表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/17

これからどうする?

 満天の星を見ながらコーヒーを飲む。男なら誰でも一度は憧れるシチュエーションだ。

 でも、俺の心は浮かない。

(さて、これからどうすっかな)

 どうすれば陽向を守れるか。漫画なら修行をすれば強くなれるけど、現実はそんなに甘くない。修行れんしゅうして強くなれるなら、みんなプロになれる。

 今の俺に必要なのは金とタマポイントだ。

 金があれば護衛を雇えるし、拠点も移せる。

 ここの貴族は信用できない。美人やイケメンを宛がい、媚薬を盛ったのは自陣に取り込む為だと思う。

(いっぱい持ってきたけど、コーヒーも控えなきゃな)

 椅子から立ち上がろうとした瞬間、俺を呼ぶ声が聞こえた。


「フクトミさん、どこにいますか?」

 呼んでいるのはリオンさんだった。こんな夜中になんだろう。


「今、行きます」

 また遠回りしなきゃいけないか。リオンさんは良い人だと思うが、セキュリア側だ。信用してはいけない。


「いえ、そのまま聞いて下さい。明日、転移者にゴブリン退治が命じられます。フクトミさん達は、それに立候補して下さい……それと私はフクトミさん達の味方ですので。ここにこれから必要になりそうな物を置いておきますよ」

 そう言い終えるとリオンさんは遠ざかっていった。

 足音がしなくなったのを見計らい、セーフティゾーンから出る。


「これは剣と金!」

 そこに置いてあったのはショートソードと革袋。革袋の中には銀貨と銅貨が入っていた。

 卑しいと、思いつつ速攻鑑定。 

 鑑定結果 王国硬貨。セキュリアの硬貨の単位はバート。総額三十万バート。万銀貨、千銀貨、百銅貨、十銅貨に分かれている。

 剣は俺でも扱えそうな重さだ。リオンさんに足を向けて寝られません。

 少しだけ状況が好転した。今日もこのまま寝てしまおう。

 陽向達を起こさない様に、そっと車のドアを開ける。

 きっと陽向や風野さんは不安で眠れていないと思う……そう思っていた時期が俺にもありました。

 壁の向こうから聞こえてくるのは健やかな寝息……陽向、お前不安じゃないのか?

 風野さん、俺も男なんですよ?狼に変身するかもしれないんですよ?

 信用されているのか。それとも男と意識されていないのか。

 貴女、ドストライクな美少女なんだぞ。でも、俺が女子高生かざのさんを女として見ていたらセクハラなんだよな。

 俺は聖人君子じゃないし、フェミニストでもない。車内設置で出来た物理的な壁、それと陽向という精神的かつ社会的な壁に頼りまくろう。

 それとせっかく異世界に来たんだ。スマホの電源をオフにしてぐっすりと寝よう。


 ◇

 習性なんだろうか。今日は仕事に行かなくても良いのに……目が覚めたので、外を見てみると、まだ薄暗い。

 ログインボーナスを貰う為に、スマホの電源を入れる。うん、今日もアラームより早起きだ。


 ログインボーナス ブロキュア領領都マップ

 ミッション達成車内泊をせよ 500珠

 新しいミッション ゴブリンを倒せ


 ログインボーナスって珠だけじゃないのか?とりあえず領都のマップをタップしてみると、色んな情報が表示された。

(今は朝市が開かれているんだ……ちょっと行って来るか)

 保存食は大量に持って来ているけど、こっちの食材にも慣れておいた方が良いと思う。

 何より、物価を知っておきたい。もらった30万バートで、どれ位食べていけるか。

 城を突っ切るのはまずいので、城壁に沿って移動。朝霧が出ているからだろうか、人に会わないまま市場に到着。

 市場は大勢の人が訪れ、活気に溢れていた。そして改めてここが異世界なんだと実感する。

 主にいるのは人間だけど、エルフにドワーフ獣人もいるのだ。でも誰も彼等がいる事に疑問を抱かずに、自然に受け入れている。

 売っている食材は日本で見た物も多くて安心した。中には食べて良いのか不安になる物もあったけど。

 (卵は一個200バートか)

 1バート1円だと仮定したら、一個200円。養鶏場なんてないだろうから、地鶏の卵みたいな物だから妥当な値段だと思う。

 そのままうろつき、色んな物を買い揃えていく。ある程度揃ったとこで、物陰に移動して収納魔法を使ってみる。エコバックの底が何かに触れたので、そっと手を離す。

 ナビアプリに表示されていた目当ての店へと移動。


「すいません。ハムサンドと野菜サンドを3個ずつもらえますか?」

 俺が探していたのは。、持ち帰り可能な飲食店……お持ち帰り用の籐籠付きで1500バート。これは高いんだろうか?安いんだろうか?このうち籠代はいくらなんだろ。

 後、ワニ肉サンドとかコカトリスサンドも売っているんだけど、食べて大丈夫なんだろうか?


 ◇

 なんでだ?ちゃんとメモを置いてきたのに、陽向が不機嫌になっている。


「兄貴っ!一人で買い物なんて何考えているの!セキュリアにいる日本人は私達だけなんだよ。市場なんていったら絶対にパニックになるでしょ!」

 確かにセキュリアで会った人に黒髪はいなかった。


「大丈夫だって。無事に買い物出来たし、誰にも注目されなかったぞ……さて、収納魔法でしまった物はどんな感じになっているんだ?」

 バックドアを開けて確認する。野菜を詰め込んだエコバッグは、ちゃんと荷物の上に乗っかっていた。採集とかで水気のある物を収納する事もあるだろうから、対策を立てておこう。


「僕……僕達、凄い心配したんだよ!もう勝手な行動しないでね……それにしても凄い荷物。日本から沢山持ってきたんだね。でも、手鏡なんて何に使うの?」

 朝飯の準備をしようと、コンロを引っ張り出していたら陽向が質問をしてきた。


「身だしなみチェックは社会人のマナーだぞ。俺みたいなブサメンは清潔感の維持が大切なんだよ」

 モテる為じゃない。周囲に不快感を与えない為だ。


「ブサメンって……本当、ネガティブなんだから。兄貴はブサメンなんかじゃないよ。愛もそう思うでしょ?」

 それ本人おれが目の前にいると、yesしか選択肢がない質問だから。


「癒し系って言うんでしょうか?優しそうで私は好印象でしたよ」

 顔の評価はせず、あくまで自分一人の意見と強調しておく。相手を勘違いさせないベストな解答です。


「ありがとうございます。がっかりさせない様頑張りますよ」

 ここでテンションを上げてしまったら〝こいつ、勘違いしちゃったよ〟となるので、適当にお茶を濁して置く……勘違いからのぬか喜びで、何度赤っ恥をかいた事か。

 テーブルを出すついでに荷物をチェック。ヘッドライト付きヘルメットも携帯拡声器も、ちゃんと作動している……ちと、針金持って来過ぎたか。あると便利だからって一束持ってきたんだよな。


「でも、なんで兄貴騒がれなかったんだろうね。兄貴、自分を鑑定してみてよ」

 確かにスーツを着た異世界人なんて、目立つし騒動になっても不思議ではない。でも、普通に溶け込めていたし。


 鑑定結果 福富幸大 性別。・男 種族・猿人 年齢32歳 職業・サラリーマン(平) 

 所持スキル 鑑定・イヴァールの基礎知識・異世界言語通訳・シールドボール・調味料召喚・鋼鉄の胃袋・消臭清潔保持魔法 ・車召喚(空間収納魔法・セーフティーゾーン)モブ化・九死に一生

 ……なんか知らないスキルがあるんですが。

 モブ化ってなんだよ!それに九死に一生ななんて、不吉過ぎるだろ!

 とりあえず鑑定。

 鑑定結果 モブ化 (パッシブスキル)集団に溶け込めるスキル。突飛な行動をすると解除されるし、身の丈に合わないグループには適用されない。

 ……だから市場で騒がれなかったのか。


 鑑定結果 九死に一生 (パッシブスキル)命が危険に晒されると、集中力と敏捷性が増す。

 ……攻撃力や防御力は増えないんですね。いや、敏捷性増しても、俺の反射神経じゃ意味ないぞ。

 二つともパッシブスキルだから、コマンドに表示されなかったのか。


 ◇

 朝飯を食べ終え、コーヒーを飲みながらまったりする。今日は、城で転移者のお披露目パーティーがあるそうだ。その為、陽向と風野さんが車内でドレスに着替えている。


「兄貴、お待たせ。やっぱり、ドレスって動きにくいね」

 ドレスを着た陽向が車から降りて来た。ドレスは向日葵の様な黄色で、陽向に良く似合っている。


「……陽向、スカートの下にジャージかなにかはいておけ」

 逃げにくくする為にドレスを着せた可能性もある。

 ウォール伯爵は、昨日の失態をどう取り繕うつもりなんだろうか?それによってこれからの身の振り方が決まってくる。

 でも、なんであんな女性に反感を買われる様な事をしたんだろうか?


「大丈夫ですよ。陽向ちゃんも私もスカートの下にショートパンツを履いていますから」

 風野さんが着ているのは純白のドレス。風野さんが、ドレスのスカートをたくし上げてショートパンツを見せようとした。

 当然、太ももが露わになる訳で……俺の視線も釘付けになってしまうのです。


「愛、なにしてんの!いくら対象外っていって兄貴も男なんだよ!」

 陽向が慌ててストップをかける。


「これ体育で履くショートパンツですよ。陽向ちゃん、体育の授業の時は止めた事ないじゃない……お兄さん、お顔真っ赤ですよ。可愛いー」

 あれ、俺高校生にからかわれている?まあ、警戒されるよりましか。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ