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不屈の勇者を襲う腹痛の物語  作者: 私はひどい下痢です
1/4

世界を救うまであと30分

@@@@@@注意@@@@@@


この物語では下ネタ等の

大変見苦しい表現が続きます。


苦手な方は戻るボタンをクリックして

速やかに最寄りの小説画面に

避難をしてください。


苦情は受け付けませんので悪しからず。






















子供のころは人気者で、俺はクラスのヒーローだった。

運動もでき、勉強もでき、喧嘩も強くてイケメンだった俺はいつもクラスの注目の的だった。


そんな順風満帆だった、いきがったガキの俺はある日を境に急激にそのピラミッドの底辺に身を落とした。



中学の終わりまでは順調だった。

それが今じゃなんやかんやで受験に失敗し、髪を染めてゲーセンに足を運びコンビニに屯する一端の不良の一人。

だがそんな今も意外と悪くねぇ。


大人のご機嫌伺ってよい子ちゃんしていたあのころとは違い、自分に素直に生きていけるみてぇな。

そう、自由な感じなんだよ。


バイトして小金には苦労してねぇし、昼間っから眠りこけたり

遊んだりナンパしたりなんて夏休み気分が毎日味わえるなんて最高だろ?


そんな俺にも最近一つ悩みが一つある。

まぁそんな小市民の戯言だ、大した話じゃない。

グラス割ってバイトがクビになったとかヤニ吸ってるのがバレて補導されたりとか、馬鹿な大人の付き合いに振り回されてることぐらいか?

そのうちちゃんとガッコ通ってまともになねぇといけねえ時がくるかもしれねぇな・・・とか、そんな些細なことだ。


それよりも俺が今抱えている一番の悩みは

ああチクショウ、またアレが来やがったか・・・

俺の鍛え抜かれた腹筋をもってしても、内側から湧き上がるこの衝動を抑えることはできないのか?


ガァ、クソッ


便所だ便所!!



俺は不安に駆られると腹痛に陥る。

あの時だってそうだ・・・受験の時にぃ・・・面接で緊張さえしなけりゃぁ・・・・

俺は一つ、持病とも呼べるソレを抱えている。


過敏性腸炎


大ぴらには言いたくねえが俺は高校受験の日、面接のときにあろうことかソレでクソを漏らした。


多少の不安と、大いなる自信の前に、やつは俺の不安を一気に食い破って生まれてきやがった。



迫りくる順番

今行けば間に合うか?!

だが今日の大事な試合を前に、そんな無様さらせるわけねぇぜ!



そんな侮りを前に俺が決勝スタジアムに足を運び入れたとき。奴は突如湧き出た強大な敵となった。



面接の緊張は吹き飛び、

波のように襲い掛かる腹痛。


面接官の質問を前に、やつは妨害をするかのごとく襲い掛かる。


終盤は質問に答えるよりも前に、そいつを押しとどめることに精一杯だった。



そして、試合終了のゴングが鳴り響く瞬間―



「はい結構です、結果発表は後日行いますので。

本日はお疲れ様でした。」



ブボボ(`;ω;´)モワッ



下着の重量が増していく。


燃え尽きちまったよ、真っ白にな・・・



それから後のことは、あまり覚えていない。






保険の私立もソリが合わずに止めちまったが関係ない。


今の俺は授業中にトイレに足を運ぶ決断をせずとも、自由に出したいものが出せるんだ!





薄らと嫌な汗が噴き出してきやがった!

だが残念だったな!オアシスはあと少しで目の前に。




あ"ン?


清掃中だと!?



ふざけるな!そんなチャチャ入れてくるんじゃねぇ!!



戸惑うことなく俺はトイレに入って、そして・・・





― は?




無我夢中で足を運び入れると、そこは既に俺の見知った光景ではなくなっていた。


おかしい・・・男子用の小便器は?それよりも用があるのは個室ッ!

チクショウ、何がどうなって・・・




「王様、成功しました!!」


「フム、よくやったぞお主。特別に褒めてつかわそう」


「ありがたき幸せ」



どういうわけか俺がトイレだと思って入り込んだところはどっかの教会の広間みてぇなところだった。



「フム・・・して勇者よ、顔を見せるがよい?」




あ?何だこの偉そうなオッサン。




「ふむ、なかなかにふてぶてしい面構えをしておる、まあ良い。

君、彼に例のモノを。」


「畏まりました。」



すると偉そうにふんぞり返って椅子にもたれ掛っていた姿勢の悪い中年の隣の、何やら鍛えてそうな

厳つい兄チャンが何かをもってこちらに向かってくる。



「これからあなたにはこのウォーシュレット皇国の勇者として、魔王を討伐する旅に出てもらうことになります。」



・・・何言ってるんだこの男?

そんなことよりも俺に差し迫ったタイムリミットは確実に迫っているんだ、こうしてはいられない。

俺が踵を返し、そして新たなる便器を探すために一歩を踏み出すと、その男は目の前に立ちふさがりこう言った。



「・・・話を、聞いて頂きませんと。」



男を無視し、俺が右に、左に体をそらして目の前の障害を潜り抜けようとするが、ヤツは進もうとする俺の前に動きをかぶせて妨害してくる。


結構タッパも入ってるし、鍛えられたその男はなかなかの手練れだろう。

構が堂に入ってやがる。

それに加えて俺にはタイムリミットもある。

だが俺の進行を阻み、怒りを買ったこいつには負ける気がしねぇ!

いいぜ、相手になってやるよ。




「上等だぁ、ミンチにしてやるよ!

痛い目見たくなかったらソコを退けやァー!!」




俺はヤツに殴り掛からんと―


ブクブクブク



出来なかった。

なぜならヤツは俺が殴り掛かろうと声を上げた瞬間、気絶したからだ。



おいおい、これはとんだ肩すかし野郎だな。

小防でも「うわぁぁぁん、か〜ちゃん!」と泣き叫ぶ元気があると思うぜ。

うわ~恥ずかしいヤツ。



ふと見れば、先ほどのおっさんも、その周りに侍らせていた男女も怯え立ちすくんでいる。

なんだこれ?ドッキリか?

だがそんなことはどうでもよい、こうしている今も俺の中の魔物は暴れ出そうとしているんだ。


俺は再度振り返り、その重たそうな扉を開けようと足を運ぶと




「お待ちください!!」



必死に走ってきたのかのように髪を振り乱し、汗ばんだメイド服の女。



「話を聞いてもらえませんか?」



必死の形相で床に手を突き、懇願するその女は最初見たとき困惑したわ。

だが今は本当にそれどころじゃないんだ、マジデ。



「そこを退け、俺には行かなければならない場所が・・・やらなければならない事がある。」



「そ、それはまさか啓示を受けたことなのでしょうか?」



ケイジ?

掲示・・・



ああ、

そういえばここに入る前に清掃中の看板が出ていたな、早まったかもしれない。

まずいな、勝手に気絶したとはいえ、奇妙な清掃現場の妨害をしたのかも。

あるいはなんかアレ気なビデオの収録とかで押さえていた現場なのかもしれない!!

やらかしたか?


途端に業務妨害等でポリが出張ってくる光景が頭をよぎり、不安が押し寄せる。

チクショウ、また腹痛が悪化しやがった。

横着せずにさっさと隣のコンビニに行けばよかったぜ。



「ああ、だから俺は行かないとならない。すまねぇ、邪魔したな・・・」



冷や汗をかきながら俺は腹痛を抑えるために必死になった頭で適当な言葉を紡ぐ。

早く、早くイカナイト―



すると女はハッとした表情になり、何やら細長いものと一包の革袋を差し出した。

あの細長いのは・・・デッキブラシか?

となると、あの包みの中は掃除道具かもしれない。

現場の作業員か、撮影のためのキャストでこの場を収めてやるという配慮かもしてないが

俺には一刻の猶予も残されていない。

あの日のことが頭をよぎる。



凍り付いた面接の現場


俺の番号のない発表掲示板


卒業前、実しやかにささやかれる俺の失態。


転がり落ちる勝ち組人生 ―









俺 は も う ・・・・


 二 度 と 漏 ら し た く な い ん だ !








その決意を胸に、颯爽と踵を返して全力疾走。

誰も、俺の邪魔をさせない。

こうして俺のトイレを探す冒険が始まった。

突然変貌してしまった日常の変化に気が付かぬままに・・・。





  __

Ю)__)

  \/





ウォーシュレット皇国では最近、魔王軍の台頭により飢餓や貧困

魔物の襲撃による治安悪化で嘆いていた。



魔物からの防衛、先遣隊による魔物の勢力確認

だんだん露わになってくる強大な魔王の力。

このまま勢いを増すと、我が国は滅んでしまうかもしれない。



皇国の伝承にあった勇者の儀により魔王の勢力が弱まればいいなと、異界の勇者を召喚する。


だがしかし、彼らは自らに課された十字架を背負うには、あまりにもこの国に不誠実であった。


他所から来た異世界人の常識を弁えない身勝手な行動。

かと思えば冒険にも出ずにヒキコモリだす者も多い。

思い描いていた働きはもたらされず、状況は悪化の一途をたどるばかり。


確かに召喚された勇者はそれなりのモノであったが、普段ダンジョンに潜っている腕に覚えがあるものレベル。

寝返りや死も後を絶たず、答えられぬ民衆の声に発言力が失墜するばかり。


王様はやけっぱちになっていた。そんなある日。



「王様、成功しました!!」



最早何度目になるかわからない勇者の儀

今や敵方の機先を削ぐために使い捨てられる哀れな生贄と化している勇者というシステム。

国の外で無駄に死んでしまおうと、悲しむ人間も抗議する仲間もいないのだ。

だが彼らの死は無駄ではない。


いつしか勇者の儀は国境の末端で、国の国境防衛ラインの補給戦力程度に考えられていた。

魔王軍の侵攻にも喘いでいるが、同じように人間同士の対立もある。



魔物を倒して魔王軍の戦力を削ってくれればもうけもの。

たとえ何も教えず敵国の国境にいきなり放り込んでも我関せず。

せいぜい魔王にも敵国にも混乱をもたらしてくれればよい。

その間にこちらで防御を固めるだけだ。


「フム、よくやったぞお主。特別に褒めてつかわそう」


何時のように召喚術師にそんなセリフを吐き、異世界よりいでし者を見据える。

異世界より来たりし勇者は何時も黒い毛髪に漆黒の瞳を有していたが、その者は黄金色に輝く頭髪をしていた。


だが異世界のモノがいつも奇抜であるのは日常茶飯事であるため、お決まりになったセリフを言う。


「フム・・・して勇者よ、顔を見せるがよい?」


その鮮血のような赤き瞳には確かに怒気が込められており、思わずたじろぐ。

この者はいったい・・・



「ふむ、なかなかにふてぶてしい面構えをしておる、まあ良い。

君、彼に例のモノを。」


「畏まりました。」



だがこの国の騎士団の団長を務める精鋭たる彼にかなうものなどたとえ異世界から来た勇者でも居りはしまい・・・

そうして異世界人と繰り広げられる問答。

まともに話を聞いてもらう手間も惜しいので力にモノを言わせて従わせてもらおう。

最早珍しくなくなった召喚間近の暴動も彼が収めて・・・




ゾワッ



な、なんだというのだ?!この寒気は!!


見ると私を守る一番頼もしかった彼が、床に泡を吹いて倒れておる。

こんな事態、ワシは見たことがない。


そうして混乱する王様をよそに、王の娘で、今は修行のため様々な城の仕事を体験させている少女が

あろうことか目の前の勇者に嘆願した。



「お待ちください!!」



ああ、ワシの娘とあろうものがそんな下々の、どこの馬の骨ともしらん男に頭を下げるとは・・・


「そこを退け、俺には行かなければならない場所が・・・やらなければならない事がある。」


「そ、それはまさか啓示を受けたことなのでしょうか?」



その時、ワシの頭には電撃が走った。

そうか、あの伝承の通りの容姿、強さ!もしや彼のものは・・・



「ああ、だから俺は行かないとならない。すまねぇ、邪魔したな・・・」



金髪の風貌、赤い瞳

黒衣を纏い、威圧だけで魔物を死に追いやったとされるあの勇者にそっくりのような!


ついにこの時が来た。

ぐふふふふ・・・魔物どもめ。昨日までの屈辱を晴らしてやろう。


「姫様に向けて早馬を走らせろ、我々の勝利の日は近いとな。

明日は王都に急ぎ戻り、祝杯を挙げる!

皆のモノ、今日はひとまず前夜祭とゆこうではないか」





― おおおぉォ!



最早玉座に坐した王の頭の中には勝利しか見えていなかった。

だから勇者と呼ばれたその人物が渡す予定だった鋼の剣と、支度金や防具などをもっていかず

魔王軍とも敵対国とも違う見当違いな方向に走り去っていった事に気が付かぬまま・・・



これより僅か30分の間に、世界には大いなる混乱が呼び起されるとも知らぬままに・・・

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