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呼び出し?(2)

「そっか。大丈夫だったらよかったよかった。……じゃ、行くわ」

「ちょっ!」


 ミリウスはそれだけを言うと、颯爽と場を立ち去っていく。……何だろうか。いつもの彼らしくない……というよりは、急いでいるように見えてしまう。


 そう思ってセイディが頭を押さえていると、不意に「セイディ」と名前を呼ばれた。そこにいたのは、今回セイディを呼び出した張本人であるアシェルだった。


「あ、アシェル様……」

「悪いな、団長が。ちょっと込み入った用事があるらしくて……」


 苦笑を浮かべながらアシェルがそう説明をしてくる。どうやら、やはり彼は急いでいたらしい。だからこそ、謝罪も心配も最低限だったのだろう。納得がいく。


「ま、俺の呼び出しで来たんだよな。入れ」

「は、はい」


 アシェルが扉を開けて騎士団の本部に招き入れてくれる。そのためセイディが足を踏み入れれば、騎士団の本部は驚くほどに片付いていた。今まで、ずっと雑多としていたはずなのに。


「……片づけました?」


 怪訝そうにそう問いかければ、アシェルは「まぁ、そうだな」と言いながら頬を掻く。


「今度陛下がこっちに来ることになってな」

「えっ!?」

「そのために片付けたんだよ。……まぁ、すぐに散らかるけれどな」


 彼はそう言いながら応接用のソファーに腰を下ろす。なので、セイディも対面のソファーに腰を下ろした。


 そうすれば、アシェルは「で、用事なんだけれどな……」と言いながら辺りをちらりと見渡す。


 騎士団の本部には今、アシェルとセイディしかいないらしい。リオやクリストファーがいないことが少々気になるが、今はそれを気にしている場合ではないだろう。


「実は、セイディの異母妹のことなんだけれど……」

「……レイラが、どうかしましたか?」


 どうしてアシェルからレイラのことが出てくるのだ。


 そう思っていれば、彼は「いや、いくつかヤーノルド神殿に探りを入れていたんだよ」と言いながら眉間にしわを寄せた。


 ……そんなもの、初耳だ。


「団長からそうするようにと指示を受けてやった。……まぁ、仕事は増えたけれどな」

「あ、ははは……」

「それはいつも通りだから気にすることじゃないんだ。問題は……レイラ・オフラハティの最近の行動についてなんだ」


 アシェルはそう言うと立ち上がり自身の机に移動した。そこから何か資料のようなものを取り出してくると、セイディに手渡してくる。


 そこに書かれているのはレイラの最近の素行のようなものらしかった。


(……贅沢三昧って……うん、いつも通りなんだけれど……)


 セイディがいた頃と全く変わっていないじゃないか。


 そんな風にセイディが思うが、ふと違和感を感じてしまった。


(あれ? でも、お父様もジャレッド様もいらっしゃらないわよね……?)


 オフラハティ子爵家のお金はアルヴィドが管理している。いくら何でもレイラが持ちだすことは出来ない。ついでに言えば、レイラの実母である夫人にも権限がない。ならば、執事が止めるはずだ。


 そして、レイラに貢いでいたジャレッドはいない。そうなれば……一体誰がこのお金を出しているのだろうか?


「えぇっと、レイラが贅沢三昧なのは今までと全く同じなのですが……」

「あぁ」

「このお金、一体どこから出ているのでしょうか……?」


 借金をしたと考えても、借金取りがセイディの元に押しかけてきたことから考えると考えにくい。


 金貸しには独自のネットワークがあり、返せない人間にはお金を貸さないためだ。借金を返済が滞っている以上、オフラハティ子爵家にお金を貸すバカはいないはず。


(まさか、レイラは何か危ないことに手を出しているんじゃあ……!)


 彼女のことだ、騙されて何か手を汚している可能性も少なくはない。そんなことを考えると、頬が引きつるどころの騒ぎではなかった。


「そうなんだよな。そこが、一番の問題なんだよな」


 セイディの言葉に、アシェルがそう返してくる。


 どうやら、彼もセイディと同じ部分を怪訝に思っていたらしい。


「当主も婚約者もいない今、誰がレイラ・オフラハティにお金を出している? 新しい金蔓でも見つけたのならば、問題ない。そこまで口をはさむべきじゃないしな。……ただ」

「……マギニス帝国絡み、ですか?」

「あぁ」


 セイディの神妙な問いかけに、彼は頷いた。


 マギニス帝国に聖女の情報を売っているのだとすれば。それはかなりの大金になるはず。そのお金で贅沢していると考えたくはない。でも、彼女の性格上それはあり得る可能性なのだ。


「というわけだ。……で、ここからが本題なんだが」

「ここまで、前置きだったのですね」

「まぁな。……で、話を戻すが。……俺と一緒にヤーノルド伯爵領に行くぞ、セイディ」

「……はい?」


 ちょっと待て。彼は今なんと言った?


(聞き間違いじゃなかったら、アシェル様と一緒にヤーノルド伯爵領に行くと聞こえたような気が……)


 何故。一体。どうして、そうなる。


 心の中でそう思っていれば、アシェルは「いいな?」と念押ししてきた。……どうやら、逃がすつもりは一切ないらしい。

今回からしばらくアシェルのターンです(n*´ω`*n)

引き続きよろしくお願いいたします……!(第3巻の発売日まで、あとちょうど一ヶ月、ドキドキものですね……! 今回も連続更新を予定しております(o_ _)o)))

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