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レイラの居場所(1)

 王宮にある宮廷魔法使いの部屋の扉をノックもなしにミリウスが開けば、中ではフレディが驚いたような表情を浮かべていた。


 ミリウスの隣からひょこっと顔を出し、セイディはフレディの様子を窺う。


「うわぁ、何かと思ったよ。……何か?」


 フレディはミリウスを見つめてそう問いかける。さすがの彼も、ミリウスに無礼な態度はとれないらしい。むしろ、彼は今後はミリウスに尽くすと言っていたので、尚更なのかもしれないが。


「フレディ。……今から、仕事を頼めるか?」


 静かな声でミリウスがフレディにそう問う。すると、彼は少しためらったものの頷いた。


 その後、彼の目の前にある書類の類を片付けていく。


「……お忙しかった、ですか?」


 セイディが眉を下げてフレディにそう聞けば、彼は「まぁね」と言いながらも書類を片付ける手を止めない。


「まぁ、忙しかったけれど全然構わないよ。……殿下の頼みともあれば、僕はほかの仕事を投げ出してもいいから」


 ……それはいささか問題があるのでは?


 心の中でそう思ったものの、フレディのその忠誠心はある意味感心するものだ。そう思いつつ、セイディはフレディの方に近づいていく。


「それで、一体何をすればいいのでしょうか?」


 いつもとは全く違う丁寧すぎる口調に、セイディの頬が失礼にも引きつった。彼が丁寧な口調をしていると、何処となく違和感がある。普段のおちゃらけたような態度の彼ばかり見ているから、余計にそう思うのだろう。


「早急に人を捜してほしい」

「……人捜し、ということですね」


 フレディがそう繰り返せば、ミリウスはこくんと首を縦に振っていた。


 それを見て、フレディは頬を掻く。けれど、すぐに真剣な表情を作り上げる。ここら辺は、さすがとしか言いようがない。


「わかりました。……では、五分だけ待っていてください」


 彼はそう言うと部屋の奥へと消えて行った。大方、準備をするのだろう。


 そう判断し、セイディは隣にいるミリウスの顔を見上げる。……そういえば、どうして彼はマデリーネがあそこにいたことを知っていたのだろうか? ついでにいえば、ジャックや魔法騎士たちを呼んでいたことから考えるに、相当準備をしていたようだ。


「……あの、ミリウス様」

「うん?」

「どうして、お義母様があそこにいらっしゃると、分かったのですか……?」


 少しためらいがちにそう問いかければ、彼は天井を見上げた。……あ、これ、直感か何かで動いたな。


 セイディはそれに気が付く。


「まぁ、なんていうか……そうだなぁ」


 完全に言い訳を探している。そんな不確定なことでよくジャックたちを動かせたものだ。


 心の中でそう思ってしまうが、ジャックはジャックでミリウスに逆らえないのだろう。……哀れだ。ある意味、可哀想である。


(ジャック様、本当に心労で胃に穴が空くのでは……?)


 それを言えばアシェルもそうだろうな。アシェルとジャックは似たような状況に置かれているわけだし、ミリウスに振り回されているのも一緒だし。いろいろと、共通点がある。二人で話すことはあまりないのかもしれないが、話せば話題が合いそうだ。


(なんて、考えていても今は無駄ね)


 しかし、そう思いなおしてフレディを待つ。


 それから数分後。フレディが戻ってきた。彼は書物のようなものを抱えており、真剣な面持ちでセイディたちを見据える。


「……それは、何かに使うのですか?」


 きょとんとしながらセイディがそう問いかければ、フレディはけらけらと笑っていた。


「これは地図だよ。……地図を使わないと、正確な位置が分からないからね」


 なんてことない風にフレディがそう答えて、書物を開く。そこには確かにこのリア王国の立地が書かれており、その中からフレディは王都のページを開いた。


「一応、王都の中央から近いところから捜していくね。……ちょっと時間がかかるけれど、こっちの方が適格だから」

「ほかにも、方法が?」

「街とか、森とか。そういう大雑把なことだったらなくても捜せるんだけれどねぇ。生憎、僕って結構な方向音痴で」


 笑いながらフレディはそう言うが、それは褒められたことじゃない。……まぁ、方向音痴の要素も持っているセイディが責められたことじゃないし、ミリウスなんてもっとそうだろう。


「じゃあ、捜すんだけれど……捜す人物は?」

「レイラ・オフラハティだ。あと、出来たら近場に連れてくることが出来たらありがたいな」


 ……それは、一種の無茶ぶりでは?


 そう思いセイディがそう思うが、フレディはなんてことない風に「はいはーい」と返事をした。


「本当に、殿下は無茶苦茶ですねぇ。……さすがの僕でも、人一人召喚するのはかなり大変なんですけれど」

「出来るんだったらいいだろ。報酬は弾む」

「だったら、いいですけれど」


 けらけらと笑い、フレディがそう言葉を告げた。かと思うと、机の上のものをさっとどけ、その上に魔法陣らしきものを書く。


「――レイラ・オフラハティの居場所を」


 魔法陣の上に地図を置くと、地図が光り出す。しかし、すぐにその光は消えた。どうやら、ここではないらしい。

次回更新は何もなければ火曜日を予定しております(o_ _)o))


どうぞ、引き続きよろしくお願いいたします……!

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