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異世界行って、騎士団長やります!   作者: 神崎冬花
王国活動編
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7話 魔道士として

 パーティメンバーが4人になり、剣士2人に魔道士(ウィザード)1人プリースト1人のバランスのいいパーティになった。

 男1人に女3人。そこで私は1つ思ったことがある。


 異世界転移したのに逆ハーレムになっていない、と。


 いや別に逆ハーレムをしたかった訳ではない。ただこの手の小説って同性が1人もおらず異性しかいないハーレムイベントが多い。だから私にも逆ハーレムイベントがあるかと思っていたのだが……。


 話は変わるが私達は今クエストに来ている。薬草の採取クエストだ。指定量は無く、時間内にどれだけ薬草を採れるかというクエストなのだが。


「すごいですキノさん! 私採取クエストでこんなにいっぱい採ったの初めてです!」


 私はマリアから尊敬の目で見られていた。

 

 1つに固まったらあまり量が採れないからという理由で、私とマリア、マーガレットとユーリという分担で2手に分かれて薬草を採取していたのだが、私が行く所全てに薬草があるので、マリアは私をまるでスターを見るような目で見てくる。


「まあね、私ぐらいになると運も味方の内ってやつさ」


 かっこつけて言ったが実はナビ子さんが薬草があるところをナビゲートしてくれているだけだ。

 その御陰で私とマリアが背負っている籠は、まだあまり時間が経ってないのにもう満杯だ。


「すごいです! 私、一生ついて行きます!」


 半ばズルなのだが、そんな目で見られるとなんだか心が痛い。


「ま、まあこんなものだよ。もう入れられないからマーガレット達の所に――」


 行こうか、と言おうとした瞬間轟音が森の中に響いた。


「⁉ な、なに今の⁉」


 思わずマリアに問うてみたが、今の爆発音はどこかで聞いたことがある。


「い、今のは多分マーガレットの魔法の音です…!」


 このクエストは討伐クエストではないので危険なモンスターはいないはずだが、ユーリがいるのに魔法を使うということはかなり危険なモンスターが出たということかもしれない。


「行こう!」


 私達は黒煙が上がっている場所に向かい駆けだした――



△▼△▼△▼



「なにこれ」


 現場に着いた私の第一声はそれだった。

 中心部には巨大なクレーターがあったそこには黒い焼け焦げたような痕があった。

 そして地に伏したユーリと良い感じにこんがり焼けたマーガレット。

 

 もう一度言おう。


「なにこれ」


 2人を回収した私達はギルドに帰った。



△▼△▼△▼



「マーガレットを鍛えます」


 報酬を受け取った私は3人、特にマーガレットに向け告げた。

 報酬は10万シル。普通採取クエストではこんな額でないのか、受付の人が驚いていた。


 私の言葉を聞いたマーガレットはおそるおそるといった感じで私に尋ねてきた。


「き、鍛えるってどういう意味ですか?」

「言葉の通りです。マーガレットを鍛えます。ちゃんとした魔法を撃ってもらうための特訓です」


 ラノベとかだと暴走魔法少女が萌えるのかもしれないが、知ったこっちゃない。これ現実だともの凄く非効率だ。3回に1回は暴走するとか、もはや爆弾だ。……なんか前も同じ事言った気がする。


「剣士に魔法教えて貰う魔道士(ウィザード)って……」


 マリアのその呟きでマーガレットが涙目になった。


「そういえば、聞きたかったのですが、キノさんってなんで魔法を使えるのですか?」

「逆にユーリは使えないの?」


 私の言葉にユーリは何言ってんだこの人という顔をし、


「魔法というのは本来魔道士(ウィザード)かプリーストしか使えませんよ? 剣士が魔法を覚えるなんて本来ならあり得ませんよ?」


 魔法全種使えるんだと言った日にはどんな反応するのだろう。私とても気になる。

 まあそれは置いといて。


「じゃあ3人ってどんなスキル持ってるの?」


 その瞬間3人だけではなく、ギルド全体の時が止まった。

 

 え。私なんかまずいこと言ったかな。


「あ、あの今スキルって言いましたか?」


 今まで黙っていたマーガレットが、おそるおそるを超え、怯えながら聞いてきた。


「は、はい」


 その様子になんだか怖くなった私は尻すぼみになって答えた。

 

「じ、じゃあキノさんってスキルを持ってるんですか?」

「う、うん。4つくらい…」

『4つ⁉』


 ギルドにいる者全員驚愕の声を上げた。それはもはや絶叫に近かった。


「キ、キノさん4つって本当ですか⁉」


 ユーリが興奮気味に言ってくる。


「う、うん。『怪力』と『加速』に『強靱』。あと『攻撃予測』も」


 ナビ子さんは伏せておいたが再びギルドの時が止まった。


「お、おい俺スキル持ちなんて初めて見た」

「そりぁそうだろうな。スキルなんて王国騎士団の幹部級ぐれぇしか持ってねえはずだ」

「ただ者じゃねえと思っていたがまさかこれほどとはな」


 周りの冒険者が私を畏怖や、興味の視線で見てくる。


「キ、キノさん、スキルっていうのは1000人に1人しか発現しないと言われる超人的な力のことですよ⁉ しかもそれを4つって……」


 ユーリが頭を抱えだした。

 えぇ、ちょっ、なにこれ。


 私が困惑していると、マリアは私をもはや神でも見るかのような目で、


「す、すごいです‼ スキルを4つも覚えているなら魔法も覚えてるのも当たり前に思えてきました!」


 スキルってそんなすごいの? 私としてはナビ子さんが秒で覚えさせてくれるから、そこまで価値高くなかったんだけど。


 私はこの収拾がつかなくなった場所から逃げ出すため口早にマーガレットに告げる。


「じ、じゃあマーガレット、魔法の使い方教えてあげるから訓練所に来てね!」


 私はその場から逃げた。



△▼△▼△▼



「ええと、まずはマーガレットの得意な系統の魔法って炎熱系の魔法だよね」

「は、はい」


 私はギルドにある訓練所でマーガレットに魔法を教えていた。

 周りにはユーリやマリア以外にも、冒険者達が私達のことを酒を片手に見ていた。正直恥ずかしいが致し方ない。


「炎熱系の魔法は基本的に一番簡単に出せるから、魔力制御が苦手なマーガレットでもすぐにできるよ」


 実は私、魔力制御なんてできないのだ。それではどうして魔法を撃てるのかといえばそこら辺は全部ナビ子さんにやって貰っている。


「こ、コツとかはありますか?」


 マーガレットも周りに見られて恥ずかしいのか頬を朱に染めながら尋ねてくる。


「コツ? ええと、なんかこう、魔力をぎゅっと中心に集めてドカーンと吹っ飛ばす、的な」


 うんごめん。私語彙力無いの忘れてた。

 

 それでもマーガレットはコクリと頷き。


「や、やってみます!」


 大きな声で答えてくれた。


 ええ子や……。



△▼△▼△▼



 それからマーガレットの特訓の日々は続いた。


 それは明くる日の早朝に。

 それは雨の日の午後に。

 それはクエスト後の夜に。

 それは……。


 ……。

 ………。

 ……………。


 「『火炎魔球(ファイアーボール)』‼」


 マーガレットの声と共に放たれたそれは、大きすぎず小さすぎずの大きさで、耐火制のカカシに直撃し、辺りに轟音をまき散らした。

 カカシは耐火制にもかかわらず半ばから無くなっていた。

 これは……。


「せ、成功しました! キノさん、私やりましたよ‼」


 マーガレットはそう言って私に抱きついてきた。


「やったねマーガレット! これでマーガレットもちゃんとした魔導士(ウィザード)だよ!」


 マリアも私達の方に走ってきて私ごと抱きしめた。

 ユーリも歩きながらマーガレットの肩を優しく叩き。


「良かったな、これでもうお前が責任を感じることはない。これからは自信を持って生きろよ」

「はい……‼」


 マーガレットは泣き笑いの表情でユーリに微笑んだ。

 そしてマーガレットはもう一度私の方を向いて。


「キノさん、本当にありがとうございました。私、これからは皆のことをちゃんと守っていけるよう頑張ります!」


 そう言ってマーガレットはもう一度私に抱きついてきた。


 周りから拍手の音が聞こえる。冒険者達が涙ぐみながら拍手喝采をしてくれたのだ。


 私はなんだか異世界に来て一番異世界っぽいことをしている気がする。


 マーガレットが魔力制御を覚えるまでの1ヶ月間。その数字もなんだかちっぽけなものに思えてきた。


 私はマーガレットの背を優しく撫で、そして――




「あ、あのぉ」




 訓練所の入り口から声がした。そちらを振り向くと、いつもお世話になっている受付のお姉さんがいた。


「感動の雰囲気の所申し訳無いんですけど……」


 そう言って私に近づき1枚の紙を差し出してきた。


「ここ1ヶ月間の訓練で破壊したカカシや壁などの修理代を全てでは無くていいので払ってもらえれば嬉しいのですが……」


 私の表情を見て、冒険者達は金額を察したのか押し黙る。

 その紙にはこう書かれていた。


 

 『弁償金  50万ユグドラシル』



 私の全財産ほぼちょっきりだ。


 私は紙を握りしめ決意する。





 この世界を創った奴しばく、と。






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