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フレディのお願い(?)


 ☆★☆


「やっほう、セイディ」

「……」

「いやいや、無言で扉閉めないでよ」


 とある日の仕事の休憩時間。セイディが私室にてのんびりとしていると、部屋の扉が数回ノックされた。そのため、ゆっくりと扉を開けると――そこには、何故かフレディが満面の笑みを浮かべて立っていた。だから、セイディは無言で扉を閉めようとした。


「いえ、きちんと扉から入ってくるなど、幻覚を見ているのかと……」

「僕がいつも窓から入ってくるとは思わないでよ……」

「今まで窓以外から入って来たこと、ありましたっけ?」

「ないね」


 セイディの言葉に、フレディはけらけらと笑いながらそんなことを言う。今まで、フレディはセイディの元を訪れるとき、決まって窓から入ってきた。だが、何故か今日はきちんと扉から入ってきている。それが意外過ぎて、セイディは幻覚を見ているのかと思ってしまったのだ。……失礼かとも思うが、真実なので仕方がない。それは、フレディにもわかっていた。


「入って良い?」

「ダメって言っても、入ってくるじゃないですか」


 半ばあきらめたようにセイディが奥に引っ込めば、やはりフレディは遠慮なく「失礼するよ」と一応挨拶をして入ってくる。その後、いつもの席に腰を下ろした。そんなフレディを見つめ、セイディは「……たまにはこっちから歓迎するべきか」と思い、応接セットの準備を始める。幸い、この間リオからもらった焼き菓子があったので、それをお茶請けにすればいいだろう。


「お茶は……」

「たまにはこっちで準備します。あと、私は後三十分で仕事に戻るので、それまでに帰っていただけると」


 フレディの言葉にそれだけを返したセイディは、ゆっくりとトレーに載せたお茶とリオからもらったマドレーヌをフレディの前に出した。王都の街で買ったものなので、フレディの口に合うかは分からないが、それでもないよりはまだマシだろう。……そもそも、王宮の料理人のお菓子を日常的に食べているフレディが、街のお菓子を気に入るのかは分からないのだが。


「……お言葉なのですが、本日はなぜこちらに……?」


 フレディは用事がなくても、容赦なく訪ねてくる。しかし、最近はセイディの元婚約者であるジャレッドとのことや、実家であるオフラハティ子爵家の面々の動向を教えてくれることも多い。とはいっても、本当に些細なことであり、「どこにいた」という目撃情報などだけである。その情報もセイディからすれば比較的ありがたいことなので、助かってはいるのだが。


「まぁ、セイディの予想通り? 最近キミの元婚約者が王宮にやってきてね。僕に人探しの依頼をしてきたんだよ。……対象はもちろん、セイディだ」

「……さようでございますか」


 宮廷魔法使いは、暇なときに人探しなどを請け負っていたらしい。それは、この間フレディ本人から聞いたことだ。……とはいっても、宮廷魔法使いがフレディ一人になってからは、そこまで暇な時がないらしく滅多なことでは依頼は受けないらしいのだが。


「その依頼は……」

「もちろん、断ったよ。僕はただじゃ動かないからね。ま、金品を積まれてもあの男の依頼には動かなかっただろうけれど」


 けらけらと笑いながら、フレディは出された紅茶に口をつけた。その味は何処か親しみやすい味であり、フレディの出すものよりはかなりランクが劣っている。しかし、フレディからすれば結構美味だった。きっと、好みに合ったのだろう。


「……そうですか」

「うん、そう。……で、話は変わるんだけれど、セイディ社交界とは縁遠いよね?」

「……はい、まぁ」


 いきなり、何故そう言う話に内容が変わるんだ。そう思ってセイディが目をぱちぱちと瞬かせていると、フレディは「じゃ、ちょっと頼まれてくれない?」なんてけろっと言ってくる。……何を、頼まれるのだろうか。ちょっとしたことならばまだいいのだが、自分にできないことだけは困る。


「……ちょっとしたことならば、良いのですが。あまり、重要なことは……」

「本当にちょっとしたことだからいいよ。実はね、僕今度ある貴族のパーティーの警護をしなくちゃいけないんだ」

「そうなのですね」

「それで、警護だとバレないようにカモフラージュをしなくちゃいけなくて。そのためのパートナーを探しているんだよ。……セイディ、ちょっとおしゃれをして僕のパートナーにならない?」

「……はい?」


 そんなフレディの言葉に、セイディは唖然としてしまった。……社交界。それは、今までのセイディに最も程遠い言葉だったからだ。

次回更新は月曜日か火曜日です(o_ _)o))今回からフレディのターンになります(n*´ω`*n)

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