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ちょろい少年騎士とタックル×2

(いやいやいや、なにこれ、新手の嫌がらせ!?)


 そんなことを考えながら、セイディは自身に嬉しそうに抱き着いてくるクリストファーを呆然と見つめた。幸いにも寸前で頭を打つことは避けられたため、特別怪我を負ったわけではない。ただ、ちょっと精神的に混乱しているだけだ。何故、あんなにも自身を警戒していたクリストファーが、こんなにも懐いたような様子を見せるのか。何故、大型犬のように見えてしまうのか。……もしかしたら、今回のことでセイディに懐いたのかも……と思ったが、それは考えられないとセイディは一刀両断する。それで懐いたら、ちょろすぎて将来が心配になるためだ。


「あのー、クリストファー様? ちょっと、どいてくださいませんか……?」


 とりあえず、クリストファーを何とかしなくては。そう思いながらセイディがそう声をかければ、クリストファーはようやく顔を上げてくれた。……その頭に、大きな耳が見える気がするのはきっと幻覚だろう。その耳が、揺れているように見えるのも、きっと気のせいだろう。


「セイディさんのおかげで、僕は何とか騎士を続けられることになりそうです!」

「……あの、私何もしていませんけれど?」


 きらきらとした目で見つめられ、セイディは若干引いた。この目には純粋な好意が映っている。そこに、嘘偽りは見えない。……それに、このこと自体がセイディのおかげではない。自分はただ単に背中を押しただけだ。だから、ここまで感謝される必要はないし、懐かれる意味も分からない。それから、ここまでちょろいと純粋に将来が心配になる。


「いえ、セイディさんが背中を押してくれたからです! 僕一人だったら、ずっと家族と仲違いをしたままだったでしょうから……」

「……う」


 クリストファーの、きらきらとした目がセイディの心に針を刺していく。……本当に、感謝されるようなことはしていない。だが、ここまで純粋に感謝を示されたら、いろいろとやりにくい。断り続けたらそれはそれで問題だし、素直に受け取ることもできやしない。……本当に、どうすればいいのだろうか。


「と、とりあえず、落ち着きましょう? そもそも、こんなに簡単に気を許したら、悪い人に騙されてしまいますよ?」

「いえ、全く問題ありません。僕はセイディさんだから、こうやって気を許しているので」


 ……全く、安心できない。きらきらとした目を見つめながら、セイディは頭を抱えてしまいそうになった。この態度は良く受け取れば「認められた」ということなのだろう。しかし、やはり突然態度を変えられると大問題だ。まず、脳も心も追いついていかない。ついでに、本気で落ち着いてほしい。


「そのー、私、まだ仕事があるので……出来れば、解放してくださると」

「あっ、そ、そうですよね」


 やっぱり、まずは落ち着いてもらおう。そう思い、セイディはゆっくりとそう言った。騎士団や魔法騎士団の中では、セイディは「仕事熱心」で通っている。そのため、仕事のことを出せばすぐに退いてくれると思った。……その予想は、ばっちりと当たってしまう。なんだか、今度は分かりやすすぎて別の意味で今度は心配になる。


(……ここまでちょろいと、いろいろ年上としてちょっと注意……したい)


 ちょろいのは裏を返せば素直ということなのだろう。だが、世の中はそれではやっていけない。特にクリストファーは名門侯爵家の令息。悪い人が寄ってくる可能性も、明らかに高い。だったら、何とかしてでも教育しなければ。……何故、そこまで自分がする必要があるのかはわからないし、そこまで思うのかはわからない。ただ、分かるのは年下を放っておけないという、お姉さん心が働いてしまったということなのだろう。


「あのですね、クリストファー様」


 ……しかし、注意をしようとすればその心が揺れる。その理由も、やはりその目がきらきらとしているからだ。……そのきらきらとした目を見ていると、自分はこれから残酷なことを言ってしまうのではないかと思い、口をつぐんでしまう。いや、それでもきちんと注意をする必要はある。そうだ。これは、クリストファーの未来に投資しているという意味も含まれている……はずだ。そう思い直し、セイディは首を軽く横に振って、クリストファーのことを見つめた。そして、口をもう一度開こうとしたときだった。


「セイディさん! ちょっといいですか!?」

「ぎゃあっ!」


 だが、今度は背中からタックルを食らった。そのままクリストファーの方に倒れこんでしまいそうになれば、クリストファーはセイディのことを受け止めてくれる。……何とか、助かったらしい。


「って、クリストファー。帰ってきていたのか」

「……オーティス。気を付けた方がいいかと。セイディさん、痛そうですから」


 ……お前が言うな。


 心の中でそう思いながら、セイディはタックルがあった方向に視線を向けた。すると、そこには焦ったような表情を浮かべたオーティスが、息を切らして立っていた。

クリストファーのちょろさは随一です(´・ω・`)


あと、本日は外伝Ⅰの方も更新しておりますので、よろしければそちらもよろしくお願いいたします!(ヴェリテ公国の外伝Ⅰの方も今月か来月のうちに連載開始たい……ですね(実は手元ですでに書き始めております)


毎回読んでくださり、誠にありがとうございます。引き続きよろしくお願いいたします~!

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