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すべてはお気に召すままに

挿絵(By みてみん)vs.挿絵(By みてみん)

 準決勝第二試合までのインターバルは第一試合終了後から十分。

 その間に控え室では、志貴と真人で感想戦を行っていた。


「やっぱり最初に先輩が予想したとおりで、決まり手は『時を超えた仏教』でしたね」

「それを言うならば、真人くんが予想していた『白薔薇・赤薔薇の統合』、これも仁科さんが勝つのには不可欠だったようだね」

「そうですね。相原さんは第三フェーズで『世界周航の礎』ではなく、『日本仏教の礎』を発動させた方が防御力を高めたうえで攻撃にも転用できたかもしれませんね」


 二人の熱い感想をぼんやりと聞いていた明日香だが、画面の向こう側が暗くなったから声をかける。


「そろそろはじまるよ」

「本当だ。次の試合も面白そうだね」

「ですねぇ。去年は公式ルールブックを持っていなくて失格になった伍赤くんと、最近、このゲームを絡めたビジネス書を出版したルドルフさんの戦い。さっきは半分以上運での勝負だったけれど、今回はどちらが先に仕掛け、どちらが先にそれを防ぐのかという戦いになりそうですね」


 去年の年間リーグ最終戦で審判の判定時にうっかり公式ルールブックを持っていないことがバレてしまい、失格となった伍赤総花と経営者としての視線を交えて試合に臨むルドルフ・ホイットニー。

 まったく違う戦法をとる二人の試合は、まるで志貴の引退試合、真人との一戦のようになるのではないかと明日香が言うと、否定はしなかった志貴だが、こうも続けた。


「多分、二人の方がもっとすごい試合になるんじゃないかな」



 やがて照明が落とされ、試合がはじまるが、中継を見ていた三人はあることに気づく。


「ルドルフさんのほうの枚数、少ないわね」

「それに比べて伍赤さんの方は手札を見せすぎてますねぇ」

「うん。どちらも初心者(・・・)向けのデッキだね。とはいえ、ルドルフさんの方は高レア編成、伍赤君の方は低レア編成かな」


 ルドルフのデッキはSSRスーパースペシャルレアSR(スペシャルレア)中心で枚数は少ないが、それぞれの固有スキルがあるので、一般的には強い。一方伍赤総花の方はHR、N中心でどちらかというと枚数で稼ぐスタイルだ。単体では高レアに劣るが、使い方次第では|URを凌ぐかもしれないとされている。

 もちろん高レアの方が早く決着できるから好まれるが、それでもパックに入っている高レアの確率は低い。ここまでそろえるには並大抵の金銭と努力では不可能だ。

 その分、頭の使い方さえ間違わなければ低レアでも十分に勝負は可能。


「多分ルドルフさんの方は早く決着をつけたがってるのかな。互いにどういう風にカード選択するのかがカギとなってきそうだね」

「ですね。しかし、今までは伍赤さんはこんな編成はしてませんでしたよね。まさか縛りに興味を持ちはじめたとかですかね」

「どうかしら? たしかに真人君の意見も一理あるけど、この“レギオン・マッチ”の準決勝でわざわざする?」


 真人のデッキお試し説を否定した明日香だが、志貴は否定しなかった代わりに、今、明らかになっているカードを手元のメモ用紙に書いていく。

 しかし、彼でも読めないカード編成なのか、途中で解読を諦めていた。




 途中、第四フェーズまでは伍赤総花が一方的に攻撃される展開で、次々と彼のカードが退場に追いこまれていた。しかし、彼の手は顔色を変えることなく手元のカード、山札置き場、デッキを行ったり来たりしている。

 まるでなにかを待っているかのような顔つきで。

 ルドルフも彼の挙動になにかを感じたようで、余裕なはずなのに、決してその様子を微塵も感じさせていなかった。


「ねぇ、まさかと思うけれど、あのカード配置はわざとだったのかな?」

「いわれてみればそうですねぇ。志貴先輩はどう思います?」

「うん、明日香の言うとおりわざとだったと思うよ。でも、なんのためというところまでは読み取れないね」


 明日香の口出しに真人、志貴も同意する。

 明日香はつねにコスト計算や攻撃、防御計算を頭の中でしていたが、第三フェーズ目で異常を感じはじめ、第四フェーズ開始前、伍赤総花が選択したカードを見て確信した。

 しかし、それでも次の展開までは読み取れないらしく、すぐに黙りこんでしまう志貴と真人。

 それを茶化すように明日香は笑う。


「二人でも読み取れない手を使うって怖いわねぇ」

「多分、まだ僕たちが現役であったなら、確実に彼には負けていた気がするよ」


 やれやれと志貴は肩をすくめるが、真人も明日香もそれは大げさではないかと目を見合わせるだけだった。




 ルドルフも伍赤総花のなにかしらの意図に気づいてからは、最初の勢いそのままというわけにはいかなかったが、それでも次々とカード退場に追いこんでいく。

 そして、第八フェーズ。

 伍赤総花の手が最後の山札に置かれたカードに伸びる。


「ここで最後の山札をとったね」

「そうみたい。でも、まだ降参(リザイン)は宣言しないんだ」


 志貴も明日香も計算も推測もできていなかった。

 その代わり、今起こっていることの解説だけはできる。


「デッキには鳩摩羅什(くまらじゅう)以仁(もちひと)王、トマス=モア、稗田阿礼、パスカル、ジャンヌ・ダルク。普通にチンギス・ハンとかガリレオとかの高レア相手に勝ち目はないから、俺だったらここで降参しちゃうけれどなぁ」

「うん、僕でもそうだよ」


 真人の呟きに志貴も同意する。

 でも、なにか彼は用意しているのではないかとじっと見つめていると、手元にあったカードの一枚を引き抜いて、デッキに出す。

 そのカードを見た志貴も真人もそういうことかと声をあげる。

 明日香だけはどういうことかとよくわかっていなかった。


「『皇帝から授けられた御旗』ですよ、明日香先輩」

「なるほど。たしかに勝負はついたわね」


 岳飛のスキルは第五フェーズ以降に発動すると、バフ扱いだったものがデバフ扱いになるという特殊なもの。

 バフ剥がしでは剥がすことができない無敵状態を自らに付与、敵の任意のカード四枚を強制退場、二フェーズごとに選択できるカードが一枚減少、ゼロ枚になった時点で全体に自身の攻撃力の〇・七五倍で攻撃を加えることができる。

 伍赤総花は最初の退場カードを選ぶ。

 そのカードはおそらく次にルドルフが選択しそうな攻撃型のカードたち。

 この勝負は選択できるカードがあるうちにルドルフが降参する。そう読んだ志貴だが、予想よりも早くルドルフは攻撃に移る前に降参した。

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