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帰り道事情


 セイディとジャックがカフェを出て歩くこと約五分。時計の針は午後四時を指しており、人通りはまだまだ多い。そんな中、セイディとジャックは相変わらず無言のまま横並びで歩いていた。


 道行く女性たちはジャックを見て頬を染める、もしくはこそこそと話をしている。しかし、セイディの存在がけん制になっているのか、誰一人として声はかけてこなかった。それがジャックの望みだったので、ジャック本人は大層満足しているのだろう。……顔には、一切出ていないが。


(……魔法騎士団の方々とも最近関わって来たけれど、皆様大層美形なのよね……)


 騎士団の時も思ったが、魔法騎士団に所属している面々もかなり美形が多い。ジャック、リアム。諸々の人たち。これは確かに……女人禁制にした方が良いかもしれない。そうしないと、男漁りに来る女性が出てきてしまうだろう。そう思いながら、セイディはただゆっくりと前を向いて歩いていた。


「……おい、お前」


 そんな時、不意にジャックが声をかけてきた。……また「お前」呼びに戻っている。それに気が付いたが、セイディはそれを気にした風もなく「何でしょうか?」とだけ返事をした。ちなみに、視線は二人とも前を向いたままである。決して、顔を見合わせたりしない。


「今日は……その、悪かった、な。帰り、付き合わせて……」


 そして、ジャックはしどろもどろになりながらそんなことをセイディに告げてきた。その言葉を聞いて、セイディは「これぐらいしか、私にできることはありませんので」と言葉を返す。セイディはジャックの女性に不慣れなことを治す手伝いは出来ない。そこは、管轄外だと思っているからだ。でも、並んで一緒に帰りほかの女性をけん制する役目ぐらいならば、出来る。……たとえ、一メートル半以上離れていたとしても。


「リアムも、毎度毎度迷惑をかけているようだが……」

「……ははは」


 ジャックのその言葉に、セイディは乾いた笑いを零すことしか出来なかった。初めに「あまりリアムと関わりたくない」という意思は、ジャックに伝えていた。だが、リアムはそんなことお構いなしとばかりにセイディに近づいてきて、構おうとする。ああいうタイプは無視が一番効く。それをわかっていたので、セイディは無視をしていたのだが……鬱陶しいので、結局相手をしてしまうのだ。それが悪いことだとは知っていても、反応してしまうのはセイディが少々短気だからかもしれない。


「俺も、注意はしているんだ。だが、アイツは聞く耳を持たない。……というか、アイツぐらいだ。あそこまで言うことを聞かないのは」

「……そうなのですね」

「あぁ。まぁ、実力があるからクビにすることは考えていないがな」


 そんなジャックの声音は、真面目なもので。きっと、心の底からそう思っているのだろう。ここ最近関わってきて分かったことだが、ジャックはなんだかんだ言っても団員たちから慕われている。表では「堅物団長」などと呼ばれていても、裏ではきちんと慕われているのだ。その表の言葉も、きっと信頼しているからこそ出た言葉なのだろう。


「……団長は、団員一人一人の適性に合った仕事を割り振らなくちゃならない。だから、一人一人をきちんと観察する必要がある」


 続けられたジャックの言葉に、セイディは驚かなかった。ジャックは、きちんと人を見ている。そして、適正な仕事を割り振っている。それは、ここ最近関わり始めたセイディでもわかるレベルだった。


 ちなみに、騎士団の仕事の割り振りも普通は団長の仕事だ。……まぁ、ミリウスが大のデスクワーク嫌いなので、結局アシェルがする羽目になっているのだが。


「ジャック様は……いえ、何でもありません」


 多分、ジャックはセイディに何かを言われることを嫌がるだろう。それを分かっていたので、セイディはそこで言葉を切った。しかし、意外なことにジャックは「……続けろ」と言ってくる。そんな言葉を無下にすることも出来ないので、セイディはまた口を開いた。


「ジャック様は……素晴らしいお方、なのですね」

「……はぁ?」

「いえ、素直にそう思っただけです。人の上に立つ存在として、素晴らしい人格者だと思います」


 少し、上から目線だったかもしれない。そう思ったが、ジャックは「……そうか」と言葉を返してくるだけだった。その後、また二人は無言で歩く。そうすれば、騎士団と魔法騎士団の寄宿舎が見えてきた。よくよく目を凝らせば、入り口では誰かが待ってくれているようで。……セイディの予想では、アシェルかリオ辺りだろう。


「セイディ、おかえり。……って、あれ? なんでジャック様が……?」


 その予想通り、セイディを出迎えてくれたのはリオだった。そして、セイディの隣にいるジャックに視線を移し、怪訝そうな表情になる。それに居心地の悪さを感じたのか、ジャックは「先に戻る」とだけ言葉を残し、さっさとその場を立ち去ろうとする。


「……まぁ、今日は割と助かった。……感謝する」


 しかし、突然振り向くとジャックはそんな言葉をセイディに向けて発した。それは……セイディからすればかなり意外な言葉だった。

ジャックのターンはいったん終了です(o_ _)o))次回の更新は……金曜日か土曜日になると思います。引き続きよろしくお願いいたします!

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