熱い釘は早く打て
「よっしゃあ! 今回の勝負、俺の勝利だ」
「くそっ、またこの手で負けるとはな。つぅか、お前の本気モードにいい加減、安定して勝ちたい!」
市内某所のTCG専門店、そのデュエルスペース。
“レギオン・バトル”が終わったばかりだというのに、熱戦が繰りひろげられていた。
「よし、今度はこうやって勝たせてもらう!」
「だから、そこでイヴァン雷帝とかってない! もう一回やり直しだ!」
ほかの客も熱戦に釘づけになっていたが、二人は周囲のことは一切、目に入っていなかった。
「来年ぐらい、うちに来るか?」
「あ?」
それから十五戦した後、帰りの電車を待つときにジェイドが裕樹に声をかける。
「こないだ奥さんに裕樹のこと話したら、絶対に面白そうなやつだって笑っててさ」
「それ、俺のことを馬鹿にしてるんじゃないのか?」
「そんなことないさ。会いたいって言ってるんだ」
「へぇ」
楽しそうに話すジェイドに裕樹はゆっくりと首を振る。
「ありがたい話だが、断る」
裕樹のきっぱりとした物言いに腹を立てることもなくそっかとジェイドは頷く。
「でも、いつか一人で行けるようになったら、行かせてもらう」
「そうか」
今行けないのは単純に自分で稼げないから。
稼げるようになったら行く。
そうほのめかした言葉にジェイドはごり押ししない。
「じゃ、また来年の《ヒストリアン・マッチ》でよろしくな」
「ああ、そうだな」
じゃあなと言ってハイタッチを交わす二人。
ジェイドは到着した、少し混みだした電車に乗って、見えなくなるまでホームに向かって手を振り続けた。




