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何故、それを私に?

多分次でミリウスのターンは終わりです(n*´ω`*n)多分。

「……えっと」


 それから、しばしの沈黙。アシェルは近くに置いてある椅子を手元に引き寄せ、そこに腰かける。だが、それだけで何も言わない。ただ、セイディの顔をじーっと見つめてくるだけだ。それにいたたまれなくなり、セイディが肩をすくめながら声をかけても、「いや、別に」としか返してくれない。なんだろうか、アシェルは少し疲れているのかもしれない。オーラも、顔色も。いつもよりも覇気がない気がした。


「ミリウス様、ご無事で、よかった、です」


 この沈黙が、重い。せめて、リリスがいてくれたならば。そう思うが、アシェルは今「内密な話」と言っていた。それはつまり、リリスにも聞かれたくないことなのだろう。そう思い直し、セイディはリリスに助けを求めることを止めた。リリスだって、セイディの看病をしてくれていて疲れているのだ。そんな、一々迷惑はかけられない。


「そうだね。まぁ、団長が無事でよかったと、俺は心の底から思っているし」


 セイディの問いかけに、アシェルはそんな言葉だけを返し、また黙ってしまった。……もしかしたら、内密な話が重めの話なのかもしれない。ふと、その可能性にたどり着いたセイディは変に話を振ることを止めた。今は、ミリウスを待つことが先決。そう自分に言い聞かせ、セイディはただ茫然と視線を上に移した。


「……その」


 それでも、あまりにも沈黙が辛い。セイディと一緒にいれば、何かと世話を焼いてくるアシェルが黙っているのが異様でしかない。そんなことを考えてしまい、セイディがアシェルに視線を戻し口を出そうとしたときだった。ふと、医務室の扉が開き誰かが入ってくるような音がした。かつかつと足音を立てながら、セイディとアシェルの側に寄ってくる人物。その人物は、ほかでもないミリウスで。


「アシェル、セイディ」

「……遅い」

「アシェルが急いで行っただけだろう。俺は通常通りに歩いてきただけだから、お前より遅いのは当然。それに俺、なんだかんだ言っても病み上がりだぞ? 優しくしてくれてもいいじゃないか」

「そう言う時だけ病み上がりっていう言い訳を使うの、見苦しいけど」


 ミリウスに小言を言うアシェルは、いつもと変わりなかった。それにホッと一息をついたセイディが二人を見据えれば、ミリウスも近くにあった椅子を引き寄せ、そこに腰を下ろす。その後すぐに仕事モードに切り替えたのか、「……面倒なことに、なってな」と言って額を押さえる。……面倒なこととは、何だろうか。ミリウスが倒れたことに、何か関係しているのだろうか。


「えっと」

「まぁ、簡潔に言えば今年の『光の収穫祭』がまともに開催できるか、今になって危うくなってきた」


 怪訝な表情を浮かべるセイディに、アシェルはそんなことを告げてくる。『光の収穫祭』はリア王国一のお祭り。それを中止にするなど、普通で考えればありえない。それは、セイディだって知っている。そのお祭りが、この国が建国された時から続いているということも、知っている。確か、歴史上一度も中止されたことはないはずだ。


「今、王族と大臣たちの会議では、『光の収穫祭』の中止の話題が出ていてな。……理由はまだ公には出来ないけど、ただ他国絡みのこと、とだけ言っておく」

「……それから、団長が倒れた案件も間違いなく他国絡みだって確信も持ったし、このまま放っておくことが出来ないというのも、ある」


 そんなことを言われても、セイディにはいまいちピンとこない。セイディはそんなことを考えて、目を瞬かせる。そうすれば、アシェルは少し眉を下げ「毒が、この国にないものでね」と教えてくれた。……それは、セイディも薄々感じていたことだ。騎士や魔法騎士が一人残らず分からない毒ともなれば、他国の物。もしくは新種と考えるのが妥当だろう。


「ですが、何故それを私に?」


 だが、それよりも。何故、その案件をセイディに告げてきたのだろうか。セイディは騎士団の寄宿舎勤めのただのメイドである。元聖女であり、元子爵令嬢という立場ではあるが、それ以上でもそれ以下でもない。だからこそ、こんなことを教えてもらうのは筋違いだし、力になったりすることもできない。そんな意味を込めた視線をアシェルに送れば、アシェルは「俺は知らない」と言って、そのままミリウスに視線を向ける。


「団長が、セイディには教えておけって言うから、教えているだけ。……俺の身分じゃ、団長に逆らうなんて到底できないから」


 どこか疲れたような表情でそう言うアシェルに、ミリウスは何か言葉を付け足すことはない。これは、今は何も教えてくれないということだろう。それを理解し、セイディは訊くことを止めた。……それに、ミリウスのことだ。考えなしに、行動しているわけではない。そう、セイディは信じている。


「じゃあ、そう言うことでアシェルも用済み。俺、セイディと二人で話す」

「……正気?」

「お礼ぐらい、言っておくべきだ」


 でも、それにしても。いきなりミリウスと二人きりだなんて、ハードルが高すぎないだろうか? アシェルを追い出そうとするミリウスに対して、セイディはそんなことを思い視線だけでアシェルに助けを求める。なのに、アシェルはそんなセイディの助けを無視して「分かった」と言って医務室を出て行ってしまうのだから、笑えない。……そもそも、王族の一人であるミリウスと、何を話せというのだろうか。そんなことを思い、セイディはただ茫然としていた。いや、呆然とすること「しか」出来なかった。

次回更新は予定通り来週の火曜日になります(o*。_。)oペコッ

また、当作品の合計PVが400万を超えました! 誠にありがとうございます(n*´ω`*n)引き続きよろしくお願いいたします! もうじきお話が大きく動きだします……!


(あと、密に新ではない連載始めました。過去に書いて完結済みの作品を掲載してみましたので、よろしければどうぞ(ヒロインに婚約解消をお願いされて、縋るヒーローのお話です))

タイトルは『素っ気ない婚約者に婚約の解消をお願いしてみたら、実は私のことが好きすぎると判明しました。いや、不器用にも限度がありますよね?』というものです~。

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