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異世界行って、騎士団長やります!   作者: 神崎冬花
王国活動編
5/64

4話 冒険

お久しぶりです

 私は建物の中に入った瞬間、周りの視線が私に集まった。

 周りには、ガゼル顔負けの強面の男や、弓を背負っている者、その他大勢が私を見ていた。

 こ、怖い……。ボッチでコミュ障な私は注目されるだけで冷や汗をかくという能力を持っている。つまり今のこの状況、私にとっては地獄なのだ。

 

 そんなことを考えていると、私の近くにいた金髪の男が私の目前に立っていた。

 年は20代前半だろうか。痩せすぎず、太りすぎずと言った、中々の美青年だ。

 金髪の男は私の全身を隈無く見ると、おもむろに口を開いた。


「おい、嬢ちゃん。ここがどこかわかってんのか? ここは冒険者ギルドだ。ガキが来るところじゃねえんだよ。わかったらさっさと失せな」


 むむ、これは異世界定番のなめられるというやつなのだろうか。

 これ、ラノベとかだったら今からボッコボコにして格の違いを見せるとかそんなイベントなのだろうが、さてどうしよう。私は身体能力が高いというわけでも無く、ましてはチート能力も持っていない。この状況を切り抜けるにはどうすればいいのだろうか。

 

「お前が着てる装備、中々のものだな。どこで手に入れたのかは知らねえが、嬢ちゃんが持ってていいもんじゃねえな」


 なんか私の装備のこと言ってきたぞ。やはりこの装備ってなんかすごいのか。ガゼル、これ私に売っちゃってよかったのかな。

 持ってていいもんじゃないと言われても、私が買ったんだし、そういえばガゼルがこの装備について何か言ってたな。何だっけ。確か神器がなんとか。

 

「おい、なんか言えよ。聞こえねえのか? 嬢ちゃんはここにいるべきじゃねえ。さっさと帰んな」


 そんなこと言われてもなぁ。


「ええと、すいません。私どうしても冒険者にならなきゃならないんです」


 別に絶対に冒険者になりたいという訳ではないんだが、異世界にまで来て商業者とかにはなりたくない。

 そんな理由なのだが、何故か男の額に青筋が走る。

 あっ、怒ってますねこれ。なんでだろ。


「ほう、嬢ちゃん。俺に逆らうとはいい度胸してるな。一回痛い目見ないとわかんねえか?」


 そんな横暴な!

 私は助けを求めるべく周りに視線を向ける。

 周りは私と目を合わせないようにそっぽを向いている。

 ちくしょう! この人でなし!

 あわわわ。ど、どうしよう痛い目とか言ってたから殴られるのかな? 流石に女の子は殴らないよね?


 あっ、なんかこの人腕振り上げてる!

 このままじゃ殴られる、ちょっ誰か! 誰か助けてえ!


 そんな私の悲痛な心の叫びが聞こえたのか、私の頭の中から先ほどの謎の声が聞こえてきた。


《要望『攻撃をよけたい』確認しました。スキル『攻撃予測』を習得しました。使用しますか?》


 えっ、あっはい?

 そんな疑問に満ちた承諾をした瞬間、私の視界に妙な物が映る。

 白い光を放つリングが幾つか重なり、私の顔面を最後に、止まっている。

 え、なにこれ。もしかしてここに攻撃が来るとか……。

 

 私はそのリングがあった場所から顔を横に向ける。

 瞬間私の顔面すれすれを突風が通った。

 つまり、男の拳が私の顔があった場所にあったのだ。

 どうやらあのリングは攻撃が来るところを教えてくれるようだ。

 ていうかこの男、女の子の顔を殴ろうとしてきたんだけど!

 寸止めとかじゃない。本当に殴ろうとしてきたのだ。


「ほう、これを避けるとは。運がいい奴だ。だがマグレは2回も起きねえぞ」

 

 そう言った途端私の視界に再びリングが現れた。今度はみぞおち。

 私は今度はそこから大きく後ろに跳躍した。

 そこに再び拳が通り過ぎる。

 この男、人体の急所狙いすぎじゃない?


 男は苛立ったように大きく舌打ちする。男の腕に血管が浮かび上がる。

 今度は視界にリングが複数現れる。

 

 まずいこれは躱せない!

 私は直撃するのを覚悟して腕を前に突き出す。

 その瞬間、ボキッ、という嫌な音がギルドに響き渡る。

 あぁ、腕折れちゃったか。慰謝料ぐらいは出してくれないかな、とそんなことを考えていると私は違和感を覚える。

 痛みがいつまでたっても襲ってこないのだ。じゃあさっきのは一体何だったのだろう。幻聴? それとも――


「ぐああああああああ‼」


 そんなことを考えていると、野太い叫び声が聞こえた。

 前を向くと男が右手を押さえて蹲っていた。その手首は人体の構造上曲がってはいけない方向に曲がっている。

 え?どゆこと?私が状況に戸惑っていると周りから、


「な、なんだ⁉ 今あの娘何をした?」

「わ、わからない。俺にはただ腕を突き出しただけの様に見えたが……。何者だあの娘」


 何もしてないんですけど。また筋肉モリモリマッチョマンって思われてるのかな?

 そこで私は思い出した。私は今鎧を着ていることを。

 男を見ると、武装解除しているのか軽装だ。手甲を素手で殴ったら痛いだろうなぁ。

 ここは逃げるが勝ちだろう。そう思い、私はばれないようにその場を後にした。



△▼△▼△▼



 私は受付のお姉さんに話しかけていた。


「あの、冒険者になりたいんですけど」

「あ、はいわかりました。登録手続きをするので、これに記入をお願いします」


 私は紙を受け取り紙に書かれている内容を見る。

 名前、年齢、性別、出身地、特技。この5つだ。

 書ける所まででいいらしいので、出身地と特技以外を記入する。

 余談だが、文字も見えるようになっていた。

 視界に入れた文字頭の中で日本語に変換するのだ。

 文字はというと、書こうとした文字が頭の中で表示されるので、問題ない。

 本当、一時はどうなるかと心配したが問題ないようでよかったよかった。


 受付のお姉さんは紙を眺め終えると、私を見た。


「はい、キノさんですね。職業は何にしますか? 剣士、重戦士、魔道士(ウィザード)、アーチャー。他にも色々ありますが、如何にしますか?」


 ふむ、無難に考えたら剣士だろうが、私は非力なので大丈夫だろうか。

 重戦士は論外、アーチャーも無理だろう。魔道士(ウィザード)気になるけど魔力とか使うだろうし、そこまで期待出来ないな。あっ、ていうかレイピア買ったんだった。


「剣士で」

「はい剣士ですね? ギルド一同、貴女の活躍に期待しています。頑張ってください!」

「あ、はい」


 なんか生返事になってしまったが、まあいいや。とりあえずクエスト受けよう。

 私はクエスト盤に向かおうとしたが、


「あ、あの」


 どこかから、か細い声が聞こえた。私は後ろを振り向くと、2人の少女がいた。

 1人は、金髪碧眼のローブに身を包んだ可愛らしい少女で、もう片方は赤髪に金色の瞳の僧侶みたいな服を着たお人形みたいな女の子だ。

 年は私と同じか、年下ぐらいの見た目で、怯えた様子で私を見ていた。


「貴女はさっき、男の人を倒した人ですよね?」


 あ、うん。私だそれ。間違いなく私だ。

 私に話しかけてきた金髪の少女は何故かきらきらした瞳で私を見てきた。


「そ、そうですけど」


 私がそう言うと2人は意を決した様に息を吸い込み、


「「わ、私たちと一緒にクエストに行きませんか!」」

「あ、はい」

「「即答⁉」」


 何故か驚かれた。

 



△▼△▼△▼



 私たちは森に来ていた。クエスト内容はゴブリンを10匹退治するというものだ。

 ゴブリンと言えば、異世界でもゲームでもメジャーな生物だ。

 私は森を見回しながら聞こえてくる声に耳を傾けた。


「わ、私の名前はマーガレットと言います。職業は魔道士(ウィザード)です、よろしくお願いします」

「私はマリアと言います。僧侶(プリースト)をやっています」


 2人の自己紹介を聞いていた。金髪の方はマーガレット、赤髪の方はマリアというらしい。可愛らしい名前だ。私ももうちょっと名前真面目に考えた方がよかったこもしれない。


「よろしく。私はキノ。剣士をやってるよ」

「「よ、よろしくお願いします。キノさん!」」


 2人は何故か緊張しているようだ。


「ええと、なんでそんなに緊張してるの?」


 私がそう諭すとマリアは何故か勢いよく食いついてきた。


「だ、だって! キノさんはあの男の人を一撃で倒したんですよ? あの人は素行は悪いですけど、実力は確かだったのに……。それを一撃ですよ? すごすぎますよ!」


 お、おう。そこまで言われると照れ……あれ? やっぱり筋肉モリモリマッチョマンって思われてた!

 軽いショックを受けたが、気になることがあった。


「2人はなんで私を仲間にしたいと思ったの?」


 そうこれが疑問だった。冒険者になったばかりの私より、それこそさっきの男の方がよっぽど強かっただろう。

 私の疑問にマーガレットが答えてくれた。


「周りの冒険者は男の方ばかりなので、少し怖かったんです。そこにキノさんが現れて、それで誘いました」


 なるほど、そういう理由か。

 気持ちはわかる。

 


 私たちがしばらく喋っていると、茂みの奥からうめき声が聞こえた。


「ゴブリンです。気をつけてください」


 マーガレットの警告を聞きながら、私はレイピアを抜いた。

 戦闘態勢に入っていると茂みから、数体の影が飛び出した。

 そこに現れたのは肌の色が緑色の小鬼だった。

 なるほど、ゴブリンだ。

 さっき喋っていた時に決めたが指揮者、つまりリーダーは私になった。

 私は2人に指示を飛ばす。


「マリアは後ろで待機、マーガレットは私が囮になるから、魔法が出来たら私が合図するまで待機。合図したら一気にぶっ放して」


 私の指示に2人コクリと頷く。


 さきほどわかった事だが、魔道士のマーガレットは炎熱系統の魔法を得意とするそうだ。マリアは回復魔法と、神聖魔法が使えるらしい。

 神聖魔法は悪魔や、アンデッドにしか効かないようなので、後ろで待機させ、怪我をしたら治してもらう役にさせた。


「来い、ゴブリン共め!」


 私がそう叫ぶとゴブリン達は私に向かってきた。ゴブリンの数はちょうどクエストと同じ数の6体。

 はっきり言ってゴブリン6体に突撃されるとただの恐怖でしかない。

 だが私には『攻撃予測』という能力があるので攻撃は簡単に躱せる。


 何回か繰り返していると後ろから声が聞こえてきた。


「魔法準備出来ました!」


 その声を聞き私はレイピアを横薙ぎに振り、ゴブリン達から距離を取る。


「撃って、マーガレット!」


 私はそう告げると何だか嫌な予感がした。

 マーガレットの方を見ると、マーガレットの周囲から薄紫色のオーラが漂う。


 そしてマーガレットは閉じていた目を大きく見開くと、


「行きます! 『火炎魔球(ファイアーボール)』ッ‼」


 瞬間、轟音、爆発。

 鎧越しでもわかるその熱気に私は耐えながら、魔法が炸裂した場所を見る。

 そこには巨大なクレーターが出来ていた。

 そしてその中心にはゴブリンだったと思われる黒焦げになったぼろ雑巾のような物があった。

 

オ、オーバーキルにも程がある。


 私は2人の方を見ると何だか微妙な表情を浮かべていた。

 私はマーガレットの方を見ると、マーガレットは気まずそうな顔をし、


「じ、実は私魔力制御が出来なくて……」


 嫌だ、その先は聞きたくない。

 だが私の思いは届かなかったようだ。






「魔法が暴走してしまうのです……」










 

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