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第11話 魔物討伐 (ユートロ団長視線)

オルソとリンが怪我人を救出、治療し本部へ向かうのを視界の隅に捉えた俺は少しほっとしていた。目の前にはかなり怒り狂った赤竜(レッドドラゴン)はいたが、怒り狂ってるからこそ攻撃を読むことは容易い。




「よし、怪我人も救助されたし、ナンパの被害に合う子も居なくなったし、これでやりやすくなるな!」



「俺、怪我人だよ…伯父さん?カコ姉さん、思いっきりゲンコツ落としやがって…。」



「お前がこんな緊急事態にナンパしてるからだ!!」




俺は俺の娘カコが落としたゲンコツをまだ痛がっているユーリを叱り飛ばす。



それにしても、どうしてこんな性格に育ってしまったのか…伯父として頭を抱えてしまう。



ユーリは俺の妹の子で、俺の甥にあたる。ユートロ家に大昔いた犬系獣人の血が濃く出てしまった先祖返りだ。



ユートロ家は代々王家に仕える家であり、今では侯爵家の爵位を授けられているが、何世代か前、当時争っていた人間族と獣人族との和平の為にユートロ家に獣人族の王子の一人が輿入れしてきた…と言われている。



一方、ユーリの母であり、私の妹であるリリが嫁いだのはドブロ公爵家。ちなみに恋愛結婚だ。ドブロ公爵家はユートロ家と前当主同士仲が良く、家族ぐるみで交流があった。現ドブロ公爵家当主のダンは俺の親友でもある。あいつはリリが10歳の頃に直接本人に告白。それを面白がったお互いの当主がダンとリリを婚約させた。そしてリリが結婚出来る様になった16歳の誕生日にダンはリリにプロポーズ、その日のうちに入籍した。そして1年後産まれたのがユーリである。



しかし、ユーリが誕生した際、1つの問題が浮上した。産まれたばかりのユーリは犬耳という犬系獣人族の特徴を有していたのだ。獣人族の血が濃いのが明らかだった。


それを知ったドブロ公爵家を崇拝している一部の貴族が「汚らわしい獣の血」と忌み嫌った。獣人族は今でこそ、人間族と対等な関係となっているが、昔は奴隷として扱われたりすることも多かったため、古参の貴族は獣人族の血が入っているというだけで忌み嫌う人が多い。



一方、ドブロ公爵家自体古参貴族でありながら、獣人族には好意的である。しかし、周りの取り巻き貴族はそうは思わないらしく、獣人族の血が流れているリリやユーリの事を忌み嫌っており、リリとユーリに対して暗殺者が差し向けられたことが度々あった。



しかしある日の襲撃でリリはユーリを庇い、杖無しには歩けない程の重症を負い、また、襲撃のトラウマで外に出れなくなってしまった。



それ以降、ドブロ公爵家当主であるダンはリリとユーリが殺されてしまうことを恐れ、2人を暫く保護して欲しいとリリの兄である俺にお願いしてきたのだ。



「暗殺者を差し向けた貴族達を潰すからそれまで頼む。」



…と、襲撃してきた貴族達、そして大切な自分の家族を守れなかった自分に対する怒りや悔しさで身体を震わすあいつの姿は今でも目に焼き付いている。




ユーリが我が家にやって来てからは、あいつの代わりに俺が父親代わりとなり、妹と共にユーリを育てたのだが、何故か女好きと周りから言われるような男に育ってしまった。しかし、武術だけは…




「伯父さーーん!アイツやっちゃっていいの?俺、早く終わらせないとデートの約束があるんだよね!!」



「……さっさとやれ。」



「はーい」



背中に担いでいた大剣を抜き、はやる気持を抑えきれない様子のユーリに対して俺はそう声をかける。



それに対してユーリは気の抜けた返事を返したかと思いきや、あっという間に赤竜(レッドドラゴン)の背後に回り、その背中に飛び乗った。赤竜(レッドドラゴン)はそれに気付き暴れるが、ユーリは全く体勢を崩す様子も無く、そのまま背中をつたい頭上まで到達する。そして、


「よーいしょ!」



そう気の抜けた掛け声を掛けたかと思えば、頭上から真上に飛び上がり、その落下スピードを利用して頭から足元まで大剣で赤竜(レッドドラゴン)()()()()にした。もちろん赤竜(レッドドラゴン)は即死である。




「もう終わり?つまんねーの。」



そう言いながら、大剣についた赤竜(レッドドラゴン)の血液と脂をふるい落とし、背中にある鞘に収める。あらかじめ大剣に『防汚』の付与でもしておいたのか、大剣を一振するだけで全く大剣に血液や脂は残らない。



「流石だなぁ。俺らにあんな真似は到底出来ねぇよ…」



「あんなの命いくらあっても足りねぇよ…」



ユーリが赤竜(レッドドラゴン)を倒す姿を見守っていた黒騎士団員達は口々にそう言った。




武術に関して(ユーリ)は天才だ。




それが黒騎士団員全員の認識である。




普通であればユーリが使っている大剣で赤竜(レッドドラゴン)(まだ子供だが)を真っ二つにするのは不可能である。それを可能にしてるのは先祖返りした獣人族の血筋であり、無意識下で展開されている身体強化の魔術であった。



だが、黒騎士団の中にユーリの強さを妬む者は一人もいない。彼らは小さい頃からユーリが毎日の様に暗殺者に狙われていることや、自分自身だけでなく母親を守るため、血のにじむような努力をしていたことを知っていたから。寧ろその努力を見習わねばならないと感じていた。



……女好きは兎も角。





「…やべ!デートの時間に遅れる!!伯父さん!もうやっつけたし、俺行っていいだろ?」




そう言うと、ユーリは俺の返事を待たずに街の方へ一目散に駆け出していった。俺、一応身内とはいえ上司だぞ?舐められたもんだ。……家帰ってきたら絶対あいつしめる。



そう心に誓いつつ、俺は自分の部下に後始末の指示を出すのだった。


カコ姉「ここまで来たらもう大丈夫だと思うけど、万が一、またアイツから言い寄られたら、手紙でも何でもいいから私の所に連絡してちょうだい?私の所が相談窓口だから。はい、これ名刺ね。」


ナンパされた女学生「はい....ご丁寧にありがとうございます。(相談窓口って、そんなに相談者多いのかな..?)」

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