貴方の婚約破棄の先には「ほらーバージョン」
きらびやかに飾られたパーティー会場にて
「伯爵令嬢ミディア、君との婚約破棄を宣言する」
壇上にて見違える綺麗な金髪の女を肩に抱き宣言しているのは、
この国の王太子にて、ミディアの婚約者、シグマ王子である。
そして、その横には取巻きである宰相の息子、騎士団長の息子、宮廷魔術師の息子がそろい踏みしていたのです。
「よろしいのですか?」
「お前は身分を盾に男爵令嬢レイチェルを虐げる女だからだ」
「本当によろしいのですか?」
「くどいぞミディア!」
確認するかのように問いかけるミディアをうるさいと思ったのかイラっとした表情で言い返すシグマ王子だったが、
「だってその子死んでいるわよ」
「へっ?」
突然パーティー会場の照明が落ちあたりが真っ暗になった。
そして、レイチェルの顔の肉が文字通り削ぎ落ちたのだ。
そう、レイチェルはアンデッドだったのだ……。
「ワカイオトコー。 セイジョノカケイノムスメガハナレルノナラ、ワタシガソノオトコヲモラウ」
おぞましい声を発してシグマ王子を抱きしめ、取り巻きの3人も邪悪な光に包まれとらわれたのです。
周囲の兵たちや貴族たちもアンデッドの力にやられゾンビの仲間入りをしていたのです。
アンデッドの言う通りミディアは聖女の家系の娘で、レイチェルに浄化の魔法をかけようとしていたのですが、
王子とその取巻きに邪魔されていたのです。
「じゃあ、好きなだけレイチェルさんと一緒にいてくださいね、お幸せに」
「いいのか聖女の娘よ?」
「はい、王侯貴族になっても面倒くさいので、ワタクシに係らないのでしたら見逃してあげます」
「そうか、確かに我も聖女とは戦いたくないのでな」
聖女とアンデッドは手を結んだのでした。
シグマ王子がミディアを愛していなかったのと同様に、国に無理やり婚約されていたミディアもシグマ王子を愛していなかったのです。
ミディアは二度と王家に係りたくなかったのです。
王子たちはミディアに見捨てられて強力なアンデッドであるレイチェルに対抗する力はなかったのです。
強力なアンデッドに対抗できるのは聖女の血を引くミディアだけだったのです。
「お幸せに」
アンデッドに連れ去らわれる4人を見送ったのでした。
今回のヒロインはゾンビ系でした。