表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/45

第7話 高等部合同訓練②

合同訓練の場所は街の北側に広がる森の浅層エリア。ここは定期的に黒騎士が魔物狩りを行っているので、強い魔物は出ないと言われている。森を抜けるとドヴィ山脈があるのだが、そこはちょくちょく小~中型のドラゴンだとか、ウルフの集団とか面倒なのが出るらしいが、訓練された黒騎士団であれば、余裕で討伐出来るレベルだそうで、定期的に黒騎士団が派遣され、魔物狩りを行っている。そうしないと、ドヴィ山脈で増えた魔物が森に降りてきて街を襲う可能性があるからだ。


黒騎士団が組織される前は5年に一度の割合で、ドヴィ山脈で溢れた魔物が森へ降りてきて街を襲っていたらしい。当時はこれを「スタンピード」と呼んでいた。まぁ、黒騎士団が組織されてからは魔物も間引きされスタンピードも無くなった。


最後のスタンピードもかれこれ60年以上も昔の話だが、当時を知るお年寄りの中には、魔物に襲われたことによって片脚がなかったり、顔に大きな傷があったりする者も多い。そういったスタンピードを生き残ったお年寄りが子供達に魔物の恐ろしさを伝える語り部となっている。そのかいもあって、魔物がいる森の奥に行くような子供は滅多にいない。


ちなみに家の手伝いが嫌でよく森に脱走しようとしていた「滅多にいない子供」っていうのが、私の弟や妹達だ。冒険譚が大好きで、「われわれもぼうけんするのだー!」と言って、木の棒を持って、意気揚々と森へ向かって行くので、姉である私は毎回必死に止める羽目になり、当時は本当に大変だった。脱走する度に弟や妹達も脱走スキルが上がっていくのが最悪だった。


実際は森へ出る門や塀には見張りがいるし、森には黒騎士団が見回りをしているのだが、私の中で「大人へ迷惑をかける」=「家に迷惑をかける」だった。家では商売をしていたので、そこへの影響を考え必死だったのだ。…どうやら、私と弟VS妹達の戦いは街の名物になっていたらしいが。


黒騎士団団長のユートロ様がたまたま弟や妹達が壁登りしている所に鉢合わせし、鬼の形相で叱責、半日怖い犯罪者が隣にいる牢屋に閉じ込められるまでその脱走劇は続いた(もちろん両親、兄達、私の許可あり)。弟や妹達は当時の事がいまだにトラウマらしい。詳しく語ってくれないが。


いまだに私はユートロ様を尊敬している。まぁ、その脱走劇が終わったのは私が中等部上がった頃だったが。中等部入学のための受験勉強しながら、脱走する弟や妹達を追いかけるのは本当に大変だったなぁ。


*************************


「私は君たちのチームを担当するオルソだ。よろしく頼む。君達には森の浅層で魔物討伐にあたってもらう。知っているとは思うが、魔物は目が赤いのですぐ分かる。気性が荒いものが多いので、見つかればすぐ襲ってくるだろう。くれぐれも注意するように。私は君達に危険が迫れば手出しをするが、そう出ない限りは手出ししないので自分達で対処するように。タイムリミットは今から夕刻の鐘がなるまでだ。頑張ってくれ。」


私達のチーム担当の黒騎士の言葉に素直に頷く私達。その様子を見た黒騎士の姿は満足そうに頷いた。その黒騎士の姿を私はついつい、まじまじとみてしまう。


黒騎士というネーミングの通り、黒騎士のユニフォームは武器に至るまで黒、紺、深緑など暗い色をしている。階級によってユニフォームの色は少し異なるらしいが、いずれの色も薄暗い森に溶け込みやすい色という点が共通している。本当にかっこいい。ん?チーム担当の黒騎士さんが居心地悪そうだな…まじまじ見てしまい、申し訳ない。


現役黒騎士が各チーム一人ついて指導にあたってくれる。高等部の講師陣は各チームを見回り、必要なチームへサポートに入る…という万全体制である。


「さて、行くよー!」


何故かチーム皆からチームリーダーに推薦された私が声をかけ、魔物狩りがスタートした。どうやら、総合的な成績、スキルについては他学科にも知れ渡ってるらしく、リーダーを決める際は満場一致で「ドゥ・リンで!」…だった。面倒だったけど、仕方が無い…。


一応、武術科の人がリーダーじゃなくて良いのか聞いたら、「そんなルールは無いし、俺たちには訓練場破壊出来る程の技能はないしなぁー。」とか言われた。いや、あれはワザとじゃないんだけど…


黒騎士オルソ「(あのドゥ・リンが目をギラギラさせて俺のこと見てるんだけど、俺、何かしたかな…。高等部の訓練場を破壊したって聞いてるし、本当怖いんだけど。ユートロ団長からも『何かあったらお前の責任なー』とか言われてるし。あ、胃が痛い…。)」


ただ、まじまじと見ただけで大人に胃痛を引き起こすリンであった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ