リオとの約束
セイディが正規雇用になり、早二週間の日が経った。正規雇用になってからも、セイディは真面目に働き、騎士たちの信頼を得ている。そんなセイディだが……少しだけ、考えることがあった。それは――。
(明日の休日、本当にどうしよう……)
ということだった。
セイディは週休一日で働いている。それから、午後から休みなのが週に二回ほどある。つまり、結構いい職場なのだ。だが、セイディにとってその「休日」こそが悩みの種だった。……何をすればいいがが、全く分からないのだ。
半日の休日ならば、私室でゴロゴロすることが出来る。しかし、さすがに丸々一日のゴロゴロは……退屈だった。それは、先週経験済みだ。だったら、少し出掛けてみるかと思ったのだが。生憎、セイディは王都についての知識がない。一人で出掛けても、迷子になってしまう気しかしない。
(……休日よりも、普通に働いていたいわ)
そう思っても、絶対に休日が必要なことぐらいセイディにだってわかる。きっと、働きたいと抗議すればアシェル辺りに怒られるだろう。さらに言えば、身体を少しは休ませてリフレッシュしてこいと言われるのは目に見えている。
「セイディ~!」
「……あっ、リオさん」
そんなことを考えながら寄宿舎の掃除をしていたセイディの元に、他でもないリオが駆け寄ってくる。その服装は騎士団の制服であり、そう言えば本日リオは王都のパトロール担当だったとセイディは思い出す。騎士団は二人一組で毎日パトロールに出掛けているのだ。
「パトロール、お疲れ様です」
「あら、労ってくれるのね。ありがとう」
セイディが労いの言葉と同時に軽く頭を下げれば、リオは笑みを浮かべてそう言ってくれる。リオの後ろではクリストファーが待機しており、どうやらリオの本日のパートナーはクリストファーだったようだ。
「ところで、副団長に聞いたんだけれど、セイディは明日休日なんですって?」
「……えぇ、まぁ」
リオは興味津々とばかりにセイディに顔を近づけてそう言う。だからこそ、セイディは静かに後ずさってしまった。リオはとても綺麗な顔立ちをしている。そのため、見つめ続けたら目が死ぬ。そう、セイディは思ってしまうのだ。少なくとも、ここに来るまでこんなにも美しい男性が多数いることなど、セイディは知らなかった。
「予定は、何かあるの?」
だが、リオはセイディが後ずさっていくのが面白いのか、グイグイとセイディに近づいてくる。正直、目が死ぬのでやめてほしい。そう思うものの、素直にその言葉を口に出すことは憚られたので、セイディは「……いえ、暇です」と視線を逸らしながら問いかけに答えることにした。
「正直、明日一日退屈な予定でした」
「そう」
そんなセイディの言葉を聞いて、何故かリオの表情がぱぁっと明るくなる。いったい、何だろうか。そんなに人が暇で嬉しいのか。セイディはそう思って不貞腐れそうになるものの、リオは「じゃあ、一緒にお出掛けをしましょう!」とパンっと手をたたいて言っていた。
「……一緒に、お出掛け、ですか?」
「えぇ、そうよ。実は、私とセイディの休日は同じ曜日なの。先週は貴女が疲れているだろうって思って誘わなかったんだけれど……今週は、良いかしら?」
「良いかしら? って言われましても……」
セイディからすれば、その誘いはとても魅力的だった。なんといっても、王都を案内してもらえるからだ。だが、セイディには一つの問題があった。その所為で、すぐに了承することが出来ない。
(……まともな服が、ないのよね)
その問題が、コレだった。実家にいたころはレイラが飽きたワンピースを適当に直し、着ていた。今だってそのときのワンピースをローテーションで着ているのだ。そんな直したワンピースで街に出向くのはいささか……いや、かなり無謀だろう。一人ならばともかく、隣にリオのような美形が並ぶのだ。自分もかなりの格好をした方が良いのではないだろうか? いいや、そうに決まっている。そう、思ってしまう。
「……その、ちょっと無理、ですかね……」
そう思ったら、セイディには断るという選択肢しかなかった。まずは、一人で出掛けてまともな服を買おう。その後ならば、リオと一緒に出掛けても……いい、かもしれない。まぁ、服屋がどこにあるかなどセイディには見当もつかないのだが。
「あら、なんで?」
「……その、まともな服がありませんので」
リオに問いかけられ、言い訳が思い浮かばなかったのでセイディはそのまま素直に言葉を告げる。きっと、こう言えばリオの性格上「じゃあ、また今度」と言ってくれる……と、セイディは思っていた。まぁ、その予想は大外れになるのだが。
「あらそう。じゃあ……一緒に買い物に行きましょう!」
「……はい?」
セイディの予想に反して、リオは何故か買い物に乗り気になっていた。さらには、「セイディの服、見繕ってあげるわ」と満面の笑みで言ってくる。正直、そう言うのは、ちょっと……。そうセイディは思ったものの、リオは「私、セイディみたいな子の服を見繕うのが好きなの!」という謎理論を展開してきたので、もう何も言えなかった。
そして、セイディはトントン拍子でセイディは明日、リオと出掛けることになってしまった。
なってしまった、のだが――……。
今回から第二章です(n*´ω`*n)ヒーロー一人一人との距離が縮まって……? みたいな感じです。
(……あと、第一章が終わったので感想欄解放してみました!)




