表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

205/263

お見舞いとリオ(1)

 その日、セイディは朝から休暇だった。


 というのも、レイラや継母のことを考えていると、仕事でミスを連発してしまったのだ。普段はミスなどしないセイディがミスを連発するということから、騎士たちには余計な心配ばかりをかけてしまった。


 それゆえに、セイディは久々に有休を使ったのだ。


(……お義母様やレイラのこと、知らないままじゃダメよね)


 かといって、知る術がない。どう足掻いても彼女たちの動向を知ることは出来ない。こちらの行動を予測している可能性があるということは、下手な行動を取ることは出来ないということ。……さて、どうしたものか。


(できれば、お父様の元に行きたい。……お義母様のこととか、教えてくださらないかしら?)


 アルヴィドの元に勝手に行くことは禁止されている。そりゃそうだ。相手はセイディを勘当した張本人。何をするかわかったものじゃない。それに、騎士たちはセイディのことを妹分として可愛がってくれている。過保護になるのもある意味当たり前なのだ。


「うぅ、どうしようかなぁ~」


 一人きりの食堂で大きく伸びをしてそう零すと、不意に食堂の扉が開く。……誰か、水でも飲みに来たのだろうか?


 そう思いそちらに視線を向ければ、そこにはいつもと違うラフな格好のリオがいた。彼はセイディの様子を見て何か思ったのだろう。近づいてくると、目の前の椅子に腰を下ろす。


「どうしたの?」


 彼は少し困ったように笑いながらセイディにそう問いかけてくる。彼もまた、セイディのことを心配してくれているのだ。それが痛いほどに伝わってくるため、自分の気持ちを伝えることをためらってしまう。


 けれど、ここで言わないと何も変わらない。


 そんな風に考えるからこそ、セイディはリオの目をまっすぐに見つめる。


「あの、ですね……」

「えぇ」

「お父様の元に、行きたいなぁって思いまして」

「……え?」


 セイディのいきなりの言葉に、リオが戸惑うのがわかった。いつもはにこやかな笑みを浮かべている彼の表情が、何処となく強張っている。


 それを見つつ、セイディは肩をすくめた。


「いえ、レイラやお義母様のことを知れないかと思いまして……」


 そしてそう続ければ、リオは「あぁ、そうなのね」と言葉をくれる。


「てっきり、何か血迷ったのかと思ったわ」

「……どういう意味、ですか?」

「日々の恨みでも晴らしに行くのかなぁって」


 彼は何でもない風にそう言うが、それはそれでかなりの大問題だ。少なくともニコニコと笑って言う言葉ではない。


「そんなの……」

「冗談よ」


 しかし、これはどうやら彼なりの冗談だったらしい。それにほっと息を吐いていれば、彼は「セイディがそういう子じゃないことくらい、私は知っているわよ」と続けてくる。


「でも、オフラハティ子爵に会うとしても、誰か同行しなくちゃいけないのでしょう?」

「……まぁ、そうですね」

「……そうねぇ」


 セイディの言葉にリオがしばし考える。その後勢いよく立ち上がった。それにセイディが驚いていれば、彼はウィンクを飛ばしてくる。


「私と行きましょう」


 彼は何でもない風にそう言う。


 いや、それは良いのだろうか? アシェルに怒られないだろうか?


「アシェル様に、怒られませんか……?」


 一応そう問いかけておこう。そんな風に思ってセイディがそう問いかければ、彼は「まぁ、怒られる可能性はゼロじゃないわ」とお茶目な表情で言う。……全く大丈夫じゃない。


「けれど、私は自分の意思でセイディの力になりたいのよ。……副団長よりも、セイディの意思を尊重したい」

「……それは」

「とか言っているけれど、正直なところ副団長に怒られるのは勘弁願いたいわね」


 そりゃそうだ。


 彼は怒らせると大層面倒くさい。それがわかっているので、セイディも行動することをためらっていたくらいなのだ。


「だから、早急に許可をもらいに行ってくるわ」

「……私も、一緒に」

「いえいえ、いいのよ。こういうことは私に任せておきなさい。これでも私は騎士団の頭脳だから」


 にっこりと笑ってリオがそう言う。……そういえば、そうだった。リオは騎士団では参謀の立場にもおり、作戦を練るのは彼の仕事だという。普段は雑務に追われているため忘れてしまいそうだが、彼は大層頭がいい。


「交渉術も私の方が上よ。……それに、セイディだってあまり副団長の手を煩わせたくないでしょう?」

「まぁ、そうですね」

「副団長に余計な心配をかけないようにもしておくから。安心して頂戴。……じゃあ、一時間後に寄宿舎の前に、ね」


 彼はそれだけの言葉を残すと颯爽と食堂を出て行く。


 彼の後ろ姿を見送りながら、セイディは本当にありがたいと思う。ここの人たちはセイディの味方をしてくれている。……セイディが、問題を引き寄せているのにも近いというのに。文句ひとつ言わずに、手伝ってくれている。


(やっぱり、恩返ししなくちゃね)


 心の中でその意思を強めながら、セイディはとりあえず着替えに移ることにした。さすがに、ラフすぎるこの格好では街に出るのはいただけない。

いつもお読みくださり誠にありがとうございます(o_ _)o))


第3巻は今月の20日に発売します。また、第4巻の発売も決定しております……!


引き続きどうぞよろしくお願いいたします……!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ