意気込み ~ジェイド・ユグレインの場合~
“レギオン・マッチ”の会場近くのホテル。
大きく“歴史愛”と書かれたシャツを着た金髪の青年が、ノートパソコンを広げてテレビ電話をしていた。
『試合は明後日からだっけ?』
画面の向こう側から質問してきたのは三つ編みをした黒髪の女性。彼女はもともと日本に住んでいたが、四年前に彼、ジェイドが日本での留学後、帰国直前にプロポーズを受けたのをきっかけにスウェーデンに一緒に渡り、そのまま結婚してそこに住んでいた。
本当は今回、ついてきて里帰りする予定だったが、おなかに赤ちゃんがいることが一か月前に判明し、取りやめになってしまったのだ。
「そうだよ。美湖は寂しくない?」
『うーん、まあそりゃ寂しいよ。でも、ジェーンさんもいるし、アイリーンたちもいるから頑張れるっていう感じかな?』
日本時間は午後七時。
スウェーデンでは正午なので夜更かしをしているわけではないだろうが、どこか美湖の表情が暗かったので聞いてみたが、あっけらかんと笑う。
ちなみにジェーンというのは彼の妹、アイリーンは美湖の現在の職場の上司でどちらも家族ぐるみでのつきあいがある。一人寂しくしてないかと不安だったジェイドだけれど、そこまであっけらかんとされても、少し夫としては寂しかった。
『でもさ、ジェイドが世界ランク三位だとは思わなかったよ』
そんなこちら側の事情はお構いなしに、美湖はそういえばと思いだしたように驚いている。たしかにあまり彼女の目の前で《ヒストリアン・マッチ》をプレイしている記憶はない。でも、そこまで驚くようなことだったのかと反対に尋ねると、美湖は笑って頷いていた。
『だって、ジェイドって普段は遊びとは縁がありませんっていうような顔なのに、まさか歴史にも日本のカードゲームにも詳しいとは知らなかったよ』
「ま、そういう美湖に教えてもらわなきゃ、このゲームには出会わなかったからな」
彼は日本のサブカルチャーが好きだが、このゲームのことは知らなかった。たまたま彼が日本の歴史文化を紹介するテレビを見ていなければ、このカードゲームを知らなかったのでそれを感謝すると、あはは、照れるなと少し赤くなった頬をかいていた。
『ごめん、食事をいい加減にとってと怒られるから電話切るね。頑張って』
どうやら画面の向こう側では食事の準備ができて、何度も呼ばれていたらしい。申し訳なさそうに謝る彼女に大丈夫だと笑ったジェイドは電話を切り、ベッドに寝転がる。
「さ、ミコのためにも頑張りますか」




