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如是我文  作者: 葉倉千緒
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善哉善哉善男子

ネオガイア。そこは剣と魔法、現代科学が混在した世界。人間と、精霊や獣人などの亜人種が溶け合った世界でもある。




 ネオガイアの大陸東部の海に浮かぶ列島の国家、ジパング。この国は隣国の大陸国家・大清(だいしん)共和国の影響を長きに亘って受けつつも、独自の文化を育んできた歴史ある国だ。


 その歴史は中世、侍が政権を握り、一部の国を除いた諸外国との交流を断絶していた鎖国の時代が長かった。

 

 しかし、新大陸の強大国家・ガレンスタイン合衆国のペルリ総督とハリッシュの交渉により開国。開国以降は侍政権からジパング皇室に政権が渡り、諸外国の文化や技術を取り入れた新しい文化を形成していった。


 時はネオガイア暦で1980年代。世界戦乱に敗北後、ジパングは皇室政権から市民による国民主権国家になった。戦後復興を経て、ジパングが経済的に高度成長を遂げて絶頂期の時代だ。


 ジパング首都・新東京(ネオトキオ)。首都を守る警視庁の休憩室。一人の男がくわえタバコでテレビのニュースを眺めていた。女性キャスターが原稿を読んでいる。


『……次のニュースです。当時3才の女の子、吉田友紀乃(よしだゆきの)ちゃん誘拐事件から今日で7年が経ちました』

「……チッ」


 くわえタバコのまま、男は小さく舌打ちをした。徐々に眉間に皺が寄っていく。


『警察の懸命な捜索が続けられていますが、依然……』


 キャスターのナレーションに、背景では7年前の事件現場が映し出される。


『友紀乃を…… 友紀乃はっ…… お願いです! 友紀乃を見つけて下さい! 情報をっ……情報を下さい!』


 涙ながらにインタビュアー、そして視聴者に訴えかける誘拐された女児の母親に画面が変わる。これも7年前の事件当時のものだ。


『……はい。7年経った今でも我々、特報ニュースでは事件に関する情報を受け付けております。テレビをご覧の皆様、どんな僅かな情報でも構いません。事件解決のため、皆様の情報をお寄せ下さい。お待ちしております』


 スタジオに戻った画面で、女性キャスターが視聴者に向かって一礼した。

「チッ……」


 灰皿の縁で灰を叩き、男はまた舌打ちをした。男の顔にあからさまな「不機嫌」の表情が張り付いている。


「俺らだってお待ちしておりますよー、だ…… 7年間も辛抱強く」

『それでは一旦、コマーシャルです』


 パーンアウトでスタジオのニュース番組からCMに画面が変わった。


『とるねえずの生でグダグダ言わせて! 今夜の特集は〜! 今話題のアリフ・イデア教の尊氏の麻生智彰(あそう・ちしょう)氏がスタジオに登場! 霊能力者・豊田無等(とよた・むどう)と……』

「チッ!」


 3度目の舌打ちだ。今度は盛大に炸裂した。


「下らねえんだよ」


 苛立ちながらテレビの主電源ボタンを押すと、髭面で長髪の汚らしい男が消えて画面は真っ黒になった。


「さーて、と……」


 男は左腕の腕時計に目を遣る。長針は11と12の中間辺りを指していた。


「休憩、終〜わりっと……」


 そう呟きながら男は灰皿にタバコをもみ消すと、休憩室を後にした。


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