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代表聖女と護衛について

今回から『光の収穫祭』準備編になります(n*´ω`*n)

 ☆★☆


 セイディが代表聖女に選ばれて、しばしの日が経ち。『光の収穫祭』を二週間後に控えたある日のこと。セイディは王宮の一室に招かれていた。どうにも、今から代表聖女の仕事についての説明があるらしい。それでも、こんなところに自分がいるのは場違いだ。一瞬そう思ったものの、セイディはただ椅子に座ってじっとしていた。心の中は、大パニックだ。それでも、隣にいるミリウスを見ていると少しずつ心が落ち着いていく。ミリウスはセイディを推薦したということから、この場に同席することが決まったらしい。


「あぁ、そう言えば。今日から『光の収穫祭』が終わるまで、お前のメイド業は休みだ。伝え忘れていたけれどさ」

「え?」

「大丈夫だ。有給休暇みたいなものにしておいてやるから。俺がアシェルに掛け合って……って、あいつの方が賛成しそうだな。まぁ、心配するな」

「あ、ありがとう、ございます……」


 今のところ、この部屋にはセイディとミリウスしかいない。だからだろうか、ミリウスはいつも通りの口調でそんなことを告げてくる。……有給休暇ならば、まだいいや。そう思う反面、メイドの仕事が出来ないのはもどかしいとも思ってしまう。セイディはメイドとしての仕事が好きだ。そう言うのも、関係しているのだろう。


「まぁ、推薦したのは俺だしな。最後まで付き合うぞ。……あと、一つ」

「どうか、なさいましたか?」

「代表聖女には四六時中護衛が付くことになっている。護衛の仕事は、俺たち騎士団とジャックのところの魔法騎士団の仕事だ。というわけで、俺が適当に護衛の役割を割り振っておいた。ジャックにも許可は取ったから、安心していいぞ」


 そう言ってミリウスが何かを差し出してくる。その紙に書かれていたのは護衛の一覧だった。書いてある名前はセイディにとって身近な人ばかりであり、大方セイディが変に緊張しないようにミリウスが気遣ってくれたのだろう。それでも、自分が護衛を付けられるなんて不思議な感覚だが。


「それから、『光の収穫祭』が行われる三日間の護衛は俺とジャックの役目だ。どうだ、安心できたか?」

「別の意味で、安心できなくなりました……」


 本当に、どうしてこんなにも高貴な人が自分の護衛なのだろうか? そう思いながら、セイディは呆然と先ほどの護衛の一覧表を見つめる。書いてある名前はアシェルやリオ、それからクリストファーたち三人の少年騎士。あとは……何故か、リアム。それから、『光の収穫祭』の間の護衛はミリウスとジャック。……なんという豪華なラインナップだ。やっぱり、場違いだ。


「み、ミリウス様は、去年までもこうやって護衛の仕事にあたられていたのですか……?」


 今はとにかく、変な緊張をほぐしたかった。そう言う意味でミリウスに声をかければ、ミリウスはしばし考えたのち「……最後は、三年前か」と言っていた。


「俺、こういう護衛の仕事大嫌いでさ。あんまりやらねぇから。……今回は、特別」


 ……特別。それはきっと、ミリウスが推薦者だからだろう。そう思い、セイディは少しだけ俯いた。マギニス帝国へのけん制が含まれているとはいえ、自分に代表聖女が務まるのだろうか。一瞬そう思って弱気になってしまったが、もう引き返すことは出来ない。今引き返せば、ミリウスの顔に泥を塗ることになってしまう。ならば、やるしかない。


「私……頑張ります」

「あぁ、それでいい」


 セイディが顔を上げてミリウスにそう告げれば、ミリウスは口元をふっと緩めてそう言ってくれた。この間から感じていることだが、ミリウスは少しだけセイディに気を許してくれているらしい。リオやアシェル、クリストファーのように露骨ではないが、それでもミリウスの態度は確実に柔らかくなっていた。


「まぁ、俺もセイディには感謝しているし……って、そろそろか」


 ミリウスはそう独り言をぼやき、視線を部屋の扉に注ぐ。それからしばらくすると、扉が開き数人の大臣や王都の神殿勤めの神官が入ってくる。その表情は神妙なものであり、誰もがセイディを見て目を細めた。とはいっても、それは好意からではない。品定めをしているような視線だった。その視線に一瞬怯みながらも、セイディはただ真正面を見つめる。やると決めたからには、何を言われても辞めるつもりはない。代表聖女は、自らが務めあげる。セイディの目には、そんな強い意志が宿っていた。


「殿下。そちらが、殿下の推薦した聖女でしょうか?」


 一人の神官が、ミリウスにそう声をかけてくる。だからだろう、ミリウスは唇の端を上げ不敵に笑うと「あぁ、文句があるのか?」と堂々と告げた。それに対し、周囲の人間が怯む。ミリウスには王族特有なのか迫力がある。それが、嫌というほど伝わったのだろう。


「で、ですがその娘は高位貴族ではありません。これでは、伝統が……」

「伝統とか言っている暇、あるのか? 今の国の状況、分かっているのか?」


 ミリウスのいつもよりも数段低いその声に、神官も大臣も黙り込む。どうやら、本当にこの国はまずい状況下に置かれているらしい。それを実感しながらも、セイディはただ前を見つめていた。今は、怯んだりするところは見せてはいけない。その一心だった。

次回更新は来週の金曜日の予定です(o*。_。)oペコッ


いつもお読みいただき誠にありがとうございます。引き続きよろしくお願いいたします!

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