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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
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愛されてました

掲載日:2026/08/07

***BL*** 僕は婚約破棄されるかも、、、 ハッピーエンド



 大好きな第一王子は、僕の事を見ない。


 仕方無いのかも、、、。なんて、ずっと自分に言い聞かせて来た。


 好きでも無い僕との結婚。

 家柄だけで婚約者に選ばれた。

 可愛い妹では無く、地味な僕。


 やっぱり、嫌なんだと思う。


 学園を卒業すれば、僕達は結婚する。


 、、、はず


 でも第一王子は、僕に彼色のドレスも贈ってくれない。

 婚約者の色を使ったドレスを着て、卒業式に最後のダンスを踊るのがみんなの憧れ。

 誰もが知っている慣習。


 いつも学園内で僕を無視する彼。

 それでも、最後のドレスはプレゼントしてくれると思っていたのに、、、。



 卒業式の一週間前、王太子妃になるのは僕では無く、妹のマリアンヌだと噂が流れた。


 僕には分からない。どう言う事?


 僕達の通う学園は、全寮制。だから、父上に確認したくて手紙を書いても、返事が来る頃には卒業式は終わっている。

 どの道、父上と母上も卒業式に出席する為、行き違いになるだろう。


 届かないドレス、妹の噂、、、。きっと僕は婚約破棄されるんだ、、、。



 第一王子は僕の気持ちを知らない。幼い頃から第一王子との結婚を約束され、努力を強いられた僕。ずっとずっと王太子妃になる為に頑張って来たのに、、、。



 大好きだったから頑張れた、、、。妹の様に可愛く無いし、勉強だって彼女の方が出来る。

 それでも、、、努力すれば、きっと僕を選んでくれると信じていた、、、。



*****



 卒業式の日、、、僕には真っ白いドレスが届いた。

誰の色でも無い、、、。第一王子は金髪で、瞳の色は、薄い緑が掛かった薄い青。

 サイズはぴったりだけど、、、すごく悲しかった。


 君には興味が無いと言われているみたいだった。


 そうで無ければ、第一王子の色を纏うな。と言う意味かも、、、。


 どちらにしても、良い印象は無い、、、。



 もうすぐ卒業パーティーが始まると言う時、僕の控室の扉が開いた。

 第一王子の青い顔、、、。震えながら言った。



「私と婚約破棄をしてくれ、、、」


「嫌ですっ!」


「頼むからっ!」


「妹が王太子妃になると聞きました、、、本当ですか?」


 彼は視線を逸らしながら


「ああ、、、」


と言った。


「僕は絶対婚約破棄しませんっ!」

「頼む、、、お願いだ、、、」

「貴方は一度も僕の方を見てくれなかった、、、。初めて僕に向き合ってくれたと思ったら、いきなり婚約破棄なんて、、、あんまりです」

「済まない、、、どうか、、、」

「婚約破棄して、王太子妃も妹に譲って、、、一体僕に何が残るのですか?」

「君には幸せになって欲しい、、、だから、、、」

「嫌ですっ!貴方は知らないでしょうけど、僕はずっと努力して来たんだ!王太子妃になる為に、貴方の横に立つ為に!小さい頃から頑張って来て、卒業したらやっと結婚出来るのに!どうして今なんですかっ?!」


僕は彼を睨んだ。


「、、、そんなに嫌いなら、もっと早く婚約破棄してくれれば良かったのに、、、」


睨んだ瞳から涙が溢れる。


「本当に、、、済まない、、、」

「妹が、、、マリアンヌが好きなんですか?」

第一王子が、拳を握りしめた。

「マリアンヌは可愛いのに、胸は大きいし、ウエストも括れていてセクシーだもの、、、エイマード様が好きになるの、、、分かります。僕は男で、柔らかい胸も大きなお尻も無いから、触り心地だって悪いだろうし、身体が貧相で、抱き心地だって最悪だろうけど、僕は僕なりに頑張って来たのに!僕が女の子じゃ無いから婚約破棄するんですかっ?!女の子だったら、王太子妃になれますかっ?!、、、そんなに女の子が良いなら、、、僕、女の子になっても良いです、、、。凄く痛そうだけど、、、。大丈夫です、、、何処どこかの国にはそう言う人がいるそうですし、ちゃんとした技術があるなら、僕の、、、僕の、、、切っても良いですから!」

「違っ!」

「爺っ!爺っ!主治医を呼んで!切るのが上手な医師が良いんだ!今すぐ!爺っ!」

「違うっ!クレールッ!そうじゃ無いっ!」

エイマード様が僕を抱き締めた。


 初めて僕に触れてくれた、、、。


「大丈夫です、、、僕、貴方の為なら身体の一部を切る事位出来ます、、、。だから、、、だから、僕を捨てないで、、、」


 エイマード様は僕を椅子に座らせる。


 それから人払いをして、二人きりになった。

 扉は全開になっている。例え、婚約者と言えども結婚前の二人だ、、、間違えが有ってはいけない。


「クレール、、、驚かないで聞いて欲しい、、、」

エイマード様は、下を向いて僕を見ない。

「私は王太子になれない、、、」


 え?、、、どう言う、、、


「昨日、弟が正式に王太子に決まった」

エイマード様は恥ずかしそうに小さく笑い、涙を流した、、、。

「君の為に、私もずっと努力をして来た。私は君が好きで君と結婚する為に頑張って来たんだ。しかし、弟の方が優秀だった」


、、、確かに、、、彼はいつも成績がトップで、外国語も流暢だった。でも、剣の腕はエイマード様の方が上だと思います、、、。


「私が唯一彼に勝てるとしたら、剣の腕前だけだ、、、それだって、試合をすればほぼ引き分け。偶に勝つ事は有ったが、彼が面倒臭くて手を抜いたんだよ、、、」


 そ、、、うかも、知れません、、、。


「弟はマリアンヌ嬢と婚約する事になった。本来なら君が弟と婚約するべきなんだが、、、私がそれは拒否した、、、」

「僕では、役不足だからですか?、、、子供が産めないから、、、」

「違う、、、。私が君を弟に渡したく無かった、、、。私の我儘なんだ」

「では、何故、婚約破棄になるのですか?」

「私は王太子になれないだけでは無く、叔父の、、、王弟の納める辺境の地に行く事になった。彼には子供がいないから、、、」

「遠いのですか?」

「とても遠い、、、」

「どの様な所なのですか?」

「山深く、冬が長い、、、。人が住めないと言う事は無いが此処ここに比べればやはり、、、何も無い所だ」

「お一人で行くのですか?」

「そのつもりだ」

「だから、僕を置いて行くのですか?」

「この地で、新しい婚約者を探した方が良いだろう」

「嫌です」

「、、、」

「い!や!で!す!」

「クレール、、、君の為なんだ、、、」

彼は泣いた。

「涙を流す位なら、僕も連れて行って下さい」

「あんな場所に、君を連れてはいけないよ」

「その場所で生活して来る人達に失礼ですよ?」

「あ、、、」

「そこに行ったら、死ぬ程辛いのですか?」

「君にはきっと、、、」

「なら、今、死にます」

「なっ!なんでっ!」

「だって、エイマード様がいないなら淋しくて死んでしまいます」

「クレール、、、」

「王太子妃になりたかったのは、貴方のお嫁さんになりたかったからです。僕はずっと貴方に振り向いて欲しかった。今、やっと貴方は僕の顔を見て話してくれた。こんなに嬉しい事は無いのです、、、」

「ごめん、、、クレール。私はずっと見栄を張っていた。本当はいつも貴方の側にいて、貴方と一緒に過ごしたかった、、、」

「僕も、、、貴方から貴方色のドレスが欲しかったです、、、」


 僕はポロポロと涙を溢した。


「その色、、、ウエディングドレスを意識して作らせたんだ、、、。私は、ずっと王太子に成れるか試練を受けていたから、、、。もし、王太子になれなくても、卒業パーティーにはウエディングドレスを着た君とラストダンスを踊りたかった、、、」

「エイマード様、、、僕、、、」


「お兄様っ!」

「はいっ!」

妹のマリアンヌが突然部屋に入って来た。

「こんな所で何をしているのです!本日の主役がいなくてはどうにもなりせんわ!」

「マリアンヌ、、、」

僕はエイマード様を見る。彼は小さく首を振った。きっとまだ発表はされていない。

「ささ!お兄様!第一王子も早く!ダンスホールに向かわないと!」

「あの!マリアンヌ!」

「何ですか?お兄様」

「あの、、、第二王子と婚約する事になったら、、、どうする?」

「それがどうしたのです?貴族の結婚は、おいえの為!増してや、我が公爵家とも成れば、お国の為の結婚です!わたくしは喜んで第二王子と結婚致しますわ!」



**********



 わたくしはお兄様が大好きなのです。ですから、お兄様が王太子妃になる事を、いつも応援しておりました。しかしながら、人間には出来る事と出来ない事が御座います。お兄様は、努力をしておりましたが、わたくしの方が少しお勉強が出来たのです。

 でもそんな事は構いません。私がお兄様を補佐すれば宜しいのです。そうすれば、わたくしはいつもお兄様と一緒。お兄様が第一王子と結婚して、王太子妃になり、わたくしが第二王子と結婚してお兄様におつかえするのです。



**********



 卒業パーティーの前に、僕達三人と第二王子が「控えの間」に呼ばれた。

 僕達は第二王子を王太子に据えると、正式に告げられた。

 その為、卒業パーティーでの僕とエイマード様との王太子任命式は無くなり、半年後、改めて第二王子とマリアンヌの婚約式と、王太子任命式を執り行うと発表された。

 

 僕とエイマード様は納得して聞いていたけど、マリアンヌはどうだろうか、、、。



**********



 今、耳を疑う事を聞きました。

 第二王子が王太子になり、わたくしは王太子妃。お兄様と第一王子は辺境の地へ向かわれるそうです。


 待って待って待って?わたくしの計画が、、、死が二人を分つまで、お兄様と一緒にいたいと思う、この気持ちは、、、?



 わたくしの目の前が真っ暗に成り、お兄様がわたくしを呼ぶ声だけが聞こえました。

 


**********



 マリアンヌは、やっぱり不安なんだろう、、、。いきなり第二王子との婚約が決まり、将来は王太子妃になる重圧、、、。

 僕は頑張り屋さんのマリアンヌなら、きっと立派な王妃になれると思ったんだけど、そのお話しを頂いた途端、マリアンヌは意識を失い倒れてしまった。



*****



 卒業パーティーは無事に終わった。僕とエイマード様の結婚の日取りと、二人で辺境の地へ向かう事が発表された。

 正式に、第二王子が王太子に任命されたとの話は、出なかったけれど、常にどちらが王太子になるか貴族の間では興味の有る話題だった。

 第二王子が王太子に任命される事は、暗黙の了解となった。



**********



「お兄様、、、本当にエイマード様と、あの辺境の地へ行かれるのですか?」


 わたくしはお兄様に直接確認する事に致しました。


「そうだね。僕達がここに残っていては、災いの種になってしまいかも知れない。王弟陛下には子供がいないから、僕達が跡を継ぐ事になるよ」

「、、、お兄様、、、私、沢山子供を産みますわ!どうか、お兄様の子供として、育てて下さいませ」

「ありがとう、マリアンヌ。でも、無理しないで、君の身体も大切だからね」


 ああ、お優しいお兄様、、、私、きっと、世界で一番可愛い王子を産みますわ。


「お気遣い、有難う御座います、、、」

小さく笑いました。



**********



 卒業後、僕のクローゼットは全てエイマード様の色になっていた。


「あの、、、頂いたドレスは、全て新居に運ぶのですか?」

かなりの量がある。

「いいや、叔父上に頼んで新しい物を作らせているよ。彼方あちらでは刺繍やレースの技術が素晴らしいんだ。冬が厳しく長いからかな、、、?女性達は皆、裁縫が得意なんだよ。此処ここにあるドレスは彼方あちらの土地には合わないね。生地が薄いし、露出が高いから肌寒く感じるんじゃ無いかな」

「勿体無いですね、、、」

「そんな事は無いよ?王妃かマリアンヌ嬢がこのドレスをオークションに掛けるんだ。君が着たと言う価値が付き、利益は王室に戻る。心配しないで大丈夫」


 僕が来たドレスに、価値があるとは思えないけど、無駄にならないと聞いて安心した。

 


 僕みたいに胸の無い人って、どれ位いるのかな、、、。



**********



 お兄様がわたくしのお部屋にいらっしゃいました。

 扉を叩いて、小さく開き、小動物の様にこっそり部屋の中を覗くのです。


 、、、可愛いですわ、、、


 わたくしは、侍女に紅茶をお願いして、お部屋に招き入れました。

 ささ、どうぞどうぞ、お座りになって。わたくしはちゃっかりお兄様の隣に座ります。

「マリアンヌ、僕のドレスを置いて行く事になりそうなんだけどね、、、」

「エイマード様に頂いた、素敵なドレスですか?」

「うん」

「全てですか?かなりの枚数ありますよね?」

「気候的に生地が薄すぎるみたいで」

「よくお似合いでしたのに、、、」

「僕も気に入っているから、置いて行きたく無いんだけど、、、持って行くにしても量が多いし、エイマード様が言うには、王妃様かマリアンヌがオークションを開くから心配いらないって、、、」


 そうですわね。確かに、わたくし達は、数回ドレスを着たら、オークションを開いて新しく着て頂けるかたを探しますわ。


「でもね、、、。ほら、僕の胸って真っ直ぐだから、需要が無いかなって、心配なんだ」

「大丈夫ですわ。成長前の女性は沢山おりますもの。それに、少し手直しをして着るかたもいらっしゃいます。気になさらないで」


 なんでしたら、わたくしが全部譲り受けたい位ですわ。


「成長前って、子供って事だよね、、、」

お兄様は、ご自分の胸を撫でながら、少し淋しそうでした。


 うふ、可愛いらしい、、、。



**********



 マリアンヌと第二王子の婚約式と王太子任命式、それから僕達の結婚式が終わった。


 卒業式から半年が経っていた。


 僕は卒業式に着たドレスの様に、真っ白いウエディングドレスを身に付けた。銀糸と金糸で薄く薄く刺繍が施され、見た目には真っ白いドレスが、陽の光に当たると美しく煌めいた。


 卒業式に、エイマード様の色を纏わなかった時、数人の心無い人達に笑われたけど、今ではウエディングドレスを模したドレスと分かり、皆んなから羨ましがられた。

 マリアンヌが

「来年卒業するわたくし達の代は、白いドレスが流行りそうですわ。みんなと同じ色は嫌だし、婚約者カラーだと流行から遅れている様で困りますわ」

と呟いた。

 第二王子とマリアンヌは、思った以上に仲が良く

「それでは、王家の紋章からカラーを貰おう。二人で同じデザインにしたら素敵だと思うよ」

第二王子が言うと、二人はドレスの話しに夢中になった。



 僕とエイマード様は明日、辺境の地に移る。

 これがみんなと過ごす最後の夜だった。

 荷物は先に送り、出来るだけ軽装で行く。

 馬車の旅は長く、冬になる前に移動したい。


「クレール」

「はい」

「もうすぐだね、、、淋しく無いかい?」

此処ここを去るのは淋しいです、、、でも、新しい土地に行くのは楽しみですよ」

「長旅になるけど、、、」

僕の頬に触れる。

「そうですね、、、きっと身体中が痛くなります」

「、、、済まない、、、」

「どうしてですか?僕はワクワクしています。食文化が違うと聞きました。寒い地域だから、温かい物が多いそうですね。沢山の雪も見たいです。、、、エイマード様と一緒にいられるなら、どこでも幸せになれます」

 彼は、申し訳無さそうな顔をする。

「有難う、、、そう言って貰えると助かる、、、」


 僕は彼の手を引き

「本当なのにな、、、」

と言う。腕を伸ばし、彼の身体を抱く。

「貴方とこんなに近くにいる事が出来て、話しをして、幸せです」

彼も僕を抱き締める。

「どうしてあの頃、僕と話しをしてくれなかったのですか?」

と聞いてみた。

 「小さい頃、君は私を守る騎士がお気に入りだった。彼は背が高く、緘黙で、でも優しかった。だから、君が好きなのは彼の様に静かな人だと思ったんだ」

 僕は、その騎士の事は覚えていない。

 ただ、エイマード様に話し掛けるのが恥ずかしくて、いつも騎士の側に行っていた気がする。

「私は、元々お喋りで落ち着きが無いと言われていたし、思った事をすぐ口に出してしまうから、君に好かれたくて頑張っていたんだ」


 彼は、抱き締めた僕の髪に、キスをする。

 優しいキス。

 僕が見上げると、瞼に触れるだけのキスをくれた。



*****



 僕達の旅が始まった。

 馬車の旅は一日休憩を入れたり、時には歩いて身体を動かし、ゆっくり時間を掛けてくれた。

 王都を出ると、すぐに街が無くなり、道が悪くなる。余り変わり映えしない景色だと思っていたけど、時には湖が現れたり、一面の花畑が見れたり心が豊かになった。

 遥か遠くの山並みを眺めながら

「あの麓まで行くんだ」

と言われた時は、とても辿り着くとは思えなかったけど、僕達は二週間掛かる道のりを三週間掛けて、ゆっくり進み、漸く領の入り口に着いた。

 それから半日掛けて王弟陛下の城に行く。

 街の様子を見ながら、時には馬車を降り、食事をする。


 食べ物が変わった。煮込み料理や汁物が多い気がする。味も少し濃い目だった。

「美味しいですね」

エイマード様に微笑む。

「郷土料理が美味しいと感じるなら、きっと此処でも上手くやれると思うよ」

僕の手をそっと握ってくれた。



**********



 私達は、叔父上に歓迎された。

「エイマード!久しぶりだね!旅はどうだった?疲れただろう!」

彼はいつも元気で、声が大きい。

「やあ!君がクレールだね?結婚式に参列出来ず申し訳無かった。直ぐに湯殿を整えるからね!」

「相変わらずお元気そうで、何よりです」


 私達は旅の話しを少しして、新しく整えた湯殿に案内して貰う。


 叔父上が清潔な衣服を準備してくれた。生地が厚くて、私達が今まで着ていた物とはやはり違った。


「クレール?」

「あ、、、あの、、、一緒に入るんですよね?」

「叔父上達を待たせているし、早く綺麗になりたいだろう?」

侍女に衣服を脱がせて貰い、裸になる。クレールも侍女に脱がされて行く。

 一人の侍女が

「汚れた衣服はお洗濯致します」

そう言ってお辞儀をすると、その場を去って行った。

 

 クレールの華奢な身体、、、。旅の汚れを取れば、白くてスベスベの肌になるだろう。

 もじもじと恥ずかしそうにしている。

 ててて、と私に走り寄り背中に隠れた。ひょこりと顔を出し

「これなら見えないので、恥ずかしくありません」

と笑う。


 同じ構造に恥ずかしいも何も無いのに、、、。

 私はクレールが可愛くて笑った。



「良いお風呂ですね」

声が響く。広過ぎず、狭く無く、湯船は大きめだった。

 私達は疲れているからと侍女を下がらせ、ゆっくりとお湯に浸かる。


 今夜が初夜かな、、、。


 そう思いながら、横に座るクレールを見る。

 私の肩に寄り掛かりながら、ウトウトしている。


 結婚式の翌日出発した為、初夜はまだだった。

 私は勿論したかったが、翌日から馬車の移動となると、クレールの身体が心配だった。

 それに、私自身歯止めが効かず、朝まで抱き潰してしまいそうだった。

 よく、我慢したと自分で褒めたい、、、。


「クレール、、、危ないよ」

溺れてしまいそうで起こすと

「エイマード様、、、」

私を見ながら笑う。ああ、、、可愛い過ぎる、、、。

 思わずキスしてしまうではないか、、、。

 

 クレールはゆっくり瞬きをして、もっと、、、と、キスをせがむ。半分寝ているんだろう、、、チャンスだ。

 私は湯船の中で彼の身体に指を這わす。


「あ、、、」


と、眉間に皺を寄せ、声を漏らす。彼が身体を動かす度に、湯の音が響く。


 口付けを強請ねだり、彼から舌を絡めて来た。


 良いな、、、。



 クレールの動きが、急に止まった、、、。


「 ? 」


クレールが、私の身体を思い切り押す。


「な、な、な、、、何をしているんですか?」


彼が急に現実に戻ってしまった、、、残念だ。


「目が覚めたかい?」

私は身体を寄せ、耳元で

「続きは夜、寝室で、、、」

と囁く。


「さっ!先に出て下さいっ!」


うん、身体が反応しちゃったのかな?


 クレールは、真っ赤になりながら湯船に潜って行った。



*****



「え?お化けが出るんですか?」

「そう、、、北の塔にね、、、。昔からだよ。何代も前の領主の時代からだ。、、、女の啜り泣く声。浮かんでは消える手形。廊下の先を古い時代のドレスを着た、透き通る女の幽霊が歩いていたり、誰もいない筈なのに、ザワザワと話し声が聞こえて来たりするんだ」


 叔父上はクレールを怖がらせて喜んでいる。

「ロラン、クレールが可哀想だよ」

 叔父上の横に座るのはラウール様。

 クレールは私の腕にしがみ付き、耳を塞いでいる。

 

 ラウール様は叔父上の奥様だ。二人は私達と同じで同性婚をした。だから子供がいない。

 彼はクレールに

「古い城だから、夜歩き回ると危険なんだ。ロランは君を怖がらせて、夜はあまり出歩かない様にしたいだけだよ」

と笑う。、、、クレールは聞いていない、、、。本気で怖がっている。

「明日の昼間、明るくなったら危険な場所を教えるよ。今日は疲れただろう?ゆっくり休むと良い」

叔父上とラウール様は二人仲良く酒を飲み出した。


 食事を終えて、寝室に案内して貰う。

 テーブルの上にはお菓子と酒があった。


「クレール、酒でも飲もうか」

窓際の椅子に座り、酒を注ぐ。月明かりが彼の顔を照らす。



*****



 北の塔を誰かが歩いている。小さな蝋燭の灯りが、ユラリユラリと移動して行く。


「お、、、お化けって、本当にいると思う?」

クレールが怯えながら聞いて来た。面白い、、、。

「いるか、いないか見に行けば分かるよ」

私はグラスの酒を煽る。クレールは、ちびちび飲んでいた。

「早く飲んで、本当にいるか見に行こう」

ほらほらと急かし、私はクレールの手を取る。

「本当に行くの?」

「お化けがいないと分かれば怖く無いし、本当にいるなら近付かなければ良いんだ。確認した方が安心じゃ無いかな?」

「えー、、、」

嫌がるクレールの手を引き、私は静かに部屋を出た。


 幼い頃、避暑に何度か訪れた事かあった。私は城の中を把握していたし、危険な場所も分かっている。

 クレールは不安で私にしがみ付く。頼られている様で嬉しかった。


 不思議な現象は、北の塔で起きると言っていた。さっきの灯りも北の塔を動いていた。私はクレールを北の塔に連れて行く。


 夜もかなり遅い時間、月の位置が随分変わっていた。



「ねぇ、、、何か聞こえない?」

二人で止まる。何も聞こえない。

「か、風の音かな?、、、もう帰ろうよ、、、」

「最後まで確認しないと、安心出来ないんじゃない?」

「えー、、、」


 ギ、、、


と軋む音がした。私達は息を殺した。


 ギ、、、ギ、、、


 軋む音に紛れて、人の呻き声の様なモノも微かに聞こえる。


 軋む音、、、。


 あ、、、


 ああ、、、


 軋む音。


 苦しそうで切ない声だ。


 クレールが恐怖で泣きそうになっている。私は出来るだけ小さな声で

「クレール、、、戻ろう、、、」

と言った。

 音を立てない様に北の塔を出てから、思いっきり走る。出来るだけ塔から離れる。

 私達の部屋に戻ると、彼は急いで鍵を掛け、靴を脱いで布団に潜った。


 私は灯りを一つだけ残して全部消す。窓を閉めた。城の陰で見えなくなった月明かりを取り入れる為に、カーテンは開けておく。


「エイマード様、早く早く、、、」

布団の中で呼ぶ。

「クレール、夜着に着替えないと」

「そ、そんなのいいです!」

私はゆっくり着替えた。、、、叔父上とラウール様の部屋が北の塔にあるんだな、、、。彼方あちらには行かない様にしないと。


 私は夜着を着ると、そっと布団に入った。


 クレールがしがみ付いて来る。まだ、お化けや幽霊を信じているのかな、、、。


 私も彼を抱き締める。



*****



 ぷはっ!


っとクレールが布団を剥いだ。息苦しかったんだ。

「暑かった?顔が真っ赤だよ」


 可愛いクレール。


「キスしても良い?」

急にどうしたの?と言う顔をする。

「良いよ?」

私は彼の唇に触れる。長旅で乾燥している、、、可哀想な唇。私の舌で潤して上げよう、、、。



**********



 エイマード様が僕を脱がせ始めた。やっぱり夜着に着替えないといけなかったな、、、。

 僕がベッドから出て、夜着を取りに行こうとすると

「こら、、、」

と優しく言われた。


「 ? 」

「何処に行くの?これから初夜が始まるのに、、、」


グイッと腕を引かれ、倒された。

「漸くこの日が来たんだ、、、」

と言って、キスをする。


「ずっと我慢していたんだから、、、」

と言って、またキスをした。


「今日は、クレールに沢山愛を注ぎたい、、、」

脇腹を撫でられ

「あ、、、」

と声が出た。


ギ、、、とベッドが軋む。


エイマード様が僕の首にキスをする。


「あ、あ、、、」


彼が動く度に、ベッドが軋む、、、。






マリアンヌ様は、クレールのドレスを宝物にしました。

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