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2-6 現人神、憧れの冒険者登録に挑む

「では私も新人登録したいのですが、何か試験はありますか?」

「ゆ、祐子様がご登録なさるのですか!?」

「ダンジョンに潜るのだから、その資格は必要ではないでしょうか」


 根上さんはびっくりしているが、これは最初から考えていたこと。おふざけではなく、冒険者が何をするのか確認するのだから、同じ形を取るのが一番手っ取り早い。

 どうでもいいけど、根上さんがびっくりした瞬間に、シャツのボタンが弾けそうなぐらい胸元が引っ張られるのが見えて、思わず目を奪われてしまった。

 はっきり言って、今は自分の方が大きい。大きいんだけど、ついこの間までは慎ましやかだったから…。

 日本人がモデルなのに、男女とも日本人より平均して大きい松野市民。百年間飢えもなく生活を保証されていれば、みんな成長するらしい。

 ただし、二十歳を過ぎて成長し続けるわけではないから、二十歳の頃の最盛期の肉体のまま二百年以上過ごすわけだ。ファンタジーな世界なら別種族だよね。


「えーと、規則通りに参りますと五級になりますが…」

「規則通りで結構です」

「五級に試験はありません。その代わり、潜れる階層が限定され、また四級以上との同行が条件になります」

「あー」


 良く出来たシステム。無条件で登録できる以上、いきなり一人で潜るなんて無茶なのは当然だ。

 だけど、このままでは私自身が潜れなくなる。

 困ったなぁ。試験受けるしかない?


「あのー祐子様。わ、私が同行いたしましょうか」

「ギルマス自らですか? それは仕事の邪魔なのでは」

「あ、現人神様のご視察以上の仕事はございません!」


 ああ、またシャツのボタンがピンチに。もう少しサイズを上げたらいいのになぁ。

 それはさておき、根上さんはなんと一級冒険者の資格持ちだという。すごいね。確かに、女子大生の外見なのに、けっこう筋肉質なのは分かるけど。

 ただし当人が言うには、一級はダンジョンに潜った時間が長い証であって、強さとは別らしい。

 百年間不死だった間は、その気になれば一年ぐらいぶっ通しでダンジョンに潜ることだって出来た。モンスターにどれだけ倒されても不死身だから大丈夫だし、睡眠不足や空腹も耐えれば耐えられる。普通の人間どころか、ゲームでキャラを動かしてすら不可能なレベル上げを繰り返した、と。


「えーと、レベルというものもあるんですか?」

「はい。冒険者として活動する時のみ適用されます。さっそく測定いたしますので祐子様、こちらに手をあててください」

「こち……、は、はい」


 レベル判定機というものに手をあてようとして、今日何度目かの動揺。

 銀色に輝くそれは、よくあるデジタル式の計量器だった。肉の量り売りでもしそうなやつ。


「えーとレベルは……、あ、あの、測れません」

「え?」


 レベルに上限はなく、根上さんはレベル三千五百。そして数字は十桁まで表示できるが、エラーが出た。単純に言えば、レベル九十九億より上。

 お互いに苦笑いしてみるが、根上さんは何もなかったように作業を再開する。

 考えてみれば、ダンジョンや魔物を造る側の自分のレベルは、人類と隔絶して当たり前だった。レベルを設定した側なんだから。

 自分が造ったわけじゃないし、強いって実感は何もないけど。



 そうしてピカピカの冒険者証が完成。

 松野祐子、現人神、レベル百億、五級。うん、何、この子ども銀行券みたいな数字。五千万円札じゃないんだから。


「祐子様。馬車は用意いたしました。すぐにご出発なさいますでしょうか」

「ええ。ギルマスを長時間拘束してはいけませんし、お願いします」


 根上さんが必要なものを揃えてくれ、あとは着替えて馬車が来たら出発となった。

 こうして、五級の新人が大ベテランの一級を顎で使うお気楽ダンジョン攻略が、もうすぐ始まるのだった。

※やっと出発だ。長いなぁ。なおダンジョン到着まであと二話。

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