3 遠い昔の少女の日記
ついてない。時期が悪かったみたいだ。キクジン村は湧き出した雨に飲まれて、湖になってしまっていた。
ならばどこにいるのだろうか、かつて私の面倒をこれでもかというほど厚く焼いてくれた子は。
あの小さな体で、一人の子供を育てるという重荷を背負った少女は。
役目を背負わされるということは、面倒を押し付けられるということだ。
皆で分け合えば小さく済むことなのにもかかわらず、まとめて一人の人間に押し付ける。
ひどいことをすると思った。とはいえ、このことに関しては完全に私が悪いと自覚している。
全てがわからなかった当時は自分の気持ちも当然理解できていなかったが、今思えば怖かったのだ。私のようななんの価値もない存在に目をギラつかせる、あの住民達が。
まっすぐに心配の気持ちを傾けてくれた彼女の心が嬉しくて、つい甘えてしまった。日々疲労してゆく様子にはじめて、自らの過ちへ気がついた。でも、気がつくのが遅すぎた。今の私の中心には、彼女がいる。言葉から箸の使い方まで教えてくれた彼女に早く会いたい。そして、何かをしてあげたい。
嫌われているかな、それも仕方ない。謝るしかない。あの日、なにも言わずに居なくなってからのことを話そう。
別の世界に行っていたんだと。雲のこと。向こうでできた家族のこと。時折思い出すあなたたちのこと。あとは、学校のこと。テレビのこと。他にもきっと、沢山ある。
勘に頼ることになるかもしれない。
記憶に残る気配を目指して、いろんな街を歩くところから始めよう。手始めに、そうだな。港町ブラウにでも。




