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閑話5 猫みたいな1(フレディ編)

 もしも、他者を動物に例えるのならば、どうする?


 そう問われた際、セイディが即答できるのはフレディとクリストファーだけである。クリストファーは間違いなく大型犬。そして、フレディは――猫。それだけは、間違いない。


「……何処から入ったの?」


 その日、セイディはのんびりと魔法騎士団の寄宿舎前の玄関を掃除していた。セイディを雇っているのは騎士団だが、時折魔法騎士団の寄宿舎周りの掃除も請け負っている。というのも、あまりにも汚れすぎていて気になってしまったのだ。そのため、団長であるジャックに直談判し、度々掃除をさせてもらっていた。


 が、それよりも。今、セイディの目の前には銀色の猫がいる。身体の大きさからして子猫ではないだろう。その毛並みはとてもきれいであり、とてもではないが野良だとは思えない。


「……ここにいたら、危ないよ」


 猫に視線を合わせ、セイディは囁く。しかし、猫にはその言葉が通じていないらしく、「にゃぁ」と鳴くだけだ。


(こんなところにいたら、追い出されちゃうからなぁ)


 ここら辺はあまり動物が立ち入らない。そのため、時折迷い込んだ猫や犬は手荒く追い出されてしまう。下手に優しくすれば居付いてしまうからだとアシェルは言っていたが、手荒く追い出すことなどセイディにできるわけがない。


「どうしようかな……」


 立ち上がりボソッとそんな言葉をセイディが零せば、すぐ後ろから「どうしたの?」という声が聞こえてきた。それに驚きセイディが「ぎゃぁっ!」と声を上げ振り向けば、そこには美しい銀色の髪を持つ青年――フレディが、いた。


「相変わらず女の子らしくない悲鳴だね。……まぁ、僕はセイディのそういうところも好きだけれど」


 フレディはニコニコと笑いながら、セイディにそう告げてくる。甘いセリフと、美しい顔。そんなものを見てしまえば、女性ならばすぐに惚れてしまうだろう。が、生憎ここにいるセイディはそんな女性ではない。フレディからそっと距離を取る。


 そうすれば、フレディは何処となく悲しそうに眉を下げながら「どうしたの?」ともう一度問いかけてきた。


「い、いえ……猫ちゃんが、迷い込んできてしまって……」


 幸いにも、フレディは騎士団でも魔法騎士団の人間でもない。だからこそ、正直に話すことが出来た。


 セイディの言葉を聞いて、フレディはセイディの足元に寄っていた猫に視線を向ける。その後「……猫ちゃんかぁ」と言ってしゃがみこんでいた。


「キミ、名前は? 何処から来たの?」

「にゃぁっ!」

「そっかそっか」


 まるで会話をするかのようにフレディは猫に話しかける。それを見ていると、二人の間には会話が通じているのではないかと錯覚してしまいそうになった。


「フレディ様、この猫ちゃんの言っていることわかるのですか?」


 思わずそう問いかければ、フレディはセイディに視線を向け、にっこりと笑う。


「いや、全然」


 しかし、結局フレディにも猫の言葉はわからなかったらしい。いや、この場合わかる方がおかしいのだが。が、どうして彼はわかるような素振りを見せたのだろうか。


「いやぁ、この子があんまりにも僕と同じ色合いだったから、親近感がわいちゃってさぁ」


 けらけらと笑いながら、フレディはそう言う。そのため、セイディは「……確かに、同じ色合いですね」と猫とフレディを交互に見つめ、言う。


「いっそ、この子に名前をつけて飼おうかなぁって」

「……お名前、ですか」

「うん、セイディってつけようと思って」

「……はい?」


 だが、その言葉はどういう意味だ。そう思いセイディが怪訝な視線をフレディに向ければ、彼は「この子、女の子みたいだし」と言いながら猫を抱き上げる。


「それにほら、セイディって猫みたいだからさ」


 猫を抱きかかえ、フレディはそのきれいな毛並みを撫でる。その手つきはとても優しく、まるで本当に猫を慈しんでいるようだった。


「私の、何処が猫なのですか?」


 けれど、セイディからすれば猫扱いはいただけない。そもそも、猫にセイディという名前をつけるなど、許せるわけがない。だって、名前のモデルは絶対に自分だから。


「う~ん、なんていうか、雰囲気?」


 それは、答えになっていない。内心でそう突っ込みながら、セイディは「フレディ様の方が、猫っぽいですよ」と言って猫を撫でてみた。ふわふわとした毛並みは、大切にされてきた証のようにも思える。多分だが、この猫は飼い猫なのだろう。


「ははっ、僕って猫っぽいっけ」

「そうですよ」


 少なくとも、セイディよりは猫っぽい。そんな意味を込めてフレディの顔を見上げれば、彼の目とばっちりと視線が合った。その美しい目に吸い込まれてしまいそうになって、慌てて首を横に振る。


「まぁ、よく言われるし、自覚しているけれどね」


 その後、フレディは面白そうに笑いながら、そんな言葉をぶつけてきた。

書籍の第2巻が本日無事発売したようです……!(n*´ω`*n)

連続更新もこれで終わりになります。次回更新は火曜日を予定しておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。


いつもお読みくださり誠にありがとうございます。引き続きよろしくお願いいたします……!

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