第18話実技試験初日⑤
昨日投稿したけど、連続で投稿しますm(_ _)m
(ドゥ・リン視点)
ようやく一人目の治療が終了した。そういっても、まだ試験開始から10分も経っていない。制限時間は1時間なので、残り約50分で12人の治療を終えなければならない。
「この人は右腕、この人は左腕か.......間違えないようにしないと。」
『再生』の魔術のポイントは行使する時に欠損した部位についての具体的なイメージが出来るかどうかである。その為、魔術を発動する時に違う部位をイメージしてしまうと、その部位が再生されてしまうこともあるのだ。
例えば右腕が欠損しているのに、左腕が欠損していると勘違いして治療を行った場合、右腕から左腕が生えてくることがある。こうなるともう一度腕を切断してやり直すことになる為、患者にとってかなりの苦痛である。その為、実際の医療現場では複数のスタッフで欠損部位の場所を確認し、他の患者と同じ空間ではなるべく使ってはならないとされている治療所も多い。
そんな一歩間違えば医療ミスと時間のロスが免れない環境の中、リンは治療を流れる様に行っていた。重症度が高い患者、つまり欠損部位が大きい患者から治療を行っている為、対応する患者の重症度が低くなるにつれ、治療の速度は上がっていった。
「残り10分です。」
エミリー先生は時計を確認しながら、リンに声をかけた。
「(あと4人かぁ。魔力もまだゆとりあるし、『再生』の同時発動でもするか。もう集中力もそんな続かなさそうだし、早く終わらせたい...)」
治癒を終えていない残り4人の欠損部位は手指である為、使用する魔力量は少なくて済む。ただ、4人それぞれ欠損している手指の場所が違う為、ただただ面倒臭い。
私はそれぞれの患者の身体欠損部位、傷の場所を確認し、頭に入れた上で、4人それぞれ同時に『再生』の魔術を発動した。
*********
(エミリー先生視点)
「.......!!(ありえないわ!)」
「.......ここで、こうくるか!」
私が唖然としてしまい、声が出ない中、隣では珍しくロゼ先生が目をキラキラさせて、リンを見ている。ロゼ先生は元々魔術全般に才能があったが故に前魔術学科長から魔術学科長を任されたが、元々魔術発動の効率化、魔力消費量削減等を研究している学園専属の研究者であった。勿論、その中には魔術の同時発動に関して述べている研究もあった。
魔術の同時発動はその名の通り、2つ以上の魔術を同時に発動する大変難易度が高い技術である。便利ではあるが、『再生』の様に上級魔術に指定される程難易度が高い魔術だと、消費する魔力はかなりの量になるというデメリットがある為、元々魔力量が多い人か魔力を補ってくれる魔道具が無いと使用も難しい。
軍部のかなり優秀な魔術師ですら、魔道具無しで同時に発動出来る上級魔術は2つが精一杯である。それを魔道具無しで4つ同時発動する事は現在の魔術の常識ではありえないことであった。
「『再生』の4つ同時発動なんて、机上の空論だって散々研究発表の時、じいさん達から叩かれたけど、やれるんじゃねーか!あー、早く試験終わんねぇかな。もうこいつ満点でいいから。」
「まぁまぁ、ロゼ先生?あと少しなんじゃから、最後まで見守ろうじゃないか。」
そう言って、早く試験を終わらせて自身の研究室へ篭もりたいロゼ先生の隣で学園長がさりげなく彼女を引き止めていた。
『再生』の魔術発動後、残り4人の患者を見ていると、きちんと欠損部位は修復されていた。しかしリンは手を止めず、患者それぞれの傷口についても適切に処置していった。そして.......
「終わりました。」
そうリンが私達に告げた。
残り16秒。始めは一人だけ完治すれば合格だった実技試験は、患者全員完治した状態で終了したのだった。
【おまけ】
リム「おはよう.......って、アンジュ、何やってるの...!?」
アンジュ「あ!おはようございます!何って、朝食作ってるんですよ?低級魔術を使うと時間短縮出来るから便利でつい使っちゃいますの。」
リム「便利とか以前に.......いくら低級魔術とはいえ、10以上も魔術の同時発動は前代未聞だと思う。」
アンジュ「そうですの?上級魔術でもギリギリ5つくらいいけますわよ?」
リム「お前は規格外だな....。」