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 いつか、綾さんにはお話したと思うのですが、私たち【マーヴル】は地球のすぐ裏に住んでいる者であると。


 勿論人間や、地球の生物にわれわれの存在が気付かれたことなんてありません。私たちはそこら辺は配慮してますから。


 ですが、たまに、というか、割とと言いますか、我々の世界に入り込んでくるモノがいます。


 それはヒトの形をしていたり、動物の形をしていたり、だけども、そのどれもが同じではありません。


 私たちはそういうモノたちを総じて「フェイク」と名付けています。これは貴方達の世界の言葉から頂きました。


 フェイクは単独でやってくる場合もあれば、集団でやってくる場合もあります。

 少ない数なら私たちだけで何とかできるのですが、数が増えると私たちだけでは追い付きません。


 フェイクは我々マーヴルを食います。


 喰い殺します。

 牙で食らいつき、爪で引き裂き、暴力で我々の体を砕きます。

 我々には力がない。

 もっと言えば戦うことを知らない。

 せいぜい追い返すのがやっとです。

 しかし私たちの世界には貴方達の世界にないものがあります。


 それが魔法です。


 魔法とは貴方達の世界でこれに当てはまるというだけで、正確には貴方達の持っている魔法とは少し、いや大きく異なるかもしれません。が、フェイクを追い払うのに有効な手段であることは確かです。


 しかしながら、マーヴル自身魔法を使うことはできないのです。


 たとえて言うなら、銀の発掘できる山があるのに、その銀を加工し武器にすることが出来ないように。石油があるのに車がないように。私たちは原料を持っているだけなのです。

 人の、しかも年端もいかない女の子だけにその力が操れると知ったのはつい最近のことでした。最近といっても何十年前のことですけど。


 フェイクは地球のどこかから自然と湧いてくるものだと知っていた私たちは、人間の女の子に魔法の原液となるもの、これは液状のものなのですけど、綾さん、覚えてませんか? あぁ、そう。どうでもいいですか。原液を飲んだ子供は魔法を使えるようになりました。フェイクを地球で殺してもらう為に私たちは貴方達を利用したのです。


 あちこちに湧き出るフェイクを事前に始末するため、私たちマーヴルはあちこちで魔法使いを作成しました。


 それを今の今まで続けてきたのです。

 人知れず、こっそりと。





 ボールが語って聞かせたその話は覚えていた。


 九年前、神社に降ってきたボールも同じ事を語っていた。


 違うのは、今。


 続けてきた、と過去形にしているところだ。


 「ひとつ質問いい?」


 綾はちゃぶ台に戻ってきてそう尋ねた。


 「私が魔法を使えたのは一年だけなんだけど、あれなんで? それもそういうルールとかあったからなの?」

 「いえ。私たちも詳しくは不明なのですが、四季の変化と関係があるようです。なければずっと魔法使いでやってもらうのですが……無理ですね。一年が限界でしょう」


 最後の無理は理解ができた。

 あれを続けるのは精神的に酷だということだろう。


 「そう。で、話は続くんだよね。私の所に、ルールを破ってまで来たってことは」

 「変なところで察しがいいですね。その通りです」


 ボールの話は続く。






 これまで我々は魔法使いを作成することで我々の世界の平和を守ってきました。

 綾さんを含むかつての少女達には気分を害される話ではありますが、私たちの平和は貴方達の犠牲があって成り立っていたのです。

 魔法はチートずるでした。


 これを使われたらどんなフェイクも一瞬にして無に帰すでしょう。


 事実あの日が来るまで私たちはそう信じて疑いませんでした。

 勿体ぶった言い方をしてすいません。

 あの日、時間で言う所の二年前、いやひょっとしたらもっと前から始まっていたのかもしれません。


 魔法の効かないフェイクが現れたのです。

 魔法使いがフェイクに殺されたと私が耳にした時は驚きました。


 私たちマーヴルはかなりの大人数で魔法使いを作成してました。私が耳にしたのはその同僚の話だったのです。


 敗れた魔法使いのマーヴルはもう死にましたが、彼は最後にメッセージをわれわれのネットワークに流し込みました。


 魔法が効かないフェイクが現れたと。


 それはヒト型をしていたと。


 我々は戦慄しました。

 数あるフェイクで最も厄介なのがヒト型なのです。


 あいつらヒト型は他のタイプより考える知能を持っているのです。


 私たちマーヴルはそれでもなんとかそのヒト型を倒すことに専念しました。


 しかし結果は惨敗。


 魔法使いも何人も命を落としました。

 このままでは我々の世界はこの「魔法の効かないフェイク」に滅ぼされてしまう。

 私はそう思い、綾さん、あなたの所にきたのです。



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