たまご売りのおばさん
私が幼少の頃から繰り返し見る夢がある。
いつ頃から見始めたのか、憶えていない。
私は幼稚園児である。
立て替える前の実家の広間。
時間は、おそらく日曜日の午後。
家族そろってテレビを見ていると、玄関の呼び出しがピンポンと鳴る。
母親がはーいと返事をして対応に出る。
私は母親の足にしがみついて、一緒に玄関に立っている。
ガチャリとドアが開くと、真っ青な顔をしたおばさんが立っている。
ひょろひょろで、紫色に白い花がたくさん描かれたワンピースを着ている。
白髪が少しまざった、耳の下くらいまでの髪。
その大きな目は、白目がない濃い緑色。
手には、かごを持っていて、そこに白いハンカチがかかっている。
「たまごをかってくれませんか」
そのおばさんが言う。
その後、私のほうをちらりと見て、
「ねえ」
と言うのだ。
私は怯えて、母親の後ろに隠れる。
そうすると、場面が変る。
私たち家族は、ブラックジャックの家の様な、断崖絶壁に立つ家に引っ越している。
そうして祖父が
「もう安心だな」
と言うと、ピンポンとドアの呼び出しベルが鳴る。
部屋の窓からそっと玄関を見ると、あの、たまご売りのおばさんが立っているのだ。
そして、そこで、目が覚める。