ようこそ私立旅路星間学校へ
僕の名前は奥村和人。旅路星間高校へ入学した新入生です。
入学してもうすこしで一ヶ月となるけど、学校での生活には何とか慣れました。この高校は少し気になっていたけど、こうしてこの高校に入れたことが何より嬉しかった。
ちょっとだけ大変だけど無理なく我慢しなくてもやっていける。勉強が苦手なのは相変わらずだけど、難しくないから問題なくやっていける。
「部活…どうしようかな」
部活希望書を眺めてため息を吐きながらそうつぶやいた。高校なので部活強制は当たり前。なのでどの部活に入ろうか悩んでいた。
応募期限は一ヶ月なので、
中学の時は卓球部に所属していたけど、試合でヘマをして負けたショックでトラウマとなって以降行かなくってしまった。
なので卓球問わず試合を行う部活には入りたくない。
「天文か写真部。もしくは園芸部か科学部か…」
一応入部希望候補を絞ったものの。いまいちというか、パッとしなくて「入部したい!」という気持ちが沸いてこない。
候補としてあった中には『軽音部』『漫画研究会』『演劇部』とあったが「……ないな」と思ったので除外した。
漫画はずっと気になっているから入りたいっきゃ入りたいと思っていたけど、僕は漫画の事を全然知らない。そもそも第一に読んだことがないんだ。だから候補から除外した。
演劇部は演劇をする訳で「演劇したい」と興味があったけど、みんなの前ですると分かった途端に怖くなって除外した。
「……はあ」
「高校へ入学したら入りたい部活に入って今度こそ励む!」と決めていたのに入りたい部活が決まらないとか、これじゃあ何も変わっていないじゃないか。
「――ん? 確か、あの人は」
クラスで気になっていた生徒が一人。東北渚翔。僕と同じこのクラスで浮いている人。
浮かれていると言ったら失礼だけど、東北さんも僕と同じで全然目立たなくて友達もいないから親近感が湧いてどうも気になってつい見てしまうんだ。
今日も席に座ってボーっと窓からの景色を見ている。
ほぼ毎日景色を見て飽きないのかな。そして東北さんは景色を見て何を考えてなにを感じているのかな。
「……んあ?」
「……あっ」
目と目が合ってしまった。
やばい。コミュ障で社会不適合者な僕は他人の視線は苦手で痛いんだ。
うう.......。「なに俺のことをジロジロみてんだ、ああん!!?」と言われるのは確実だ。
素直に謝ろう。ここは教室内だから騒ぎを起こせば目立って――
「.......その紙」
「.......え?」
すぐ手前にある紙は僕の部活志望しかない。
「どの部活にしようか迷ってるの?」
「う、うん…。候補は絞ったんだけどどれに入ろうか全然決まらないんだ」
「....そうか。なら帰宅部に来てみない?」
「……帰宅部?」
帰宅部の応募項目にはこう書かれていた。『自宅で「やりたいことに励み取り組む」部活です。
運動や文系が苦手な方、誰にでも優しく暖かい部活だよ。