第4話 高等部入学
高等部にはなんと次席で入学出来た。首席はこの国の第三王子。入学式で挨拶をしていたらしいが、ちょっとウトウトしてたので覚えていない。そのせいで後に本人から「あの時、君は寝てたものねぇ?」と何かある度に言われる事になった。
魔術科のクラスは1クラスのみ30名で構成され、2/3が貴族であった。中には身分が高い事を鼻にかけるクラスメイトもいたが、今年は王族である第三王子が平民擁護派なのでまだ雰囲気は良い方らしい。
指定された教室に入ると、そうそうに煌びやかな人がやって来た。目立ちたくないのに辞めて欲しい。ほら、前の方の貴族女子軍団が話し掛けて欲しそうにこちらを見ているよ…?特にあの金髪縦ロールのお嬢さんとか。…ん?私の方には殺意を向けてきてるな?なんて器用な。
「君がドゥ・リンさんだね?」
「はい。お初にお目に掛かります。ドゥ・リンです。」
「入学式でも挨拶をさせて貰ったがドーベル・レオンハルトだ。同じクラスメイトだ、気軽にレオンとでも呼んでくれ。」
「分かりました、レオン様。私の事はリンとお呼びください。」
「敬語も要らん。それにレオンで良い。」
「…分かりました。レオン。」
正直、王族呼び捨て、タメ口とかありかな?とか思ったけど、王子がそこまで言うならしょうがない。入学試験で次席入学であり、平民代表とも言える私へ先に声をかける事で対外的に平民とも仲良くやっていくつもりだというのをアピールしたかったのだろうとも思うし。
…ただ、ご令嬢方からの殺意はより一層きつくなったようだ。やれやれ。
************
高等部の授業は正直楽しかった。魔導師といえど、基礎的な武術は必要だということで、護身術も学ぶことが出来たし、師匠の元であまり学べなかった火と風元素について学び、高威力の魔術を覚えることが出来たのは大きい。
火属性の魔術は初めは3~4個程度の火の玉を放つことしか出来なかったのが、武器にまとわせたり、10個程度まで放つことが出来るようになった。
また、子供の頃は風属性の魔術を使って弟や妹を追いかけ回したが、それにも磨きがかかり、走るスピードは学年一になった。この特化した風魔術を教えてくれたリム先生は、高等部入学試験の実技試験試験官だったようで、初めての授業が始まる前に私の腕を心配してくれた優しい先生である。また、魔術師でありながら守護騎士団に所属したことがあり、怪我で負傷し引退するまでは街の治安維持に貢献していたらしい。なんと、学生時代の師匠の事もご存知で、「本気で10回追いかけてようやく2~3回捕まえられる生徒でしたよ…」と苦笑しながら言っていた。いったい師匠は何をしたんだ?
アンジュ「私は楽しく追いかけっこしてたつもりだったんだけど…。あの私を捕まえようと必死な姿が可愛くて…♡」
リン「…師匠、年上でかつ先生をからかうのはどうかと思います。」