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VSマデリーネ(2)

 マデリーネがアルヴィドの後妻に収まったのは、まだセイディが幼い頃だった。


 それに、レイラが生まれたのならばセイディは用済みだろう。少なくとも、生かしておく意味はない。


 合わせ、成長してからよりも幼子の方が始末しやすい。それは、子供でも分かる常識というものだ。


「幼い私を始末しなかったのは、どういうことなのでしょうか?」


 凛とした声音でマデリーネにそう問いかければ、彼女は微かに目を見張った。


 けれど、すぐにくすっと声を上げて笑う。まるで、セイディの問いかけがおかしいとでも言いたげだ。


「……どうして、笑うのですか」


 静かな怒りを含んでそう言うセイディに、マデリーネがまた笑った。


「理由なんて簡単よ。……貴女には利用する価値があると思った。それだけよ」


 やれやれとばかりに首を横に振り、マデリーネはそう言う。


「セイディがいることを、あたしは帝国に報告しなかったわ。だって、報告すればあんたが殺されちゃうもの」

「……」

「もしもレイラがダメだったら……というときのための、いわばスペアよ。それに、その聖女の力は使える。そう判断したの」


 肩をすくめて、マデリーネはそう言い切った。かと思うと、「ふぅ」と息を吐く。


 彼女のその目が、セイディを射貫く。じぃっと見つめられると、悪寒がしてしまうほどの狂気をまとっている。


 いや、違う。


(これは、魔力なのかもしれないわ)


 マデリーネは帝国の魔法使いだ。帝国は魔法の技術が発展している。それすなわち、彼女の腕も相当ということなのだ。


 確かにアーネストには負けるだろう。でも、このリア王国に送り込まれたということは、間違いない実力者。


「ねぇ、セイディ」


 マデリーネが笑う。にっこりと笑って、細めた目をゆっくりと開く。美しいはずの目は、確かな狂気をまとっている。


「あたしと、交渉しましょう?」

「……交渉、ですか?」


 セイディがマデリーネの言葉を繰り返す。すると、彼女はこくんと首を縦に振った。


「あたしは、自分の娘が皇后になれればそれでいいの。……だから、セイディ。貴女が私の娘になればいいのよ」

「……どういう」

「正直、レイラじゃ無理だと思うのよねぇ。だって、あの子には聖女の力が微々たるものしかないのだもの」


 はぁとため息を吐いて、マデリーネがセイディを見据えてくる。……自分が溺愛していた娘さえ、用済みになれば捨てるというのか。


「あの子に価値を見出したから可愛がっておいたけれど……。期待外れもいいところだわ」

「そんなのっ!」


 あんまりにも、レイラが可哀想じゃないか。


 彼女は確かに歪んでいる。しかし、その原因を、根本を作ったのは間違いなくマデリーネなのだ。


 なのに、用済みになれば捨てるなんて……ありえない。


「セイディが新しいあたしの娘。……そして、皇帝陛下ブラッドリー・バレット・マギニス様の妻になるの」


 何が彼女を皇后という座に執着させるのか。そんなもの、セイディには知る由もない。


 けれど、だけど。……たった一つだけ、分かることがある。


(お義母様の思い通りになんて、なってたまるものですか……!)


 マデリーネの思い通りになど、なってたまるか。


 それだけだ。


「嫌です。……私には私の自由がある。だから、私はお義母様の思い通りにはなりません」


 それに、マデリーネの思い通りになってしまえば、この国と敵対するということになる。


 様々な人がセイディを助けてくれたのに、恩をあだで返すなんて出来るわけがない。……それに、クリストバルの期待を裏切るのも嫌だった。


「……そう、残念だわ」


 肩を落として、マデリーネがセイディを見つめる。かと思うと、彼女は何やら呪文を唱えた。


 すると、手に持っていた扇が杖に変わる。


「だったら、実力でそうするだけなのよ。……いいこと? あたしの提案を無下にしたこと、一生後悔するがいいわ!」


 そう叫ぶと、マデリーネが炎の球をセイディの方に飛ばしてくる。


 その炎の球はセイディの髪の毛に当たり、ちりちりとそこが焦げていく。


(相当やばいっていうことだけは、分かったわ……)


 マデリーネは相当やばい人物だ。それを理解し、セイディはマデリーネの攻撃を避けていく。


 必死に脚を動かし避け続けながらも、打開する策を考える。


 考えて、考えて、考えて――。


(結局、殴りに行くのが一番っていうことね!)


 セイディには光の魔法以外の魔法は使えない。光の魔法で攻撃することも可能だが、大したダメージは与えられない。


 ならば、実力的に。物理的に行くしかない。


 手に持っていた箒を投げ出す。そのまま、一歩を大きく踏み出して――セイディはマデリーネの懐に飛び込もうとする。


「――なっ!」


 彼女の驚愕の表情が、セイディの視界に入った。……やれ、やってやれ。頭の中で誰かが囁いたような気がした。


 思いきり手を振りかぶる。そして、セイディはマデリーネの懐に飛び込んだかと思うと、彼女の頬を思いきりぶった。


「……っつ!」


 マデリーネの身体が地面に倒れこむ。彼女の頬は赤く染まっており、ぶたれた箇所には手形がはっきりとついていた。


「さいっていだわ!」


 大きな声で、思いきり。セイディは倒れこんだマデリーネを見下ろし、そう吐き捨てる。

第一部も終わりに近づきつつあります……(n*´ω`*n)

また、第一部が終わったらしばらくお休みをいただこうと思っております。また詳しいことは後日載せさせていただきますが、多分1~2ヶ月くらいかなぁと思います。長くても3ヶ月以内には戻ってきますので。


あと、他作品のお話になりますが、「あなたのための私は、もう居ない。」の書籍化&コミカライズが決定しました!

こちらも随時情報を公表していきますので、どうぞよろしくお願いいたします……!


どうぞ、引き続きよろしくお願いいたします……!

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