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プロローグ


 私は昔魔法使いだった。



 字面にすると相当胡散臭いものがあるな。と彼女は深く頷き、頭の中に浮かんだそれを打ち消した。


 「現実逃避しないでくださいよ」


 丸くて白い生物が嘆く。


 「うるさいなぁ。静かにしてよ」


 彼女はその言葉をぞんざいに放り投げてまた思考の渦に迷い込む。


 九年前。


 彼女がまだ八歳児であり当時小学二年生だった頃。

 彼女は魔法使いであった。


 小学二年生の四月から始まりきっかり一年間。小学三年生になったと同時にその御役はご免となったが、それでも一年。


 彼女は魔法使いだった。


 魔法を使うことができた。使って、駆使して、敵というものにも対峙した。そして、目的も果たした。


 その目的を果たすと彼女は役目を解放された。

 同時に魔法も消えた。

 それで終わり、今までの不思議は消えさったはずだった。


 「いい加減話を聞いてくださいよ」


 なのに、それだというのに。ハンドボールくらいの大きさの白い球体状の生物が、尚も彼女に押しかける。


 「……ふう」


 彼女は息を吐いた。

 そろそろ現実を見すえるべきだろうと判断したのだろう。


 「いいよ、聞いてあげる。言ってご覧よ」


 彼女は言った。

 その球体に。かつて、彼女を魔法使いに仕立て上げたその張本人に。


 「はい。ではでは単刀直入に」


 顔しかついていないその球体は折り目正しく彼女に向きなおった。



 「我々の世界を救ってください。今一度」



 その言葉に彼女は二、三間を置いてから、


 「やだよ。面倒くさい」

 にべもなく断った。







 昔していた習い事とかで、あぁ、あの時もう少し続けていればなあとか、辞めなきゃよかったとか。思ったことって、ないだろうか?


 私はあんまりそういう経験はないのだけれど、私の友人はそういうことをよく口にする子だった。


 体育で水泳の時だ。あぁ、小学生のころにスイミングスクールやめなきゃなー。とか。


 選択科目の書道の時間。中学までは書道教室行ってたんだけどなー、くそぉ。とかね。


 習い事というのは通っている時は酷く億劫に感じられるものなのだろう。何せ自分の時間が「習い事」に束縛されるわけで、また習い事に通う年齢ってやつは大抵が小学校中学校なわけで、そのくらいの年齢の少年少女は遊びたい盛りだ。習い事より友達とゲームをしたりおしゃべりをして時間を過ごす方がよっぽど有意義だと思うのだろう。


しかし彼ら、もしくは彼女らも、時がたち、大人になってから気がつくのだ。あぁ、今まで続けてきてよかったなあと。


 そうは思わない人も勿論いるかもしれない。例えばピアノ。将来地方管理員になる人間に楽器が弾けたからといって、だからどうなの? と尋ねられたら、私は閉口するしかない。でも言えることはある。それは自分の持っているモノが増えるということだ。


 形はないが、楽器が弾けるという技術は決して損なことではないだろうし、また更に将来、定年退職を迎え、家で日がな一日を過ごす間、家族にピアノを聴かせることができるかもしれない。決して無駄ではないのだ。


 話がややそれ掛かっているのに今気がついた。咳払いを一つ払って話を戻そう。ごほん。


 本題に移ろう、というかもう締めに移ろう。


 私はさっき昔していた習い事は決して無駄にはならないと言った。

 その言葉に否定する気はさらさらない。

 しかし、やっていて不幸になる場合も世にはある。

 積もるところの話、この私がそういうことなわけで。

 まあ、今から始まるこのふざけたおとぎ話は、そんな私の習い事が影響で続くことになるのだが。



ゆっくりと始めていきます。

更新が滞る時もあるでしょうが、多分完結まで持って行けると思います。

誤字脱字の注意等がありましたら、ばしばしお願いいたします。

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