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フレディの言葉の意味、そして新しい仕事


「はぁ」


 その日の夜。セイディは一人寝台に寝転がりながら、様々なことを考えていた。アシェルとの昼間のお出掛けのこと。フレディの意味深な言葉。セイディは自分自身にそんな言い寄られるほどの魅力があるとは、思っていない。だからだろう、フレディの言葉をイマイチ信じることが出来なかった。


(そもそも、私に魅力があったら婚約の破棄なんて、されていないだろうし)


 セイディは自分が可愛げのない女だと分かっていた。その反面、レイラは可愛らしく愛嬌があり、男性ウケがすこぶるよかった。そのため、レイラにはよく求婚が届いていた。しかし、理想の高いレイラはそれをすべて蹴り飛ばしていた。挙句の果てには義姉の婚約者を奪うのだから、性悪以上の性格だろう。


(リオさんやアシェル様は、私に親切にしてくださるけれど……。あの感情は、どちらかと言えば友人とか、妹の面倒を見ているみたいな感じに近いのよね)


 寝返りを打ちながら、セイディはそんなことを思ってしまう。アシェルの態度はどちらかと言えば好意があるとしても「妹」に対する好意だろう。リオの好意は、間違いなく「友情」が大前提にある。ミリウスは少々馴れ馴れしいが、それも恋愛感情にはつながっていない。あるとすれば……あの若い新米騎士三人、だろうか。


(って、ないない。クリストファー様なんて、私が話しかけようとすると逃げられるんだから)


 クリストファーは、セイディが声をかけようとすれば顔を真っ赤にして逃げ出してしまう。あれは女性慣れしていないからなのか、はたまたセイディが苦手なのか。それは分からないが、少なくとも前者であってほしいと思う。後者だと……少々、傷つく。


「……そもそも、フレディ様はどうしてそんなことをおっしゃったの……?」


 そして、そもそもな話に戻る。何故、フレディはそんなことを言ったのだろうか。さらに言えば、フレディは「僕もその一人になるだろう」的なことを言っていた……気が、する。確かにフレディはセイディに良く言い寄ってくるが、それはあくまでも冗談。……だと、今までセイディは蹴り飛ばしていた。


「あぁ、もうっ! 考えるだけ無駄よね。とりあえず、お水でも飲んで落ち着こう」


 セイディは考えるのを諦め、寝台から起き上がる。その後、水を取りに入口の手前にあるキッチンに向かう。そうすれば、扉の外から誰かの声が聞こえてくる。……はしたないと分かっていても、ついつい盗み聞きをしてしまう。


「だから! セイディには早めに言うべきでしょう? 断られる可能性があるんだから」

「けどさ、言うの早すぎない?」


 扉の外にいるのは、二人のようだ。扉に耳をあて、その声を興味深く聞けば声の主はアシェルとミリウスのよう。アシェルが何かをセイディに「早めに言うべき」だと言っているのを、ミリウスは「早すぎ」だと止めているようで。……何か、あったのだろうか。そう、セイディは思ってしまう。


「頼むのだって、早くしておいた方が良いでしょう?」

「それはそうだけれどさぁ」


 アシェルの言葉に、ミリウスが黙り込む。その言葉に耳を澄ませていれば、しびれを切らしたのか扉が数回ノックされる。時計を見れば午後八時半。……こんな時間に訪ねてくるということは、重要案件なのかもしれない。


「はい」


 話を盗み聞きしていたことがバレないように、セイディはしばらくしてから返事をした。そして、扉を開けばそこには予想通りミリウスとアシェルがいた。二人ともラフな格好なのは、きっとこれから眠る時間だからだろう。


「こんばんは。悪いな、こんな夜に」

「いえ、お仕事のお話でしょうか?」

「……まぁ、仕事の話と言えば仕事の話」


 セイディの言葉に、ミリウスが言いにくそうに視線を逸らす。だからだろう、アシェルは「セイディ、今以上に仕事が増えるのは大変?」と問いかけてきた。その言葉を聞いて、セイディは「給金が増えるのならば、大丈夫です」というちゃっかりとした答えを返す。


「……相変わらず、ちゃっかりとしてるね」

「まぁ、貧乏人ですから」

「……昼間の、根に持っているよね?」


 そんなアシェルの言葉にセイディが無表情で頷けば、アシェルの横にいたミリウスは真剣な面持ちで「魔法騎士団のことなんだけれど」とセイディに話しかけてきた。


「魔法騎士団が、どうかなさいました?」

「……あんまり、セイディの仕事を増やしたくないんだけれど、今度魔法騎士団と合同訓練をすることになったんだ」

「……はぁ」

「その間だけでいいの。……魔法騎士団の面倒も、見てやってくれない?」

「はい?」


 ミリウスの言葉を引き継ぐ形で告げてきたアシェルの言葉は……セイディにとって、まさか過ぎる言葉だった。

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