1.やらかしに気づかないでくれ…!
「うん。また勝った。…もう一時間経っているから今日はこれで配信終了します。ありがとうございました。また次回、お会いしましょう。」
リスナーにお別れの挨拶をしているにも拘らず、画面に映し出されているアバターは相も変わらず無表情。
淡々とした挨拶を終えて配信終了のボタンをクリックした。
これでもう大丈夫なはずだけど。
「…マネージャー。確認お願いします。」
「……承知致しました。」
一緒に住んでいるマネージャー兼姉に最終確認を任せて部屋を出た。
〔お疲れー〕
〔…〕
〔なあ。配信切り忘れてないか?〕
〔忘れてるな〕
〔マネージャーに確認頼んだ〕
〔あああああああああああああ〕
〔見たいんだが!?!?〕
〔消さないでくれ!〕
〔見てえ!〕
〔マネさんに届け!この想い!〕
〔いや無理だろ〕
〔無理無理〕
〔なんかいけてね?〕
〔マジ?〕
配信を切り忘れてしまったのはフォーリスという大手Vtuber事務所から最近デビューしたばかりの「ロスト」、本名は御剣姫という。
実姉兼マネージャーの名前は華怜。
彼女らはフォーリスの中でも特殊だった。
普通であれば複数人が同日にデビューを果たす中で「ロスト」だけはたった一人、同期なる者達より数日早くデビューした。
それは「ロスト」こと御剣姫がフォーリスを箱推ししていたためで、流石にファンをVtuberである彼らに近づけてしまうのはどうかという議論に発展してしまった。
その結果、タレントの身を守るためにコラボや接触はなし、箱推しを匂わせる言動禁止という契約のもとで、黒い髪と瞳に、これまた黒のコンプレッションウェアを着用したアンドロイドという設定で「ロスト」はデビューを果たしたのだった。
そのため彼女の配信では無表情で無感情な姿が映し出されている。それでも高いプレイヤースキルでゲームを攻略していく姿は人気があり、登録者数は10万人に迫っている。
〔やらかしてんな〕
〔でもこれは配信で淡々としているロストの普段を知るチャンス!〕
〔そうだな。普段からあんな感じなのか気になる〕
〔分かる〕
〔これで全然違ったら面白いな〕
配信終わったーーー!早くご飯とお姉ちゃんのおつまみ作らないと!
いつもの通りに冷蔵庫にある食材を使って晩御飯を作っていく。
今日は味噌汁に鶏ミンチを使った照り焼きハンバーグと付け合わせ、それと厚揚げを使ったおつまみで完成!
「お姉ちゃーん!ご飯できたよー!」
「ほーい。」
お姉ちゃんの声が聞こえてきたけど来てくれないからまだ確認終わっていないのかな…。
お盆におかずを乗せてさっきまで配信をしていた部屋へ運んでいくとお姉ちゃんは普通に寛いでスマホを眺めていた。
「もう!終わったなら運ぶの手伝ってよ!今日お酒要らないの?」
「いる!要ります!下さい!」
「もう、始めから手伝ってよね!」
「ほーい!」
そこからはお姉ちゃんも手伝ってくれてすぐに夕飯の準備は整った。
「「いただきます!」」
「カァーーーー!うまーーー!」
「お酒ばっかりはダメだよ、お姉ちゃん」
「つまみも食べてるぞ!」
「ご飯を食べてよ…」
〔え?〕
〔だ、誰?〕
〔え?〕
〔え?〕
〔え?〕
〔ロストじゃないよな?〕
〔マネさんもどこ行った?!〕
〔何か飯食い始めたんだが〕
〔草〕
〔初っ端なから酒飲んでんな〕
〔俺らも飲もうぜ!〕
〔何飲んでんのかな…〕
「お姉ちゃん!今日はいくらまでならいい?」
「おう!五千円までな!」
「もう一声!」
「却下で」
「何で?!」
「なら三千円まで減らしまーす!」
「ああああ!!嘘嘘!冗談だから!五千円ありがと!お姉ちゃん!」
「分かればいいのだよ!」
〔何の話?〕
〔課金?〕
〔課金〕
〔かきん〕
〔普通に服とかじゃね?〕
〔ネットサーフィン〕
〔俺だったら課金〕
〔酒一択〕
〔ヤベェ薬とかじゃないよな〕
「さあ、今日もみるぞー!」
「今日は誰?」
「今日はね、結君の雑談配信と狼雅さんのリスナー参加型企画。そして、彗さんの記念歌枠を見ます!」
「そうかー酒取ってくるー」
「あんまり飲み過ぎないでよー」
「おー」
〔同箱ばっかじゃん〕
〔フォーリスが好きなだけのヲタクにしか見えない…〕
〔本当誰?〕
〔お姉さん雑ぅー〕
〔草〕
〔酒カスの気配を感じる〕
〔とりあえず、白河結の枠見に行くか〕
読んでいただきありがとうございます!
最近Vtuberにハマってます!
けど、あんまり配信の仕方とかは分からないため想像で補っていますので現実と乖離があると思います。
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