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襲撃の終わり

「……セイディ?」


 フレディが、セイディの名前を戸惑ったように呼ぶ。


 それを聞いて、セイディは「……よかった」と言って身体から力を抜いた。へたり込んでしまいそうになるが、そこはぐっとこらえる。その後、ゆっくりと息を吐いた。


 視線だけで周囲を見渡せば、誰もが驚いたようにセイディのことを凝視している。いつの間に目を覚ましたのか、神官長までもがセイディのことを見ていた。……どうやら、先ほどの光で目を覚ましたらしい。


「……はは、はははっ!」


 それからしばらくして聞こえてきたのは、誰かのそんな笑い声だった。その声の方向を視線で追えば、そこにいたのは――ジョシュアで。


 彼はその銀色の髪をかき上げながら、面白そうに笑う。


 そして、彼の視線はアーネストに注がれていた。


「全部、ぜーんぶめちゃくちゃだな。……アーネストよぉ」

「……貴方、どっちの味方ですか」


 けらけらと面白そうに声をかけながら、ジョシュアは剣をしまい込むとアーネストの方に近づいていく。


 そのままアーネストに、何かを囁いていた。


 その言葉を聞いたためだろうか。アーネストは「クソッ」と声を上げた後、自らの手に持っていた剣をしまい込む。


 アーネストの行動にセイディが驚いていれば、ジョシュアは今度はセイディの方に近づいてくる。思わず身構えたものの、彼のその視線には敵意がこもっていない。ただ、慈愛のような、まるでいつくしむような感情が込められていた。……意味が、分からない。そう、セイディは思う。


「じゃあ、俺らは帰るわ」

「ちょ、ま、待って、ください……!」

「もしかして、引き止められてる系か? けど、残念。時間切れだ」


 トントンと自身の腕時計をたたき、ジョシュアはそういう。その言葉の意味がすぐには分からなかったセイディだが、何処からか人々の話し声が聞こえることに気が付き、ハッとする。……多分、先ほどの光で民たちが何かがあったと感じとってしまったのだろう。


「じゃあな。……また、会えるといいな」


 アーネストの肩をつかみ、ジョシュアはそのままどこかに立ち去っていく。その姿を呆然と見つめながら、セイディは「……私は、会いたくないです」とボソッと言葉をこぼした。


 そんなセイディの本音が聞こえていたのか、はたまたただの偶然だったのか。ジョシュアがゆっくりと振り向き、セイディに手を振った。


 ……彼は、一体どういった人物なのだろうか。自由奔放で、行動が読めない。皇帝陛下に従う素振りを見せるのに、セイディたちに対してはっきりとした敵意はそこまで示さない。……謎の多い、人物だった。


「……セイディ!」


 そんなことを考えていれば、不意に声をかけられる。その声にもう一度ハッとし、セイディは顔を上げる。すると、そこにはアシェルとリオがいて。彼らはセイディのことを見て「大丈夫か?」と声をかけてきた。なので、セイディは「……まぁ、少し、は?」とぎこちなく答えていた。


「……さっきの光、なんだったんだ」


 アシェルが、直球に問いかけてくる。そのため、セイディは「……話せば、長くなるのですが」といったん前置きをする。実際、話すとかなり長い内容となってしまう。簡潔にまとめれば、光の魔力を使った。それだけで済むのだが、それで納得してくれるとは思えない。


「それじゃあ、いいわ。とりあえず、戻ってから詳しい話は聞きましょう」

「……はい」

「あと、宮廷魔法使いのフレディ様? いつまでそこにいらっしゃるのかしら?」


 リオの視線が、セイディからすぐそばにいるフレディに移動する。彼はセイディの膝の上に頭を預けており、優雅にくつろいでいた。……先ほど死にかけた人間の行動とは、到底思えない。


「……いいじゃない。今くらいは」

「……お前、帝国の刺客だっただろ」


 アシェルの刺々しい言葉に、フレディは「そうだね」と言ってにっこりと笑っていた。


「でも、僕は皇帝陛下に逆らうよ。……そうじゃないと、セイディのことを庇わない」

「何があったのかは、あとで詳しく話してもらう。……たださ、セイディの気持ちくらい、汲み取ってやれ」


 ……しかし、アシェルの言葉は本当に余計だな。


 内心でそう思いながら、セイディはそっと視線を逸らした。


 フレディのことを信じたい。そう思う気持ちは確かに真実だったし、庇ってくれた時は自分の考えが間違いではなかったと思った。でも、その気持ちを真正面から言わないでほしい。……何処となく、照れくさいじゃないか。


「……セイディ?」


 ゆっくりと、フレディがセイディの名前を呼ぶ。そのため、セイディは「……何でもないですよ」と言って目を瞑る。


「フレディ様のこと、信じていただけです。……ただ、一つだけ言わせていただいても、よろしいでしょうか?」

「いいよ、何でも言って」

「――そこから、どいていただけませんか?」


 きっと、セイディのこの言葉は、場違い感が半端ない言葉だったのだろう。

6月いっぱいはゆっくりと更新していきます。ご了承くださいませ(具体的には週に一回程度の更新になります)

また、今後の予定といたしましては。


◆7月15日→第2巻先行配信開始&新キャラのデザイン公開

◆7月16日~20日→発売記念の5日連続更新

◆7月20日→第2巻発売


となります。

いつもお読みくださり誠にありがとうございます。引き続きよろしくお願いいたします……!(あ、あと本日新作というか過去作の改稿版『側室なんて絶対に嫌です!』というものを上げておりますので、興味があればそちらもぜひ……!)

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