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二日目、始まる(1)

 そして、『光の収穫祭』の二日目。街は相変わらず騒がしく、セイディたちの事情など民たちは知りもしないのだろう。いや、違う。知られないようにと頑張っているのだ。騎士も、魔法騎士たちも。彼らの不安は尽きないだろうし、セイディだっていろいろと思うことがある。でも、やるしかないのだ。だから、頑張るだけ。


「……セイディ。本当に、大丈夫か?」

「大丈夫です、アシェル様。昨日はいきなりだったので驚いただけですので……」


 朝早く。セイディはアシェルに捕まっていた。とは言っても、説教をされているわけではない。ただ、昼間と夜の襲撃のことを心配されているだけだ。アシェルのその不安は分かるが、ミリウスが側についていてくれる。ならば、大丈夫だ。そう思えるのは、きっと彼が頼もしい存在だから。……もちろん、私生活は除く。


「……だったら、いい。まぁ、何かあったら遠慮なく連絡して来い。俺は、すぐに駆け付けられるように待機しておく」

「お仕事は……?」

「そこら辺は、昨日のうちに調整済みだ。誰もが団長みたいだと思わないでほしい」


 アシェルが笑いながらそう言うので、セイディは少し困ったように笑う。本当に、アシェルはミリウスのことを私生活面では信頼していないらしい。セイディもそうだが、アシェルの場合は事情が違うのだろう。彼らの付き合いは長いというし、セイディには分かりようもない関係性なのだろう。


「一応数名の騎士や魔法騎士のスケジュールを調整したからな。……あと、昨日の奴らの穴埋めも……」


 ぼそぼそとそう言うアシェルに対し、セイディは「昨日の方々は、大丈夫でしたか?」と問いかける。昨日のジョシュアの襲撃により、負傷した騎士たち。ミリウス曰く彼らは軽傷ということだが、やはり気になってしまう。遅延性の毒か何かがあったら……そう、思ってしまうのだ。


「いや、その点は大丈夫だ。もうかなり楽になった。明日からは、仕事に戻らせる」

「……過労では?」

「その場合、俺とリオが一番過労だな」

「……そう、でしたね」


 確かに、アシェルの言葉は正しい。そう思いながらセイディが苦笑を浮かべていれば、部屋の外から王宮の侍女の「そろそろ、移動できますか?」と問いかけが聞こえてきた。そのため、セイディはアシェルに対し「行ってきますね」と声をかけて頷く。


「あぁ、行ってこい。……俺たちも、仕事に精を出す」

「はい」


 そう返事をして、ゆっくりと部屋を出ていこうと歩く。それから部屋の扉を開けようとした時だった。部屋の扉が勝手に開き、セイディの手が空を切る。


「おっ、セイディ。準備できたか?」

「……いきなり、現れないでください」


 そんなことを言っても、ミリウスには効果などない。分かってはいるのだが、一応言いたかった。だからこそそう言えば、ミリウスは「悪い悪い」と言ってセイディの手首を掴んでくる。それに驚けば、彼は「行くぞ」と言ってそのまま歩きだそうとする。……その所為で、セイディは半ば引っ張られるような形になってしまった。


「あ、あのっ!」

「何か文句でもあるのか?」


 セイディが声をかければ、ミリウスは振り返ってセイディにそう問いかける。その表情はとても綺麗な笑みであり、それを見ると口から出ようとした文句が消えていく。これは勘違いされるやら、もうちょっと人のことを考えてください。そんな言葉が、しぼんでいく。


「……い、いえ」


 そもそも、ミリウスに機嫌を損ねられてしまえば一大事だ。それくらいでミリウスが機嫌を損ねるとは思えないが、念には念を。そう思いセイディが口を閉ざせば、ミリウスは「言いたいことは、言えよ」と視線を前に向けながら告げていた。


「俺みたいに自由に生きたほうが、人生って楽しいぞ」

「……アシェル様に聞かれたら、怒られますよ?」

「そうだな。……けどさ、アシェルも自由になったんだぞ、あれでも」


 王宮の廊下を歩きながら、何でもない風に会話を交わす。周囲の使用人たちはミリウスとセイディに道を譲るように端による。セイディはそれに恐縮しながら歩いていたが、ミリウスは堂々と歩いている。まぁ、彼の身分からすればこれが当たり前なのだろう。


「……そうなの、ですか?」

「あぁ、特にセイディが来てからな」


 が、次に発せられた言葉にセイディは疑問を持つ。セイディが来たからと言って、アシェルが変わったとは思えない。もちろん、セイディは自分が来る前のアシェルを知らない。ただ、他の騎士たちはいつも「副団長ってずーっとあんな感じだから」と言っていたのだ。


「俺とアシェルって、同期で付き合い長いしな。だから、他の奴らよりはアイツのことを分かっているつもりだ」

「仲がよろしいのですね」

「まぁな。アイツ、俺に対して当初はいろいろと思っていたみたいだけれど」


 けらけらと笑いながら、ミリウスはそんなことを教えてくれる。確かに、ミリウスとアシェルはタイプが全然違う。生真面目なアシェルと、自由奔放なミリウス。水と油。きっと、普通にいれば関わらなかった二人なのだろう。

何とか間に合ったので更新しました(o*。_。)oペコッ

少し体調を崩したので、突然更新がなくなるかもしれませんが、そこはご了承くださいませ。


いつもお読みくださり誠にありがとうございます! 引き続きよろしくお願いいたします……!

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