第8話 魔物討伐
全然、恋愛の方に辿り着きませんが、いつか辿り着きますので、それまでご容赦下さい。あとセクハラトークというか…女子校でよくあるノリがちょっと出ます。すみません。
森の浅層の魔物は、角うさぎ、吸血こうもり、大ミミズ、毒大ガエルなど。どんなに大きくても1mくらいのサイズなので、チームで対応すれば怖いものでも何でもない。
ただ、何故かほとんど魔物が現れない。いや、現れるのだが、私達に目もくれず街の方へ逃げていく。まぁ、それを見逃すと厄介なのでちゃんと倒すのだが。
オルソさんも少し変だと思っているのか、定期的に魔術具で他のチーム担当の黒騎士とやり取りしているが、他のエリアも似たようなものらしい。
私自身は「攻撃魔術は絶対使うな!」と講師陣に念を押されているので、魔物と遭遇しても、仲間の防御力や攻撃力、俊敏性を上げる魔術を使う程度。この様な魔術はあまり魔力を消費しないのでとても楽。
「ローラ…大きくなったね?」
「リン!?どこ見てるんですの!?!?セクハラですわよ!?」
うん、最近胸のサイズ大きくなったよね。目算Fサイズくらいかな?身長150cmくらいなのに、胸だけ大きいとかほんと…
「リン……!!!心の声のつもりでしょうが、言葉に漏れてましてよ!?武術科の方々に聞こえるでしょう!?…それに何で私の胸のサイズが正確に分かるんですのー!?」
おや?心に秘めていたつもりだったのに。それにしてもローラ、君の声の方が大きいからね?ほら、武術科の2人がローラの事、チラ見してるよ?治療科の子は自分の胸とローラの胸を見比べて肩を落としてるけど、安心して。貴女十分可愛いし、Dカップもあれば充分だから。私なんて…ん?哀れみの目しないで…これから成長するんだから!まだ希望持ってるんだから!断崖絶壁、大貧民とか言わせない!!
「…そこ!注意散漫してるぞ!気をつけろ!!特にドゥ・リン、お前はリーダーだろ!」
「…すみません。」
オルソさんから怒られた。一応、こっそり「半径500m以内」で「探索」の魔術を展開してるけど、何も引っかからないんだもの。この魔術、捜し物するのにとても便利。範囲を広くすればするほど魔力は食うから、これくらいの範囲が丁度いい。子供の頃から知ってたら、弟や妹達を捕まえるのも楽だったのに。…と、思ってたら「探索」に何か引っかかったようだ。それもこれは…
「皆、この先500m先に敵確認。こっちに猛スピードで近付いてくる 。結構魔力大きいから気をつけて。多分ドヴィ山脈サイドから来たやつだわ。」
「「「「「!?!?」」」」」
皆驚いているが、こんな事もたまにあると聞いている。黒騎士の方をチラッと見ると少し警戒しているようだ。他の黒騎士とも連絡を取り合っている。
「来たよ!!!」
そう叫んだ瞬間、体長3mはありそうな大猪が草むらから現れ、そのまま突進してきた…が、こいつも今までの魔物と同じように私達を避けるように逃げていくではないか。そうはいかない。無詠唱で大猪に「遅延」の魔術をかけ、逃走速度を低下させる。それと同時に武術科2人に攻撃力、防御力を重ねがけ、ローラには魔術攻撃力向上の魔術をかける。…うん、これで倒せるだろ。良い仕事したわ。
私が思ったように、武術科タンク役が大猪の攻撃をいなしつつ、武術科攻撃役とローラが攻撃。難なく倒すことが出来た。
「よし、大丈夫だ!良くやったな!お前たち!!」
オルソさんは大猪が死んだのを確認し、そう声を掛けてくれた。そして、空間術式が刻まれたカバンに大猪を片付けた。こいつは良い肉になるし、毛皮や骨は武器や防具の素材になる。空間術式のカバンに入れた物はその物自体の時間を止めるため、この様にカバンに入れて保管しておくのだ。カバン自体は小さいが、ある一定のキャパシティ内で生きていない物あればどんな大きさの物でも入る、大変便利な物だ。
「やったな!」
「やりましたわー!」
ローラは喜びのあまり、武術科攻撃役の生徒と抱き合って喜んでいるのだが、相手の子は顔を真っ赤にしている。おい、お前、ローラの胸の感触堪能してないで私と変われ。私も堪能したいから。
ローラも途中で相手の様子に気付いたのか、急に赤い顔して、
「あ、ご、ごめんなさい…」
と言って、私の後ろへ隠れた。向こうは残念そうだったが……ざまぁみろ。さぁ!私の胸に飛び込んで…
「リン、何か変なこと考えてますわね…?」
…と、そっと医療科の子の方へ隠れた。げせぬ。
そう和んでいたのもつかの間。またもや「探索」に引っかかったものがある。あら?この獲物は他のチームが交戦中の様だけど…?
「お前ら!今、他のチームから応援要請があった…相手は赤竜だ。」
赤竜はドヴィ山脈の山頂を縄張りにしている。今の時期は産卵期だから、餌を求めて降りてきたのだろう。ドヴィ山脈は隣国も魔物狩りを積極的に進めているって聞いたし、餌が少なくなって街側まで降りてきたのだろうが、正直迷惑な話だ。
「お前らでは手に余る。もう夕刻の鐘は鳴る頃だし、ドゥ・リン以外の5名はもうすぐ到着する先生を待って街へ戻れ。」
「待って下さい。何で私は一緒に行くことになってるんですか??」
私も街に帰りたい。お腹減った。
「ユートロ団長がべん…じゃなかった、お前の実力が見たいから連れてこいと言っているんだ…。すまんな。」
「今、『便利』って言いかけませんでした?まぁ、ユートロ団長には恩がありますから、そう言われては仕方ないですね…。ユートロ団長に『美味しい晩御飯期待してる』とお伝え下さい。」
「……今伝えた。『期待しとけ』だそうだ。」
「よし。では先生も来たことですし、行きましょう。」
半ば緊張感にかける会話をしている間に、リム先生がやってきた。
「貴女なら大丈夫だと思いますが、気をつけて下さいね。」
「ご心配ありがとうございます。行ってきます。」
「リン…!何故黒騎士団団長様と知り合いなのか、帰ってきたらじっくり教えて頂きますわよ?だから…無事に帰ってくるのですよ?」
そう言って私の顔を自分の胸に押し当てる様にして抱き締めてくれるローラ。よく分かってるなぁ…ローラは。元気出るわ。
「うん、行ってくるよ。」
そう言い残し、風魔術で空を飛んで「探索」が示す敵の方向へ急いで向かうのだった。
ユートロ団長「ちょっと赤竜出ちゃったから、そっち向かってくれないか?お前の代わりに高等部の先生を生徒の迎えにやってるから、それを待ってから直行してくれ。俺も行くわ。」
黒騎士オルソ「わかりました。では生徒6人をその先生に託して向かいます。」
ユートロ団長「いや、ドゥ・リンだけは一緒に連れてきてくれないか?色々便利そうだから。」
黒騎士オルソ「(便利そうって…?)…分かりました。」
黒騎士オルソが団長の言ってた意味が分かったのはその10分後だった。