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セイディの悩み


 その後、洗濯物を干し終え、昼食を済ませたセイディは私室で鏡とにらめっこをしていた。アシェルほどではないとはいえ、リオも大層な美形である。そんなリオの隣に、自分のような平凡な女が並ぶことなどおこがましい。たとえ、友人だとしても、そこはきちんとしておきたかった。


「まぁ、今回は幸いにもアシェル様に買っていただいたワンピースがあるし……」


 今回は、まだマシな格好になっているはずだ。そう思い、セイディは「よし」と呟いて私室を出て行った。そうすれば、偶然にもあの若い三人の騎士と鉢合わせる。ルディとオーティスはセイディを見て嬉しそうに手を振ってくれるものの、相変わらずクリストファーだけは視線さえ合わせてくれない。それに少し悲しくなりながらも、セイディは三人の方に駆けて行った。


「セイディさん、どこかに行くのですか?」


 三人を代表してか、ルディがそんな風に声をかけてくる。そのため、セイディは「リオさんと、買い出しに」と返答した。そうすれば、次にオーティスが「行ってらっしゃいませ」と言ってくれる。それに対して、セイディは「行ってきますね」と返し笑みを浮かべた。ルディとオーティスのことは、どこか弟のようにも見えてしまう。セイディに、弟はいないのだが。


「クリストファーも、何か言えば?」


 そんな中、先ほどから黙り込んでいるクリストファーに、オーティスが声をかける。しかし、クリストファーはそれを聞いても「僕は、別に」とだけ告げると、「先に訓練場に行っています」と残し、一礼をしてさっさと立ち去ってしまった。それを見てか、オーティスは眉を下げ「……すみません」と謝ってきた。なので、セイディは「いえいえ」と返す。別に、クリストファーは悪いわけではない。確かにあの態度はちょっぴり傷つくかもしれないが、それでも礼儀はきっちりとしている。だから、セイディが文句を言う筋合いはない。


「では、私もそろそろ」

「はい、行ってらっしゃいませ」


 セイディの言葉に、ルディがそう言ってくれるのでセイディは軽く頭を下げ、寄宿舎の外で待ってくれているであろうリオの元に向かう。壁にかけられている時計を見れば、昼食時に待ち合わせとして指定された時間の十分前。今行けば、丁度いいだろう。


 寄宿舎を出た丁度正面の場所。そこで、リオは待ってくれていた。リオはメモの確認をしているらしく、まだセイディには気が付いていないよう。その格好はいつもよりも数段ラフではあるが、とても美形だ。そう思い、セイディは「リオさん」と声をかけて駆け出す。


「あら、セイディ。早かったのね」

「……いえ、普通ですよ」

「女の子って、準備に時間がかかるじゃない。私の妹がそうなのよ」

「私は、準備に時間をかけませんから」


 そんな、デートじゃないんだから。そう思い、セイディが苦笑を浮かべれば、リオは「でも、綺麗ね」なんて褒め言葉をかけてくれる。その言葉を聞いて、セイディは「アシェル様のおかげなのです」と返していた。そう、自分がこんなにもマシな格好が出来ているのは……アシェルのおかげなのだ。セイディはそう再認識する。


「そう。副団長も結構センスがいいからね。じゃあ、行きましょうか」

「はい」


 リオの言葉にセイディはそれだけを返し、ゆっくりと並んで歩きだす。アシェルよりもすらりとしたリオは、どこか背丈が実際よりも高く感じてしまう。そう思いながら、セイディは「まずは、どこに買い出しに向かうのですか?」と問いかけていた。


「今日の買い出しは、食材がメインよ。普段は届けてもらったり、王宮のおこぼれを貰っているんだけれどね」

「安くていいものを、仕入れるのですよね?」

「そういうこと」


 騎士団にも魔法騎士団にも、それぞれ予算がある。それ以上のお金は使えない。セイディを雇うのにもかなりのお金がかかっているはずであり、その分を節約ということなのかもしれない。


(そう言えば、魔法騎士団のお話まだ決めていなかった……)


 そして、ふとそう思う。魔法騎士団の面倒を見るのは、別に構わない。ただ、やはりあちらに受け入れてもらえるかどうかが、気になってしまうのだ。拒絶されたらされたで、それは悲しいのだ。


「セイディ?」


 そんな風に考え込みながら歩いていると、ふとリオに声をかけられる。そのため「いえ、考えることがありまして」とセイディは返した。実際、これはかなり重要問題なのだ。


「魔法騎士団の方の面倒も、見てほしいと頼まれていまして。それを、引き受けるか迷っているのです」


 前を向いたまま、何でもない風にセイディがそう言えば、リオは「悩むわよね」と同意してくれた。


「まぁ、セイディだったら出来るとは思うわよ。でも、貴女と一緒に過ごせる時間が減るのは……なんだか、寂しいわね」

「……そう言うのは、ちょっと」

「そう? これは私の心の底からの本音なのだけれど?」


 どうして、リオはそんなことを軽々というのだろうか。そう思いながら、セイディは目の前に見えてきた王都の街を見据える。結局、魔法騎士団のことはセイディが自分自身で回答を出すしかないのだ。誰かに回答を任せてはいけない。それは、分かっていた。


「ところで、魔法騎士団ってどういうお方が所属していらっしゃるのですか?」


 だからこそ。セイディは、リオにそう問いかけていた。今は少しでも情報が、欲しい。その一心だった。

リオのターンに突入しております……(n*´ω`*n)

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