2-3 現人神、いるだけでダンジョンを枯らす可能性が
颯爽と変装して、現人神が抜き打ち視察…のはずが、あっさりばれてしまう。それも、予想だにしなかった原因で。結局、そのままなし崩しに視察の打ち合わせになった。
どこかで呼ぶつもりだった闇の創造主も、ここにはいない。そして、呼び出す必要性はなくなった気がする。
闇は確かに創造したけど、きっと何も説明出来ないから。
今さら仕切り直しも何もないので、個人的な疑問点もすべて根上さんに聞くことにする。そう、「神さまの気」についても。
「神さまの気は、怪我や万病に効能があります。それに農作物などの病害虫を予防し、成長を促すとうかがっています。ですので明神様や湯殿様などには、冒険者もよくお参りに行くのです」
「は、はぁ…」
「祐子様のお住まいになる神殿もそうでございましたが、本物の祐子様が御光臨なされてからは、一段とその気も増してございます。この清浄なる気を浴びてしまえば、ダンジョンの魔物もすべて消滅することでしょう」
「そ、それはダメでは?」
今さらながらに、この身体の規格外な力に呆れるけど、魔物消滅はたぶんマズい。そもそも自分がここに来た理由は、ギルドの視察とダンジョンの視察の両方なのだから。
「呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン」
「アンタ何歳? だいたい、呼んでないし」
「祐子はツンデレさんねー」
と、そこで闇が乱入してくる。予告もなく時間が止まったせいで、根上さんは半開きの目のまま静止している。ちょっとツリ目で整った顔立ちも台無しで、非常に遺憾に存じます。
「いつになっても呼ばないから、来ちゃった」
「気持ち悪い声で言わないで。それに、呼ぶって言ってないでしょ?」
「ダンジョンに行くなんて娯楽、私を置いて行くなんて酷いわー」
「勝手に行けばいいでしょ! 自分で造ったんだから」
一方的に拗ねられてしまった。何が娯楽よ。百三年間無視しておいて、なぜ今さら…と思う。
もっとも、創造主は端末を通して間接的にコミュニケーションをとるだけで、徹底して部外者だったようだ。自分の分身もどきが楽しそうだから混ざりたいと思うのも、ちょっとだけ理解は出来るので、大人しくする条件で一緒にまわることにした。
なお、闇が乱入した理由は、「神さまの気」の扱いを私に伝えるためだった。
「こう…その…、裸の王様になった気分で何か羽織ってみるのよ、祐子」
「もうちょっと喩え方に気を使ってほしい」
透明な防護服を着るつもりで…と言い直してきたので、とりあえずイメージしてみる。一度も着たことないけど、何となく着たような気になったら、あふれ出る気が抑えられたらしい。
「どうでしょう根上さん。気は感じますか?」
「え? あの、全く…」
闇が時間停止を解除して、ようやく瞬きが終了した根上さんに確認したら、これで成功だった。簡単だった。
ただし根上さんからは、ある程度は発散している方が嬉しいと要望された。
「最近肩こりが酷かったのですが、祐子様にお会いしてから急にやわらぎました」
「そ、それは良かったですね」
利用者の感想です。なんだか断わっておかないとまずい気がする。いや、自分からは何も与えたつもりはないんだけど。
※どう考えても創造主はダンジョンの敵だよね。まぁ創造主を予想を超える力を得て戦うなんて話もあるわけですが。