっとマシなものを書こうと思っているので、過去作品を見られるのは恥ずかしい部分がかなりあります……。


 それでも読んでやるという方は、

 長編「私のお兄ちゃんが天使すぎて生きるのがツライ!」

 番外編「私のお兄ちゃんが天使すぎて生きるのがツライ!~プリンセスホリデイ~」

 を読んで「ははーん」と思っていただければ幸いです。


 この話は私の心のお薬として書いて参りますので、

 更新は週一、ヘタすりゃ月一になるかも知れません。

 それでも応援していただければ日々の励みになります。

 よろしくお願いします。

 実際、自分と血の分けた身内がどんなにかわいかろうがかっこよかろうが、同じ屋根の下で暮らしていてそれにときめいたりなどはしない。

 血のつながりとはそういうもので、それが通常で日常で正常なのだ。

 それは理屈ではなく、人間の生きていく上での本能のようなものなのだろう。

 だって、毎日顔を合わす自分の身内にいちいちときめいていては頭がおかしくなってしまう。

 だから、


「セリカちゃん、セリカちゃんも早く着替えないと花咲さん迎えにきちゃうよぉ。セリカちゃんも初詣は着物で行くんでしょぉ?」


 だから、私は頭がおかしくなってしまいそうなのだ。


 新年早々脳が溶けるのではないかと思うようなかわいらしい声で何度も自分の名前を呼ばれ、こたつから顔をあげるとそこに私の双子の片割れの姿があった。

 リビングに降臨したそれを見て、二度寝モードに入っていた私の目は完全に醒めた。


 赤の絹布に咲き誇る白牡丹に、凛とした菊花模様の着物姿。

 お団子にしてサイドにアップにした金髪は、両耳の前にだけ細く垂らしていて、それが何とも言えない色気を漂せている。

 そしてその碧い眼がまっすぐ私の、私だけを見つめている。

 

 実際、自分と血の分けた身内がどんなにかわいかろうがかっこよかろうが、同じ屋根の下で暮らしていてそれにときめいたりなどはしない。


 ……んなものは理屈だ。

 

 今は亡きフィンランド人の母の血を純度100で受け継ぎ、天使としか思えないような美しさを湛えた存在を目の前にして、身内だの双子だの何だのはただの肩書きでしかない。


 しかもだ。

 雪のような白い肌も、近くに寄ると甘い匂いのする金髪も、地中海ブルーな大きな瞳も、ビューラーいらずのカールした長い睫も、たまにちろりと見せるピンク色の舌も……そのどれもこれもが女の子なのに……男の子なのだ。


 ……最高じゃないか!

 もちろん世界の皆にはこのことは内緒だ。

 だって、中見も外見も完全完璧美少女なのだから、わざわざそれを覆すような必要もない。


「まだ花咲が来るまで二時間はあるよお兄ちゃん」


 私は着物姿の天使の美しさを眩しく思いながらもあえて平静を装ってそう言う。


「二時間なんてあっと言う間だよぉ。『あっ』て言ってたらすぐに来ちゃうんだから」


「来てないじゃん」


「もぉー例えでしょぉー。セリカちゃんがいつまでもこたつから出てこないからぁ」


「でも、あんまり早く着物に着替えると疲れちゃわない?」


「ええー、全然だよぉー。だって、お洋服と違って着物は一年に一度しか着ることないんだよ」

 

 目をらんらんと輝かせながら興奮した様子で私に語ると、髪飾りにぶら下がった藤の花の細工がゆらゆらと可憐に揺れる。

 私がもし魚だったら間違いなく食いついているだろう。

 いや、魚でなくても食いつきたい。

 食いついて、そのまま頬ずりして、髪を少しほどいて、着物を少しだけはだけさせて、足袋は片方だけ脱がせて、新雪のようななめらかな腿を擦りながら、陶器のようなぴかぴかの肩にかぶりついて……ああ、なんてことだ……やりたいことが多すぎて、一度にやりつくせないよ!

 

「え、えぇ、どこか変かなぁ……」


 私の舐めあげるというよりはむしゃぶりつくような眼球運動を、着こなしチェックと勘違いしてその場で回って見せるお兄ちゃん。

 もう目が潰れそうだよ。

 完璧です。百点です。


 完璧だからこそ壊したい。

 美しいからこそ汚したい。

 この生きる芸術、神様の(性的)いたずら、地上の天使こそが我が兄、星良(セイラ)である。


 私は生まれてからずっとひとつ屋根の下に住んできて、未だにこの天使の美しさに慣れるなんてことはない。

 歳を重ねるごとにますます女の子になっていくこの兄を、私はどうにかしてしまいたくて、どうにかなりそうなのだ。


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