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予想通り?予想外?

 寝れない。同じ部屋、しかも同じ藁の中に美少女かざのさんがいると思うと目が冴えてしまうのだ……俺は中学生か。

(ここは意識を逸らさないと……ゴブリンについて調べてみるか)

ゴブリン イヴァールに多く棲む魔物。繁殖力が強く群れで行動する。群れの数は30から50。戦闘力は低いが、死ぬ時に独自のホルモンをだし仲間に危険を知らせる。このフェロモンが染みついた者は警戒の対象であると、同時に攻撃対象ともなる。

 その為、弱ったところをゴブリンに襲われ命を落とす冒険者も少なくない。

 ……スズメ蜂かよ。だから農夫もおいそれと手を出せなかったのか。

 あれが役に立つか。そうなると大事なのは体力だ。ここは無理にでも寝ておこう。


 いつの間にか眠ってしまったらしく、目覚めると馬車が停まっていた。どうやらここがズレーハ村らしい。

 絵に描いたような農村だ。でも、田舎独特の、のどかさはない。

 活気のかの字感じられず、村人はみな暗く沈んでいる。

 そして何日も飯食べていないのか、ガリガリにやせ細っていた


「伯爵からの支援物資だ。ありがたく受け取れ」

 相手が村人だからだろうか。騎士の態度は尊大で上から目線である。


「ありがとうございます。これで村は救われます」

 一方の村人は、そんな視線に気付いていないのか、喜色満面の笑みを浮かべている……ああ、食糧に目が釘付けになっていて、気付かないんだな。

 まあ、プライドじゃ空腹は満たせないしね。


「同じ村の出身でこうも違うものかね……とにかくこれで約束は果たしたからな。馬車からは自分達で運べ」

 騎士は嘲笑う様な言い方で、そう言い捨てた。

嫌味全開です。運べるものなら運んでみろって言いたいんだろう。

 さっきまでの嬉しそうな笑顔は消え、村人は無残なくらい落ち込んでいる。


「それを運べば良いんすか?それなら自分に任せるっすよ!」

 現れたのは小柄な少女。銀髪のショートカットで、顔は中性的。一見すると少年の様に見るが、自己主張の激しい膨らみで女性だと認識させてくれる。

 本人は自信満々だけど、どう見ても無理だ。

(車の中に、なんか使える物あったかな……嘘だろ!?)


「あの娘、凄いですね。もう運び終えますよ」

 漫画じゃないんだぞ。少女は自分の数倍はありそうな量を悠々と運んで行く。

 村人は熱狂しまくり、一方の騎士はあんぐりと口を開いている。


「アルエット様、ありがとうございます」

 様?あの子、良いとこのお嬢様なんだろうか?


「任せるっすよ。このアルエット・エクレレは未来のプリンセスガードなんすから」

 プリンセスガード?まさか、ここでその名前を聞くとは。

 なんとかしてアルエットさんから話を聞きたい……でも、いきなり知らないおっさんが話し掛けてきたら警戒されるだけだ。


「風野さん、エクレレさんに話し掛けてもらっても良いですか?」

 漫画やラノベの主人公なら、臆せず話し掛けて好感度をアップさせていただろう。

 でも、ああいう人達は見た目が良く第一印象が良い……でも、俺は第一印象がマイナスでなければラッキーってタイプなのだ。

 年齢が近い風野さんが話し掛けた方が、上手くいくと思う。

 陽向、早く来て。お兄ちゃんは風野さんに話し掛けるだけで、綱渡り状態なんです。


「大丈夫ですよ。任せて下さい……ちょっと良いですか?貴女、凄い力持ちなんですね。私、驚いちゃいました」

 若い女の子って、凄いな。フレンドリーに話し掛けても、警戒されないんだもん。


「自分は怪力のスキル持っているんすよ……おじさん、その剣どこで手に入れたんすか!」

 アルエットさんが食い付いたのは、リオンさんからもらった剣。

(この剣って、そんなに凄い物なのか?)

リオンさんに何を返したら良いんだろう?


「知り合いから頂いたんですよ。リオンさんって方なんですが……」

 リオンさんの名前を聞いた途端、アルエットさんの表情が一変した。


「リ、リオン様に会ったんすか?いつ?どこで?アルエット元気か?とか、アルエット愛しているとか言ってなかったすか?」

 アルエットさんのプレシャーが凄い。まあ、リオンさんはイケメンだから若い子に人気があっても不思議じゃない。


「えっと、ウォール伯爵様のおし……むぐっ!」

 お城と言おうとした瞬間、口をふさがれ無理矢理顔を抑えつけられた……怪力のスキル怖い。


『そこにウォール伯爵の騎士がいるんすよ。ほら、怪しい目で見てるじゃないっすか!』

 そりゃ見えるよ。若い女の子が、おっさんを抑えつけいるんだもん……やばい、意識が遠くてなっていく。


「おい、お前。そいつ、うちの客人なんだけど……顔色がやばくないか?」

 騎士さん、ナイスフォロー。危うく花畑に行きかけました。


「ふぉー、知らないおじさん、ごめんです」

 アルエットさんは、ようやく俺の事態に気付いてくれた様で手を離してくれた。


「だ、大丈夫ですよ。こんなキモいおじさんに当然話し掛けられたら、怖いですもんね」

 自虐的過ぎるが、これ以外回避する方法が思い付かない。


「おいおい、気を付けろよ。せっかく異世界から呼んだのに、来て早々セクハラが原因で殺されたなんて笑えないぞ」

 いや、話し掛けただけでセクハラ認定なんて笑えないんですが。


「そうですね。後からきちんと陽向ちゃんに叱ってもらいます。それではありがとうございました……アルエットさんも、ちょっと来てもらえますか?」

 風野さんはそう言うと、俺の手を引いて騎士から離れていく……風野さんも俺に話し掛けられて迷惑だったんだろうか?


「ちょっと、どこまで行くんすか?自分は大事な任務があるんすよ」

 風野さんに連れられてやって来たのは、村から離れ所にある袋小路。四方を崖に囲まれていて、周囲の目がとどかない。

(随分急な山道だな。真っ直ぐだし、こけたら大惨事だぞ)


「ここまで来れば大丈夫ね……お兄さん、セーフティゾーンを展開してもらえますか?」

 そうか、騎士に話を聞かれない為に、ここまで来たのか。

 袋小路は車召喚が出来そうな広さがあった。まずはアルエットさんを登録してから、車を召喚。


「な、なんすか!?この巨大な箱は!……あの噂は本当だったんすね。貴方達は魔王を倒す為に、異世界から召喚されたんすよね」

 そうそう、魔王を倒す為に……やっぱり、そういう事だったのか。


「アルエットさん、情報交換をしませんか?」

 そこから俺達はお互い持っている情報を交換した。

 アルエットさんは騎士の娘で、セキュリア王国の王女の幼馴染みだとの事。それもあって、プリンセスガードを目指しているそうだ。


「ウォール伯爵信じれないっす。いくら緊急事態だとはいえ、異世界召喚を行うなんて……異世界召喚は禁止されているんすよ。だからリオン様は潜入捜査に行ったんすね。王様の信頼が厚いっすもね」

 異世界召喚は法律で禁止されているらしい。でも、ウォール伯爵が怪しい動きをしているって噂が流れていたそうだ。


「ところでデバイアって、なんだか分かりますか?」

 ヨバンの口ぶりだと、デバイアが召喚を行う原因の一つに思えるんだけども。


「デバイア皇国。うちの同盟国っすよ。セキュリア・デバイア・ダルフォの三国で魔王軍と戦っているっす。デバイアの王子様がいるから、魔王ジーレストと戦えているんすよ」

 なんでもデバイアの王子のスキルは完全パーフェクト幸運ラッキーといい、奇跡の様な幸運が連発するそうだ……なに、その俺に喧嘩を売っている様なスキルは。


「こりゃまた面倒な事になったな……ところでアルエットさんとリオンって、どういうご関係なんですか?」

 多分みんなを完全に取り込むまで、魔王の事は伏せておくつもりなんだろう。

(今騒いでも全員を食わせる手段もないし、日本にも帰せない。結局、実力をつけるしかないのか)


「リオン様は自分の婚約者っす。でも、子供扱いして、全然相手にしてくれないんすよー!」

 まあ、実際子供な訳だし。ここでそれを言う程、野暮じゃありません。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] ホルモン? 「フェロモン」もしくは「匂い物質」が正しいのかな。 もしくは、本当にゴブリンは死ぬときに独自の内臓をまき散らし、敵対者を内臓まみれにしてしまうのか。
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