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魔法騎士団の団長、ジャック・メルヴィル


 その青年は燃えるような真っ赤な短髪をその手でかきあげながら、露骨にため息をつく。ゆっくりと開かれた瞳は澄み切った青色であり、形は鋭い。見るだけで迫力があるものの、雰囲気はどこか気難しそうで。そんな青年を見つめながら、セイディは「……魔法騎士?」と零していた。先ほどこの青年は「魔法騎士」と言っていた。制服も騎士団とデザインが少し似ているが、別物のようなので、魔法騎士なのだろう。


「……何故、殿下はそんなにも自分勝手なんだ。もう少し協調性を身に付け、勝手な行動は慎んでくれ」

「ジャックは気難しいだけだ。あとでドラゴンの肉は分けてやるじゃないか」

「そう言う問題ではない!」


 ジャックと呼ばれた青年は、ミリウスに詰め寄っていく。その鋭い瞳はさらに細められ、ミリウスを迷惑だとばかりに睨みつけていた。それを見たセイディは、ただ頭上にはてなマークを浮かべるだけ。決して、口を挟んだりはしない。


 しかし、ミリウスはセイディの肩に軽く手を乗せたまま、「え~いいじゃん」などと言いながら唇を尖らせていた。その仕草はどこか子供っぽく、大の大人がするような仕草ではない。王弟殿下であるミリウスの年齢は、二十三のはずだ。それぐらい、セイディだって知っている。……というか、今計算した。


「というか、この新入りは誰だ……女!?」


 そして、ジャックがセイディに視線を向け、そんな言葉を紡いだ時……セイディは、思わず「はい、女です」と端的に答えていた。そんな回答をジャックが求めていなかったことぐらい、セイディにだって分かっている。だが、口は無意識のうちにそう答えていた。


「殿下。騎士団も魔法騎士団も女人禁制のはずだ。何故ここに女がいる!」

「……いや、コイツっつーかセイディは騎士じゃなくてメイドだけれど?」

「……はぁ!?」


 ミリウスの言葉に、ジャックは数歩後ずさりセイディから距離を取ると「……メイド?」とただその言葉を復唱していた。きっと、それぐらい混乱しているということなのだろう。そんなジャックの態度が、何故かセイディには面白おかしく映っていた。その理由は分からないのだが、大方からかうと面白そうとかそう言うことだろう。


「い、いや、メイドを雇うなんて……聞いていない!」

「だって教えてねーし。そっちと違って、こっちはいろいろと大変なわけ。だから、こっそりと募集を出していたの」

「……」


 ジャックはミリウスの言葉にただ絶句しているようだった。それを見たセイディは、ふと思う。……もしかしたらだが、ジャックは女性が苦手なのではないだろうか、と。まぁ、確証がないので現状「は」からかったりしないのだが。……少なくとも現状「は」である。


「初めまして、セイディと申します」


 だから、セイディはゆっくりと一礼をしてジャックを見据えた。セイディの表情は、清々しいほどの無である。そんなセイディを見てか、ジャックは「あ、あぁ」と返答をすると制服のポケットに片手を何故か突っ込む。


「俺は……ジャック・メルヴィル。魔法騎士団の団長だ。……これから、って、そうじゃない!」


 ジャックは一人でそんなことを言いながら、「殿下、とりあえずこれからは止めてくださいよ!」とだけ言うと早足でこの場を立ち去っていく。そんな後姿をセイディが眺めていると、隣にいたミリウスが「後で肉届けるわー!」などと叫んでいる。それを聞いたからであろう、ジャックはさっと振り向くと「三分の一ぐらいよこせ!」などと言っていた。……どうやら、交渉は成立したようだ。


(っていうか、あの人団長って言うことは公爵家のご令息なのよね)


 フレディ曰く、魔法騎士団の団長は公爵家の令息だという。それはつまり、ジャックは公爵家の令息だということになる。まぁ、メルヴィル公爵家と言えば王国でも筆頭公爵家の一つなので、名前を聞いた時点でピンときていたのだが。


「本当に素直じゃない奴だな。ま、その分からかっていて面白い奴なんだけれど。セイディも、そう思わない?」

「……まぁ、なんだか正直な人なんだなって思いました」

「オブラートに包んだな」


 けらけらと笑いながら、ミリウスは「さ~て、解体作業を再開するか!」と言ってベテラン騎士たちに指示を出し始める。そんなミリウスを見ていると、セイディは「……ここで、正式に働きたいな」という気持ちを強くしていた。ここに居たら、退屈はしなくて済みそうだ。きっとそう思ったのだろう。


「そういや、ジャックの野郎はあんまり女性と関わってきたことがないらしいからさ。セイディはあんまり近くに寄らない方が良いかも」

「……そうなんですか」


 そして、ミリウスの言葉を聞いてセイディは「やっぱりか」という反応しか出来なかった。あの様子では、どこからどう見ても初心な青年である。……やはり、からかうとさぞかし面白いのだろう。「現状は」からかうつもりなど一切ないのだが。

あと少しで第一章が終わります(あと1~2話ぐらい)。その後、ジャレッドの現状などを1~2話ほど書いた後、第二章に移ります(n*´ω`*n)

本日日刊ジャンル別ランキング4位でした! ついに表紙入り出来た~! となって私が(勝手に)喜んでいます。これからもよろしくお願いいたします!


……あと、ヒーロー全員出そろいました。ミリウス、アシェル、リオ、クリストファー、フレディ、ジャックの六人です。現状増やす予定はありません(いつの間にか増えてる可能性はありますが)

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