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自分にできることを、精一杯

金曜日は体調不良にてお休みしておりました(´・ω・`)すみません。

「……セイディ。一度、やってみてくれる?」


 どことなく悔しそうなアシェルに声をかけることもできず、セイディがその場で呆然としていれば、リオがそう声をかけてくる。……正直なところ、セイディが何かを出来るとは到底思えない。スペシャリストが揃っている以上、浅く広く学んでいるセイディでは、出来る気がしない。それでも、頼られた以上精一杯手を尽くすことは出来るのではないだろうか。そう考え、セイディは手のひらを握った。


「……わ、私、は」

「殿下は言っていたぞ」


 セイディが返事を躊躇っていれば、不意にジャックがセイディの方に近づいてくる。その目は珍しくセイディのことをまっすぐに見据えており、セイディは息をのんだ。……なんといえばいいのだろうか、ジャックに真正面から見つめられることが珍しく、変に緊張してしまう。


「セイディの力は、特殊だと。殿下がそう言っていたのを知っているから、俺たちはお前に望みをかけている。……殿下の、見込んだ力だろう?」

「……」


 ジャックの言葉に、心が戸惑う。今まで、聖女として治癒には当たってきた。それでも、解毒なんてめったなことではしたことがない。もしも失敗したら、どうすればいいだろうか。そう思って、恐れてしまっているのだろうか。……いや、違う。自分の力が及ばない現実を知るのに、怯えているのだろう。


(……でも、ダメよ。弱気になっていてわ。私は自分にできることを精一杯することしか、出来ないのだから)


 だが、そう思い直す。そのため、ジャックのことをまっすぐに見つめ返し「やります」と告げた。その瞬間、ジャックは「……それでこそ、殿下の見込んだ奴だ」とだけ言い表情を少しだけ緩めてくれる。その表情を見ると、緊張が少しだけ解けた。


「私は、自分にやれることを精一杯やります。なので、状況などを教えていただきたいです。出来る限り、最大の力を生かしたいので」

「……わかった」


 そんなセイディの言葉で、アシェルはようやく表情を整え、セイディに状況などを説明してくれた。アシェル曰く、ミリウスは街にお忍びで出かけていたそう。その際に、街の一角に何故か魔物の群れが現れたと。その魔物をミリウスは一人で倒したものの、隙を突かれ毒を浴びてしまったそうだ。……その証言は、助けに入った魔法騎士のだということだ。


(魔物の毒。……どの魔物による毒カが重要よね。けど、どうして街に魔物が現れるの……?)


 街には魔物が入らないように結界が張ってあるはずだ。まぁ、そこはセイディの専門外なのでアシェルやジャックに任せた方がいいだろう。その証拠に、ジャックは「魔物が現れた理由はこっちで調査中だ」と追加で教えてくれる。ならば、セイディにできることは解毒をすることだけだろう。


「魔物の毒ということは、いろいろと種類があるはずです。ですが、専門の方の力が効かないということは、かなり珍しいものだと思います。魔物の種類は、分かりますか?」

「……あいつによれば、『見たことのない種類』ということだった。……だから、こっちもいろいろと苦戦している」

「さようでございますか。……珍しい魔物ということは、生息数が少ないか、はたまたこの地域に住んでいないか、ですね」


 そんなことを考え、セイディは目を瞑る。生息数が少なければ、それだけ知っている人間は少ない。しかし、魔法騎士や騎士は万が一の時のためにと魔物について学ぶと聞いている。もちろん、珍しいものも。そうなれば、出てくるのは後者。この地域の魔物ではない存在。もしかしたら、国外のものかもしれない。


(魔物の種類なんて、私には判別不可能だし……。もしも、他国のものだとすればもっと判別できないわ)


 解毒魔法とは、様々な魔法を組み合わせて作る。そして、術者の光の魔力をそれに順応させ、注ぎ込むのが基本だ。魔力の強さなどにも効力は左右するものの、基本的には知識がものを言う。


(症状から分別して、考える? ううん、それだと紛らわしいわ。……こうなったら、私にできることは光の魔力の効力を最大限まで高めて、注ぎ込む)


 それは、聖女の身体にある程度のリスクを与える方法だ。だが、もうそれしかない。判別不可能ならば、力技で何とかするしかない。これ以上考え込んでいると、この間に悪化してしまう可能性がある。この方法はあまり取りたくない方法だが、背に腹は代えられない。


「少し、準備をしてくるので一旦部屋に戻ってきます」

「……セイディ?」

「光の魔力を高めるには、いろいろと準備が必要なのです。私室に道具がありますので、取ってきます」


 アシェルにそれだけを端的に伝え、セイディはささっと私室に戻っていく。聖女の力を高める道具は、基本的には高価なものだ。大体の物は売り払ってしまったが、もしもの時のことを考え指輪を一つだけ持っていた。……まさか、役に立つときが来るなんて。そんなことを思いながら、セイディは真剣な顔のまま私室に戻る廊下を歩く。


「……セイディ」

「フレディ様。私今、とても忙しいのです」


 だからこそ、セイディの私室の前で待ち伏せしていたフレディに構っている暇はない。そう思い、セイディが目の前にいるフレディに視線を向ければ、フレディは何かをセイディに差し出してきた。フレディの手のひらがゆっくりと開かれ、その手の中にあったのは――光り輝く、魔法石だった。

本日こちらのIFストーリーに当たる「たくましい最強聖女はオネェ系騎士様に愛されまくり」というものを投下しました。本作品は「セイディが聖女時代にヒーローと出逢っていたら?」というものをテーマに描いていきます。逆ハーではありません。


また、更新が止まっている男性視点の外伝も近いうちに更新再開予定です(o*。_。)oペコッ


いつも読んでくださり、誠にありがとうございます! 引き続きよろしくお願いいたします!

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