3.きっかけをくれる人
狼雅さんの配信が終了し、波々伯部彗さんの枠に移っていく。
しばらくして流れてきたのはアップテンポな曲調で5000万回再生を突破している大人気ボカロ曲だった。
曲のイントロと同時に画面に登場したのはアクアブルーの髪と瞳を持ち、柔らかい微笑みを浮かべている爽やかな青年で紡がれる歌声は見た目通りに爽やかで聞く人の耳に心地良く響いていく。
〔初っ端からこれか!〕
〔お!これ好き!〕
〔これは盛り上がる〕
〔分かってるー!〕
〔歌うめえ〕
〔難しい曲なのにうんまっ!?〕
私の好きな歌声、私がVtuberを目指すきっかけをくれた人。
その人が歌う、自身も最近よく聞いている音楽。
「これ私も好き!」
「~♪」
「ちょっと!歌わないでよ!」
「アーカイブ見たらいいじゃん。一緒に歌って楽しんだ方が良くない?」
「…それもそっか!」
「「~♪」」
〔こっちもうまいな?!〕
〔意外だったわ…〕
〔お姉さんマネージャーなんだよな?!〕
〔うめえ…〕
〔コラボ!はやく!〕
〔歌みた全力待機〕
『…さて、皆さんこんばんは~。フォーリスのファンファーレ所属、波々伯部彗です。今歌った曲はいかがでしたでしょうか?最近よく聞いてるんだよね~。みんなはどうかな?…あ、皆も聞いてる?良かった~。これねぇ、聞いてても楽しいし、歌ってても楽しいんだよね~』
のんびりとしたトークを途中で挟みながら曲を歌いあげていった。知っている曲は一緒に歌って、知らない曲はまた今度本家を聞いてみようと誓って。
楽しい時間はあっという間に過ぎていく。
「楽しかったね!お姉ちゃん!」
「そうだなー!選曲が良かったな!」
「うんうん!分かるー!」
「…ロストもこういうの出来るといいな?」
「…そうだね!…あ!スパチャ!スパチャ!」
〔最後の曲も最高だった〕
〔ロスト歌うまかったんだな〕
〔一回も歌みただしてないよな〕
〔歌みた出せばいいのに〕
〔選曲が神〕
〔コラボしてくんないかなー〕
〔ロストアニソン歌ってなかったな〕
〔終わってしまった…〕
〔コラボはよ〕
〔聞きたかった!〕
〔ていうかいつになったら配信の切り忘れに気づくん?〕
〔神やった〕
〔確かに〕
〔そろそろ気づかなやばいのでは?〕
〔おーい気づけー〕
〔お、電話かかってきた〕
〔運営じゃね?〕
〔事務所〕
〔あ、気づいたっぽいね〕
〔あー!きられるー!!!〕
「「すみませんでした」」
今現在事務所の会議室でお姉ちゃんと一緒にプロデューサーに謝罪中です。
内容は先日配信を切り忘れてしまったことについて。
「まったく。あれ程切り忘れには注意して下さいと言いましたよね?二人で確認して両方気づかないとかどういうことですか!しかもそれを指摘するコメントが貴女方が視聴していた各タレントのコメント欄に流れていましたよ!何で気が付かないんですか?!」
「ごめんなさい…」
「申し訳ございませんでした。」
「それと今回の件について上と話し合いますので沙汰が決まるまで配信しないで下さい」
「はい」
「はい…」
会議が終わってすぐにプロデューサーは出て行ってしまった。
この後にも色々と予定が立て込んでいるだろうに仕事を増やしてしまって申し訳ない。
この会議室も次の使用者が決まっているはずなのでさっさと準備をして部屋を後にする。
「…活動続けられるのかな…」
「まあ、お姉ちゃんに任せなさい!」
「うん…!ありがと!」
事務所の廊下を歩きながらお礼を言う。
お姉ちゃんがこう言った時はいつもどうにかしてくれた。だから今回も何とかなると思ってしまう。
本当に自慢のお姉ちゃんだ!!!
会話をしながら歩いていると前から男の人が二人こちらに向かって歩いて来ていた。多分私と同じVtuberタレントだと思う。
ひとりは小柄な男の子でもうひとりは長身で細身な男性。
接触を禁止されているので、左側に寄って横を通り過ぎていく。
「もしかしてロストちゃん?」
「えっ?」
聞き覚えのある声に足を止めてしまった。
だってこの人は…。
「俺だよ?波々伯部彗の中の人~」
分からないはずがない。だって、私の憧れの人だから。
振り向いて顔を確認すると、波々伯部彗の見た目と違うけれどどこかあのキャラクターを彷彿とさせる爽やかさのある青年だった。
「…は、初めまして…ロスト、です。」
「うん、よろしくね~」
「えっ、あっと。僕は白河結です!配信見てくれてありがとう!嬉しかったよ!」
「あ~あと、スーパーチャットありがとねぇ~」
「い、いえ!…いつも、楽しい配信を、ありがとうございます!応援してます!が、頑張って下さい!!!」
目の前に『推し』達がいる…!
心臓がバクバクと早鐘を打っている。今にも破裂してしまいそう…!
「あははは~!ありがとねぇ~」
「僕もありがとう!良かったら今度一緒に配信しようよ!同期なんだし!」
「あ、えっと…それはですね…」
「申し訳ございませんが、私共では判断出来かねますのでマネージャーを通して頂けますか?」
「ええー!今までそんなこと言われたことないのに何でー?」
そうなって当然だと思う。他のみんなは普通許可とか要らない。
けれど、私がフォーリス箱推しヲタクなばかりに契約を別で結んでいるから仕方がない。
「ごめんなさい。また後日に、マネージャー経由で連絡出来ると思うから…」
「むー…分かった!待ってるね!」
「はい、ありがとうございます。…その時は、よろしくお願いします」
「うん!よろしくー!」
「…ちょ~っと待っててね~」
「は、はい。」
読んでいただきありがとうございます!
私だけかもしれませんが、曲を聞いてる時にいきなり口ずさまれると「聞かせてよ!」ってなります。
「面白いなぁ」
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