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桃太郎  作者: 小豆沢Q
17/22

#17 さようなら鳥尾P

桃太郎――ReN

野良猫(猫)――ことと

とんかつ(犬)――勝ち組とんかつ

鳥飼の少年――鳥尾P

シマエナガ(鳥)――こうまく

クロエ――Tokage100%(Chloe)

人に優しくて可愛いJK(猿)――あずき

爺さん――ふくちよ

爆発物――ピロッシー

カッシー四天王④――リョウ

「貴様らがここまで来たということは……あいつら全員やられたってことか……不甲斐ないねぇ……四天王としてカッシー様に顔向けできんではないか……まあいい。俺が全員始末してやろう……この四天王最強リョウ様がな!」


 新月たけの部屋から先に進んだところ、細い通路の真ん中に立つ男がいました。

「あんたが最後の四天王か」

 ReNが指を指します。

「ショコモさんのかたき……特製カツサンド事業化失敗の恨み……取らせてもらうで!」

 手にはショコモの顔の一部が握りしめられています。むしってきたようです。とんかつとキャベツも挟まれており、試作品が作られたことがうかがえます。

「れ、ReNさん! ここは僕が! いいところを見せて、ポイントアップを図りたいです!」

 鳥尾が言うと、とんかつが止めました。

「やめろ! お前はすでにフラグが立ってんだよ! 桃太郎ちゃんに任せときゃいいんだよ! お前だって、私のアツアツサクサクのとんかつを食べずには死ねねぇだろ!」

「最後のつながりが毛玉ほどもわかんないけど、とんかつの言う通りだよ。今戦ったらあんたは死ぬ。絶対」

 コトニャンが言うと、こうまくも泣きながら周りを飛び始めました。

「ぴぴ! 鳥尾ちゃん、だめよ! あなたがいなくなったら、毎日の私の食事はどうなるの?! 引き取り先を見つけてからにしてちょうだい!」

「それでも!」」

 鳥尾は一歩進みました。

「僕はいかなきゃいけないんです! ReNさんに相応しい男にならなきゃいけないんです! そのためにはあいつぐらい倒せないと!」

 拳が固く握りしめられました。

「おおきに。ほな……任せたで」

 ReNが鳥尾の肩をたたきました。

「はいっ!」


「なんだぁ? 高校生か? そんな世間知らずがこの俺様に勝てると思っているのか? はっはっは! 笑わせるぜ! 俺は四天王最強だぞ?! 普通に考えたら色々すごい能力があるって思わないか?! 速かったり、強かったり、特殊能力使えたりとかそういうやつがよぉ!」

 キャラ設定が決まり切ってないけど、とりあえずすごさだけは見せておこう、という蛇足な印象を与えるセリフをリョウが言いました。

「いいえ! 僕は勝ちますから! なぜなら僕には隠された……それこそ特殊能力があるからです!」

 鳥尾が手で印を結びました。本人が知っているかどうかはわかりませんが、少々卑猥な意味がある印だったので、詳しくは書きません。


「え? そうなん? とんかつさん」

 ReNですら驚いています。

「いやぁ……私は知らんよ。さっき知り合ったばっかりだしなぁ……高校で『わたしたちのまち』を勉強してるってことぐらいだよ、知ってるのは」

「こーまくちゃん知ってる?」

「くるっぽ?」

 こうまくは鳴き声を間違えるほど心当たりがありませんでした。

「飼い鳥も知らないような秘密……あの少年一体何者なんでしょう……」

 クロエが注視します。


「僕は……いにしえより垂水区(教皇区)を代々守ってきた騎士ナイト……鳥尾家の末裔……鳥尾P!」

 鳥尾は名乗りを上げ、波動のようなものが今にも出てきそうなポーズを――かめはめ波みたいなポーズを――をとりました。

「な、なにい?! そんな設定なのか貴様! や、やばい、俺にも設定をはやく付け足してくれ!」

 リョウが天に向かって叫びました。どうやら、このバトルをストリートの喧嘩ぐらいにしか思っていなかったようです。

「まじ?! 鳥尾すげーじゃん!」

「え?! キセキ?! 逆立ちしてもキセキだわこれ! ちょっとこのワードJKに流行らせたいわ! 逆立ちしてもキセキじゃん!」

 とんかつやアズキは展開にウキウキです。

「垂水区ってそんな歴史ありましたっけ……?」

「……戦後だと思うけどね」

 クロエとふくちよは早速現実を見始めました。


「くらえ! 僕の最終奥義(リーサルウェポン)! すべてを灰燼と化せ! 交際希望(レン)!」

 鳥尾が技名を詠唱すると、辺りをまばゆい光が包みませんでした。触れれば原子まで消滅しそうなエネルギー波が掌からほとばしりませんでした。

「……え?」

 最初に沈黙を破ったのはリョウでした。内股でした。両腕で自分の体を抱いていました。


「……え?」

 仲間も全員口をぽかんと開けています。

「おいおい……鳥尾。お前もしかして……」

 とんかつが禁断のワードを告げます。

中二病(ありえないもうそう)?」


「いっ! いやそのっ! 今日は、今日なら、今なら出るんじゃないかって! ほ、ほら、僕のナイトスピリッツ(テンション)がこれまでにないほどに、じょ、上昇してたから! その! あ、あの!」

 鳥尾の顔がこれまでにないほどに赤らみました。恥辱のあまり、鼻水やらよだれやらがねたねたと漏れ出し、ついにはほんの少し失禁してしまいました。

「ああっ! あのっ! こ、これは! 違、違うんです! 心の汗! 心の汗が! 尿道(マニホールド)を通じて! あふれ出して(オーヴァーフロー)!」

 リョウですら、憐憫のまなざしを送っています。

 鳥尾が何かを言えば言うほど、誰も何も言えなくなっていきました。

「だ、大丈夫だよ! 鳥尾君! 僕だってちょくちょくやっちゃう(おもらし)しさ! 第一話から今までで二三回はやっちゃった(おもらした)かな?! ほ、ほら、さっきReNが言ってたでしょう? 人間いつかは失禁するんだって! 必ず失禁するんだって! 遅いか早いかだけなんだよ! 他の人より50年ぐらい早かっただけだよ!」

 失禁におけるメンター、ふくちよが不要なフォローをしました。

うああああああああ!(あなたとは違うんです)

 鳥尾は獣のように咆哮し、入り口の方へと走り去りました。


 鳥尾、再起不能(リタイア)

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