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偶然ばったりと


 ☆★☆


「な、な、何故、お前がここに……!」

「……本日、休日なのですが?」


 それから数日後。魔法騎士団の方の仕事にも慣れたセイディは、街で「偶然」ジャックと鉢合わせていた。本日はパトロールに出る者以外、みな休日という貴重な日である。騎士団長であるミリウス曰く「たまには友人と出掛けたいだろう?」ということらしい。もちろん、パトロールに出ている者は後日別で休日がもらえる。


 セイディも例にもれず、休日だった。そのため、たまには一人で街をぶらぶらとしてみようと思ったのだ。そして、街に出てウィンドウショッピングを楽しむこと、約一時間。何故か、街でジャックと鉢合わせた。


「……今日は、一人か?」

「はい、たまには一人でぶらぶらしようかと」


 ジャックの問いかけに、セイディはそんな言葉を返す。ここ数日で分かったことだが、ジャックは「堅物」ではあるものの、それ以上に女性慣れしていなかった。つまり……そう、「初心」なのだ。


「ジャック様も、お一人ですか?」


 それは、世間話の一環だった。天気の良い休日の午後。そうなれば、出歩きたくなる気持ちはよくわかる。だが、ジャックはセイディのその言葉を聞いて、眉を顰める。……何か、余計なことでも言っただろうか? そう思い、セイディは「……すみません」と無意識のうちに謝っていた。


「……いや、謝ってほしいわけじゃ、ない。ただ、実家に顔を見せに行った帰りというだけだ」


 そんなセイディを見てか、ジャックは口元を押さえながらそんなことを教えてくれる。そんなジャックのことを、少々意外に思ってしまったが口にも顔にも出さなかった。……何が意外かと言えば、素直にセイディに対して謝ったことが、である。


「……お前は、あ、実家を勘当されていたのか」

「はい、そうですね」


 やはり、ジャックもこのことについて知っていたか。セイディはそう軽く考え、ただ頷いた。その後、近くにあった時計に視線を移す。午後三時。……そろそろ、美味しいスイーツでも食べたい時間帯だ。


「では、ジャック様。私はこの後何か食べに行きますので、これにて失礼いたします」


 五時には戻らないと、いろいろとややこしいことになりそうだ。それが分かっていたからこそ、セイディは踵を返し、この間教えてもらったカフェなどの飲食店が立ち並ぶ通りに向かった。ジャックは、セイディのことを引き止めなかった。だから、また会うのは明日だろう。そう、思っていたのに――……。


「な、何故、お前が……!」

「……それは、こちらのセリフなのですが……」


 何故か、カフェでまたしてもばったりと会ってしまったのだ。セイディとジャックが鉢合わせたカフェは、ここ最近若い人たちから高い人気を誇っているカフェだ。今も、店先には行列が出来ており、店内には人がたくさん入っている。


「俺はだな……リアムに、ここが絶品だと聞いたから……」

「……奇遇ですね。私も、リオさんにここがおススメだと聞きました」


 そんなことを言いながら、セイディが行列の最後尾に並べば、ジャックもその後ろに並ぶ。相変わらずジャックはセイディ……というか、女性のことが苦手らしく、距離を取っている。まぁ、それでもセイディからすれば全然構わないのだが。そう思いながら、セイディはリオから借りてきた王都のパンフレットをめくった。


「何を、見ている?」

「リオさんからお借りしてきた、王都のパンフレットです。最新号らしくて、いろいろと面白そうなことが載っていますよ」


 セイディがそう言ってジャックにパンフレットを手渡せば、ジャックは興味深そうにそのパンフレットを眺めている。パンフレットには最近流行りのカフェから、おしゃれな服屋。さらには、デートにおススメのレストランなどが書いてある。毎月発行されているこのパンフレットを、リオはいつも買っているらしい。……それを聞いた時、セイディは「女子力の塊?」と思ってしまったのは記憶に新しい。


「お前は……このパンフレットで、ここを知ったのか?」

「はい、そうです」


 ジャックはセイディにパンフレットを返し、そんなことを問いかけてくる。だから、セイディは端的にそう返した。別に、嘘をつく必要などない。そもそも、素直なことが一番だ。


「ジャック様は……って、あまり私とお話したくありませんよね。すみません」


 少しだけ、ジャックの事情を知りたかったかもしれない。そう思ったが、ジャックはセイディとあまり話したくないだろう。そう判断し、セイディはまた前を向いていた。丁度客の入れ替わりの時間帯なのか、行列はかなり短くなっていた。


 それから約十分後。セイディはようやく店内に入ることが出来たのだが――。


「だから、何故一緒になるんだ!」


 やはりと言っては良いのかは分からないが、ジャックと相席になってしまっていた。

いつもありがとうございますm(_ _"m)次回更新は月曜日の予定です。……「予定」というレベルですがね……。

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