表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/17

こんな筈じゃなかった?

 陽向を守る為なら、何でもする。でも、今の俺は無力だ。だから利害関係が一致しているタマの存在はかなりありがたい。


「ところで活躍って、何をすれば良いんだ?まさか、魔王を倒せって言うじゃないよな」

 目標が漠然とし過ぎていて、分かり辛い。


「魔王?笑かすの。今のお前じゃ、ゴブリンも倒せへんで」

 メタボ猫に、鼻で笑われてしまった。まじ?この世界のゴブリンって、そんなに強いの?……いや、俺が弱いのか。


「やっぱりな。予定通り、街中で動くしかないか」

 日本から持って来た物を売り捌けば、商売の元手になると思う。


「勘違いしてへんか?俺が言いたいのは、お前等日本人が生き物を殺せるかって事や。ゴブリンは二足歩行生き物や。斬れば血も出るし、内臓も飛び出るんやで」

 確かに日本人はグロ耐性が少ない。てか、こいつ日本人の事詳し過ぎないか?


「とりあえず俺でも、ゴブリンは倒せるんだな。ところでスキルって、どうやって使うんだ?」

 俺の選んだスキルは、どれ位通ったんだろう?


「これを聞けば、俺と契約して良かったと思うで。頭でコマンドウインドオープンって念じるんや。これは俺独自のサービスやから内緒にしておくんやで」

 声に出す系じゃなくて良かった。とりあえず頭の中でコマンドウインドオープンと念じてみる。

 名前・福富幸大 性別・男 ジョブ・サラリーマン(平) スキル 持ち物

 出た来たのはファミコン世代のドット絵風のウインド。確かにイヴァールに出向中なんだけど、もっとファンタジーっぽい職業が良かったです。


「現在のジョブがサラリーマン(平)で、上位職が主任のみ……出世全否定かよ!」

 他に選べるジョブが八百屋手伝い・配送業・パン屋手伝い……どう見てもセキュリアで就ける仕事じゃないか。


「現実はそんなもんや。スキルはコマンド選択形式やで。お前が活躍すればタマポイントをやる。タマポイントを貯めれば、新しいスキルを覚えらるし、今持ってとるスキルをパワーアップする事が出来るんや」

 なんとかタマポイントを貯めて、戦闘に使えるスキルを覚えたい。回復スキルとかないかな。


「それじゃナビを頼むぜ」

 ゲームで言えばまだチュートリアルだ。タマのナビに従って動いた方が得策である。


「ナビ?俺は仕事が忙しいから、二十四時間べったりなんて無理やぞ……そや、お前スマホ持っとるか?」

 写メや録音の為、持ってきておいたけど。鞄からスマホを取り出し、タマに手渡す。


「まずは、こいつを一度転移して……新しく入ったタマポイントアプリで、俺からのメッセージが受け取れるで。指令やログインボーナスもあるから、ちゃんとチェックしてな……ほんじゃ、用が出来たら、また来るで」

 タマはそういと、姿を消した……がちで、ナビしてくれないのか。

 ちなみにタマポイントの単位は珠らしい。頭文字じゃなくて良かった。

 スキルを選択してみると、日本転移以外は使用可能だった。そして日本転移には10万珠が必要らしい

 さっそく空間魔法の収納魔法を選択。

 そして現れたのは、ここでは使用出来ませんというメッセージ……なにがどうなっているんだ?


 ◇

 礼拝所を出て周囲を見渡す。どうやら、俺が最後らしい。

(人も鑑定出来るのか?強なら問題ないだろ)

 鑑定結果

 夜鬼強 性別・男 職業・元ヤン……元ヤンって職業なのか?

 それ以上の情報は見れない様だ。ちなみに陽向がマジックシューターで、風野さんが薙刀士だった。

 そして結城君が光の戦士……ジョブの格差が酷くないか?


「皆様、無事契約出来たみたいですね。これからメイドと執事が皆様の私室に御案内します。本日はゆっくりと休んで下さい」 

 今度こそ来た。観察してみると、男にはメイドが付き、女性には執事がつくらしい。しかも、好みの人を選べるらしく、執事とメイドさん八人ずついる。

 俺専属のリアルメイドなんてテンション上がって当たり前だ。一番人気はやっぱり結城君、複数のメイドさんが光君をロックオンしていた。

 強達は自分から好みのメイドさんの所に近付いていく。しかし、兄貴はひなたの視線が気になり動けません。現時点でメイドさん残り四名。


「ちょっと女に執事を宛がえば喜ぶだろうなんて考えが浅はか過ぎるわ。セクハラよ。女性と変えて!」

 委員長っぽい少女の怒号が室内に響く。拒否されたイケメン執事君はすごすごと退席。これにてメイド一名減。

 そして委員長少女の発言で、部屋の空気が一変した。


「僕も女性の方が良いな……洗濯とか恥ずかしいし」

 確かに兄貴としても、陽向の下着を野郎にいじらせたくない。メイドさん残り二人。


「私も同性の方が良いです」

 風野さんとしては彼氏である結城君の手前、イケメン執事は選びくにくいのかも知れない。ライバルになりそうなメイドさんを選んだ可能性もある。メイドさん残り一人。


わたくしは自分の事を、自分でします。それに男性に身の回りの世話をされたなんて、お母様のお耳に入ったら叱られてしまいますわ」

 大和撫子風の少女もきっぱりと拒絶。そしてメイドさんはゼロに。

 そして俺に期待の視線を送ってくる八人の執事さん達。爽やかイケメンにシショタ美少年、渋いベテラン執事さんまで選り取り見取りだ……嬉しくねーよ。


「あー、年も近そうなので貴方にお願いします」

 俺が選んだのは、三十代半ば位の執事。物腰が柔らかそうな人だ。そしてイケメン……この場にいる人は俺以外みんな容姿が整っているから、もの凄く居づらい。


「リオン・デアリーと申します。どうぞ、こちらへ」

 リオンさんに案内されて城内を進む。俺達が泊まるのは貴賓室らしく、廊下も豪華だ。


「た……デアリーさん大変です。ブロキュア子爵が“予定を変えて泊まる”とおっしゃられて……」

 爽やかイケメンがリオンさんに耳打ちするも内容がだだ漏れだ。どうやら子爵様が予定を変えて城に泊まる駄々をこねているらしい。

 しかし、貴賓室どころか客室は全て満杯。なんでも転移者お披露目パーティーの為、他領の領主や有力者を招待しているそうだ。

 焦るリオンさん、その額からは冷や汗が滲んでいる。

 ふと、ポケットでスマホが振動している事に気付く。

(指令 車中泊せよ……まじかよ)

 異世界まで来て車中泊って……しかし、これは恩を売るチャンスだ。


「あれでしたら私は野営しますよ。ナビフェアリーからも、お城の皆様に協力しなさいとの指示がございましたので。野営の道具を持って来ているので大丈夫ですよ。お城の片隅でも貸して下さい」

 かなり強引な解釈だけど、嘘じゃない。


「こちらから召喚およびしておいて申し訳ございません」

 リオンさんが頭を下げて来る。妹が心配でノコノコ付いて来たのは、俺だ。責任は自分にある。


「俺も勤め人だから、お気持は分かりますよ。あれだったらひなたの事を頼みます」

 お城の庭とかなら安全だし、豪華で無駄に広い寝室より車の方が寝やすいと思う。俺は小市民なのだ。


「本当に申し訳ございません。それでは付いて来てもらえますか?」

 リオンさんはそう言うと歩き出した。城を出て、塀を抜けてひたすら歩く。

(随分と警備が厳重だな……良かった。イケメン以外もいるじゃないか)

 兵士の中に俺みたいなモブ顔を発見して一安心。向こうに見える塀はまだ真新しい。

 そして更に歩き続け、もう一つ塀を抜けた。

 辿り着いたのは、人気のない草むら。


「ここなら野営しても問題ないと思いますよ。では、後程お迎えにきます。それと間違っても外にはてはいけませんよ」

 何度も頭を下げるリオンさんを見送る。


 リオンさんがいなくなったのを確信して、スキル車召喚を選択。

 光と共に出現する愛車。今日乗ったのに、こんなにも安心するとは。

(一応セーフティゾーンを掛けておくか)

 セーフティゾーンを選択すると、既に発動していますと表示された。

 嫌な予感がしたので、愛車を鑑定。

 鑑定結果 セーフティゾーン・空間魔法収納スペース(タマポイントで拡張可)

 セーフティゾーン・設置箇所から移動不可。後部収納スペースは空間魔法と繋がっており、どこにいても収納が出来る。ただし取り出すのは、車を召喚した時のみ。車内、空間スペースともにタマポイントで拡張可能。

 セーフティゾーンなので、運転する事は出来ない(クーラー等は使用可能)

 なんで三つのスキルが一まとめになっているんだ?しかも車なのに運転出来ないって、まじ?


面白いと主って頂けたら、ブクマ・評価・感想をお願いいたします( ・ω・)作者のモチベーションになります

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ