意気込み ~グスタフ・ハイレンドンの場合~
よくある日本の高等学校の教室、昼休憩中
あるものは友人としゃべり、あるものはスマホで動画を見たりと思い思いの時間を生徒が過ごしている中、一人の男子生徒は機械で打ちだされた文字の羅列を読んでいた。
「ちょっと、グスタフ君。それなに?」
声をかけられた彼、グスタフ・ハイレンドンは現在、留学生という身分で有名だが、それ以外の意味でも有名人だった。
「《ヒストリアン・マッチ》のトップ大会への招待状が来たんだ」
そう。
彼もまた《ヒストリアン・マッチ》のプレーヤーの一人であり、その実力は高い。最初は日本に来る前、日本史というものを覚えなければならなかったのだが、彼にとっては難しすぎた。
その日本史を楽しく覚えるためにと、故郷でも有名だった日本のカードゲームの一種として紹介されたこのゲームで遊んでいただけだったのだが、気づいたらネットニュースに何回も載ってしまうくらい腕が上がってしまった。
「まじか! さすがグスタフだな」
「ってことは、世界ランク八位以内か!」
「二位だってよ!!」
「すごい。このまま優勝してくれたら、この高校ももっと有名になるかもね」
「そうだねぇ。でも、名前からして眠くなりそう」
クラスメイトたちが思い思いの感想を言っていく中、一人の女子生徒が呟いた言葉に、そうだよなと頷く。
歴史というだけあって最初の時点で苦手とする人は多い。グスタフもそうだったから、彼女の言葉のよくわかってしまった。
でも、それを克服できるくらいこのゲームは面白いんだと力説したが、そこまでして勉強したくないよぉと言われてしまったので、彼女への説得は諦めた。
その代わり、自分がチャンピオンとれば変わるかもしれないなと心の中で固く誓った。
「でも、全国大会頑張ってね! グスタフ君なら、チャンピオン獲っちゃいそう!」
「そうだな。ありがとう」
彼女の応援の言葉が届いたそのタイミングで授業がはじまる予鈴が鳴り、それぞれの席に散っていった。