新しい波乱の幕開け(ミリウス視点)
煌びやかな王宮を歩く。綺麗な金色の髪の毛をなびかせながら、ミリウスが向かうのは――国王の執務室。
扉を三回ノックし、中から返事があったので扉を開く。
すると、中には執務机の前に腰掛ける国王――ハルステン・リアがいた。
「あぁ、ミリウス。待っていたよ」
彼はにこやかな笑みを浮かべ、ミリウスを部屋に招き入れる。
だからこそ、ミリウスは息を吐きながら部屋のソファーに腰掛けた。
「……で、陛下。何の用……ですか?」
一応丁寧な言葉に言いなおし、ミリウスがハルステンを見つめる。そうすれば、彼は苦笑を浮かべていた。
「いや、ミリウスに公務をしてもらおうと思って」
しかし、ハルステンはすぐに表情を作り変え、真剣な声音でそう告げてきた。
「……公務ぅ?」
「あぁ、そうだよ。……もうすぐ、ヴェリテ公国で会議が開かれるのは知っている……よね?」
疑わしい目を向けてくるハルステンに、ミリウスは頷く。
さすがのミリウスでも、それくらいは知っている。だてに長年王族はやっていない。
「それに、ミリウスに参加してもらおうと思って」
「……はぁ?」
確かに会議は王族ならば誰が行ってもいいものである。けれど、大体は国王が行く。わざわざ王位継承権のない王弟が行くような場所ではない。
「そんなもの、陛下が……」
「悪いんだけれど、こっちは仕事が立て込んでいるんだよ。……誰の所為かな」
にっこりと笑ってそう言われると、もう何も言えない。実際、ミリウスが王位継承権を放棄しなければ、ハルステンに仕事のしわ寄せが行くことはなかったとも言えるのだ。
「はいはい。行けばいいんだろ、行けば」
ジト目になりながらハルステンを見つめれば、彼は大きく頷いた。毎度思うが、彼はミリウスの上を行く。アシェルやジャックでもできないことを、易々とするのだ。
「じゃあ、そういうことだから。……会議の少し前にこっちを立ってもらって、ヴェリテの公爵閣下と話す機会も設けたよ」
「……本当に、そういうところは」
抜かりないな。
心の中でそう思いつつ、ミリウスは一応予定を立てていく。これでもミリウスは優秀なのだ。……普段はその頭を使わないだけである。そっちの方が問題になりそうな気も、するが。
「ミリウスには必要ないかもだけれど、護衛を連れていくこと」
「……あぁ」
「アシェル君やジャック君は確定として、あと数人選んでおいてね」
「……ちょっと待て」
「そこ二人はお前のお目付け役だからね」
ニコニコと笑って、ハルステンはそう言う。かと思えば、話は終わりだとばかりに仕事に戻った。
……こういうところ、本当にミリウスに似ている。
(アシェルとジャックを連れて行ったら、どうなるか……)
絶対に秒単位のスケジュールを組まれ、自由な時間などないだろう。……考えるだけで、ぞっとする。
だからといって、ハルステンに逆らうわけにもいかない。ここは、あきらめるしかない。
(はぁ、めんどくさ。……でも、これも必要なことか)
そう思いなおし、ミリウスは立ち上がる。とりあえず、連れて行く騎士たちを選ばなくては。一応魔法騎士の方はジャックに任せよう。そんな風に考え――ミリウスは窓の外を見つめた。
窓の外には暗雲がたちこめている。けれど、ほんの少しだけ――きれいな光が、差し込んでいた。
これにて、たくまし令嬢はへこたれない! の第1部は完結となります(o_ _)o))
また、本日第4巻の発売日が決定しました! 今年の7月20日になります!
詳しいことは活動報告にて書いておりますので、そちらを覗いていただければ、と思います。
第2部は7月開始予定です(それまでは完結設定にしておきます)
ここまでお付き合いいただき、誠にありがとうございました! 今後ともどうぞ『たくまし令嬢はへこたれない!』をよろしくお願いいたします……!
華宮ルキ




