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魔法騎士団員リアム・ラミレス


 ☆★☆


「えーっと……」


 騎士団と魔法騎士団の合同訓練の初日。セイディは魔法騎士団の寄宿舎の内部にいた。本日よりセイディの新たな仕事が始まる。その中で、まずは一番時間のかかりそうな魔法騎士団の寄宿舎の掃除から。そう思い、寄宿舎内部の地図を頼りに、セイディは掃除に取り掛かっていた。


 魔法騎士団の寄宿舎は、騎士団の寄宿舎と対になるように建てられているようだ。しかし、置いてあるものは全く違う。こちらは『魔法』騎士団というだけはあり、便利な魔道具が多い。しかも、最新式のものだ。……騎士団は、大方魔道具を買う費用をケチっているのだろう。それは、容易に想像がついた。


「次は……」


 一階の掃除を終える頃には、時計の針は午前十一時を指していた。……そろそろ、お昼だろうか。一旦、騎士団の寄宿舎に戻った方が良いかもしれない。そう思い、セイディが魔道具を持って玄関に向かおうと歩き出したとき……後ろから「おーい」と声がかけられた気がした。


(いや、皆様訓練中だし……気のせいよね)


 しかし、そう思い直しセイディはその声を無視して歩き出した。だが、歩き出せばまた「おーいってば」という声が聞こえてくる。……まさか、幽霊? それとも、不審者? そんな答えを思い浮かべたセイディは、歩幅を大きくし歩くスピードを速める。


(……あれ? けど不審者が私に声をかけるわけがない……わよね?)


 それからしばらく歩いたのち、ようやくセイディはその結論に達した。そのため、その場に立ち止まり勢いよく後ろを振り返る。……でも、後ろには誰もいなかった。そう、後ろ『には』。


「セイディ。つれないね。そんな風に無視しなくてもいいじゃん」

「ぎゃあっ!」


 セイディのすぐ横から、そんな声が聞こえて来てセイディは大きな悲鳴を上げた。……到底、女の子らしくない悲鳴を。慌ててそちらに視線を向ければ……そこには手をひらひらと振り軽薄に見える笑みを浮かべたリアムが、いた。リアムは魔法騎士団の制服を身に付けているものの、セイディを見てただ笑うだけだ。


「り、リアム様……! 何故、ここに……!」

「何故って……。俺、結構訓練をサボったりするんだ。ほら、訓練って面倒じゃん?」

「め、面倒って……!」


 それは、魔法騎士団に所属している意味がないのでは? そんなことを思い、セイディが目をぱちぱちと瞬かせていると、リアムは「いいじゃん」なんて言いながら、腕を軽く組む。その後、セイディに軽くウインクをしてきた。……どこかで、既視感がある気がした。セイディは一瞬そんなことを思ったが、すぐにその既視感を「フレディ」のことだと理解した。……まぁ、フレディとリアムには違うところもあるのだが。


「……サボったりされて、ジャック様に怒られないのですか?」

「ははっ、鋭いねぇ。滅茶苦茶怒られるよ。でもさ、俺って不真面目な男だし。真面目に生きるのなんて、面倒じゃん」


 リアムはセイディの問いかけにそれだけを返すと「そろそろ、お昼かな」なんて時計を見つめてぼやく。その目は綺麗な色をしており、リアムが「根っからの悪い人」ではない気がした。訓練をサボり、女性を口説きまわり、軽薄な笑みを浮かべているのだが。


「……まぁ、私はリアム様が怒られようが知りませんが」

「そうだね。セイディには無関係だね」


 けらけらと笑いながら、リアムはセイディのことを見据えてくる。だが、セイディからすればこの後も仕事があるのだ。リアムと長話をするような余裕などない。お昼からは二階の掃除もある。騎士団とは違い、かなり散らかっている魔法騎士団の寄宿舎は、掃除のし甲斐がありそうだった。


「……俺ね、セイディに興味があるんだ」

「それが、リアム様の手口ですか?」

「手口って……そんな詐欺師みたいに」


 セイディの言葉を聞いても、リアムは笑みを崩さない。セイディはリアムについて、騎士団の面々から情報を得ている。「大の女性好き」「女性を口説き、遊びまわっている」「不真面目」「チャラ男」。そんな情報ばかりが、聞こえてきた。……大方、その噂からリオはリアムを「危険人物」にあげたのだろう。


「女性を口説きまわっているって、私は聞いています」

「……余計なことを言ってくれたよね、騎士団の面々は」


 そう言ったリアムは、セイディに「俺は無害だよ~」というものの、セイディの警戒心は強まるばかりだ。それは、まるで人間を警戒する野良猫のようであり、リアムからすれば逆に興味が引かれる対象だった。


「まぁまぁ、一回ぐらい――俺と遊んでも、いいんじゃない?」


 そして、リアムはセイディの手を取って……そんなことを、告げてきた。その目は、純粋に見えるがどこか仄暗い感情を宿している。そう、セイディには見えていた。

ブックマーク10000超えたみたいですΣ(・□・;)ありがとうございます! これからもお付き合いよろしくお願いいたします! ……ジャックのターンを予定していたのですが、リアムが出しゃばってきました。はい。


あと、シリーズに最新の逆ハーレムを追加しております。関連性はありませんが、気が向いたらよろしくお願いいたします。


次回更新は木曜日を予定しております。

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