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   4話「覚悟を決めろ!」

 俺は武器を捨て、叫びながら後ろへダイブした。

 あちこちすりむいて痛いな。

 なんて考えている間に着弾!

 激しい爆発音で空気が、体が震える。

 同時に爆風もくる。とてつもない熱風だ。まるで熱湯をかけられているようだ。

 

 爆風が治まったところで上体だけ起き上がり、グランデの方へ向き直る。

 さきほどまでグランデ共がひしめき合っていたところは真っ黒に焼け焦げたコンクリートの上に残骸の山があるだけだった。

 ものすごい威力だな。俺も死ぬかと思ったし……

 でもあの赤黒いグランデらしき残骸が見つからない。まあ、焼けたんだろう。

 

 てか、いろいろ考えてるのもうやめよ! 今は休む!

 俺はそのまま後ろへ大の字になって倒れた。ものすごく疲れた。


 戦ってる最中は気にしないようにしてたけど、俺銃を使ってたんだよな? 簡単に動物を殺せてしまう銃を。

 しかもその銃で生き物を殺したんだよな? 生き物か分からないが。

 これからどうなるんだ? 俺は…………




「大丈夫か? 顔色が悪いぞ」

 

 茂さんが俺の肩を叩いて顔を覗きこんでくる。

 

「顔色が悪いなんてものじゃないわ。手も尋常じゃないくらい震えてるし、目の焦点もあっていないわ」


 鈴華さんも心配してくれてる。そんなに俺やばい状態なのか?


「おそらく銃の反動のせいで手が震えてるわけじゃなさそうだ。

 多分初めて動物を殺した。初めて銃を扱った。などのことで精神的にやばい状態になっているのだろう」


 龍斗さんいい目してるね。そのとおりだよ。

 

「やっぱり子供に戦わせるんじゃなかったんだわ!」

「でもこいつがいないともっと苦戦したぜ?」

「それでもよ! こんな体験絶対トラウマになるわよ!」

「いや、でもな……」


 茂さんと鈴華さんが俺の上で言い争っている。

 どうにかしないと……


「あの~、俺は大丈夫ですから」


 俺はそういいながら立ち上がった。

 

「いやでもね……っ!」


 先ほどグランデがいた場所からガラッとなにかが崩れる音がした。

 俺らは反射的にその方向を見た。

 

 あの残骸の山から腕が一本出ている。這い上がろうとしているのか?

 鈴華さんたちはすでに銃を構えてあの残骸を狙っている。お、俺も早く用意しなくちゃ!


「錬慈くんはいいから! 後ろで待機してて!」

「でもあの中生き残ったやつですよ! 俺も戦います!」

「ダメ! それにあなた手が震えてまともに銃も持てないでしょ!」


 そのとおり、俺の手はガクガクと震えており、銃はおろかペンすら持てそうにない。

 俺はおとなしく後ろに下がった。


 そうこうしているうちにグランデは姿を現した。

 ……俺が見た赤黒いグランデだ。

 やはりあいつは普通のやつらとは違ったのか……


 赤グランデはこちらをずっと見据えてる。なにかを観察しているように。

 あの赤い不気味な光のせいだろう。目があるように見える。


 茂さんたちも額に汗を浮かべ、じっと待っていた。あいつが動くのを。

 そして赤グランデは動いた。

 ゆっくりとこっちへ移動してくる。浮いているので足音などはしない。

 代わりに心臓が動く音が聞こえてくる。

 

 あまりに自然と近づいてきたのでみんな気づくのが遅れた。

 気づいたときにはもう5mも離れていなかった。

 

「う、撃て~!」


 慌てて茂さんが指示を飛ばす。

 鈴華さんも赤グランデの進行に気づき撃ち始める。

 後ろでは龍斗さんが狙撃銃で心臓を狙っているようだ。


 だが、赤グランデは撃ち始める一瞬前にものすごい速さで横へ飛んだ。一瞬で5mは横へ飛んだ。

 撃ち始めた後で気づいた茂さんたちはあいつの後を銃で追う。

 だが、もうすでにそこに赤グランデはいなかった。


「上だ~!」


 俺は精一杯叫んだ。赤グランデは横に飛んですぐ上に跳んだのだ。


 いち早く俺の声に反応した龍斗さんが上を向き、1発放つ。

 だが、赤グランデは空中で身をよじり、それをかわした。

 

 鈴華さんたちも銃を上に向けたがもう遅い。


「うおっ!」

「キャッ!」


 龍斗さんが撃ったおかげで一瞬余裕ができ、間一髪で赤グランデの右フックはかわせた。

 が、そのフックの風圧で二人は横に吹き飛ばされた。


 赤グランデは空中1mほどで停止し、続けざまに左ストレートを繰り出してきた。

 その左手を龍斗さんが狙撃銃で弾く。ガンッ!と金属がぶつかりあう音が聞こえ、赤グランデの左手が大きく弾かれる。

 

 その隙に二人は距離をとり、銃を構えていた。


 ……すごい……すごすぎる。

 今の攻防(こっちはほぼ防衛)を見て分かった。

 俺の考えは甘かった。甘すぎた。

 銃があればなんとかなると思ってた。

 出来るだけ殺さないように出来るかもなんてことも考えていた。

 

 だけど無理だ。今のままじゃ一瞬でも迷いができる。

 その一瞬で命がなくなる可能性も大いにある。

 

 ……覚悟を決めよう。そうしないと俺は生き残れない。

 俺は木箱の中の拳銃を4つとりだした。2つは手に持ってもう2つはポケットにしまった。

 今は手は震えていない。よし……


「……殺す……」


 静かに、誓うようにつぶやいた。

 そして、俺は足音をほとんどたてず赤グランデに向かって走り出す。

 もう俺に雑念はなくなっていた。頭の中にあるものは1つのみ。


(殺す……)


 俺は龍斗さんの脇を抜け、一直線に赤グランデに向かった。

 赤グランデは俺に気づき、こっちを向く。が、すぐに鈴華さんたちへと向き直る。

 俺は眼中にないってか……まあ、いい。俺は容赦なんてしねぇ。


 走りながら俺は赤グランデの頭を狙った。

 発砲音がして、赤グランデのこめかみに命中した。一瞬怯む。よし、上手くいった。

 

 続いて、すぐに攻撃が出来ないように右手を両手の銃で撃ちまくる。この時点で距離は3mほどになっていた。

 当然赤グランデは左手で俺を攻撃しようとする。さっきは見向きもしなかったのにな。


 俺はスライディングしてかわす。と、同時に下から心臓を狙う。

 2回発砲音がする。俺はスライディングから立ち上がり赤グランデの方向を向いた。


ったか?)


 赤グランデはゆっくりこっちを向いた。

 くそ! 2発とも外したか……


 鈴華さんたちは今起きているこの事態に驚き、ただ呆然と見ていた。

 無理もない。あのひ弱で何も出来そうになかった少年が、急にあんな化け物に向かって行ったのだから。しかも動きを封じたりと、頭を使って冷静に殺しにかかった。

 あの驚きようだと、鈴華さんたちは俺のことをかなり低く評価していたようだ。失礼な。


 俺は弾がきれた銃を捨てポケットから銃を取り出し、片足でトントンと後ろへ跳ね、距離をとる。赤グランデは静かに追ってくる。

 その表情は怒りに満ちているように見えた。


 しばらく、後ろへ下がり続け、もう少しで外に出るというところで走り出した。

 赤グランデの周りを円を描くように回る。距離はちゃんととってある。急に動いても反応出来るように。


 俺は周りながら2つの銃を構えた。中心の赤グランデを狙って発砲する。

 発砲した瞬間、赤グランデは両手を広げ、身を低くして(てか低空飛行)こっちに突っ込んできた。


 足をとるつもりか。そう察した俺はギリギリまで撃ち、跳んだ。

 だが、赤グランデは俺の足の一歩手前で急ブレーキ。


(しまった!)


 そう思ったときには時すでに遅く、左拳を握り締めた赤グランデが下で、俺が落ちてくるのを待っていた。

 咄嗟の判断で、俺は銃で赤グランデの左拳を撃ちまくる。少しでも威力を弱めるためだ。


 赤グランデは俺の腹目掛けて左アッパーを繰り出した。

 俺はまだ銃で左拳を撃ち続けている。


「……っかぁ!」


 赤グランデの左アッパーはきれいに腹へ決まった。俺はその拳に乗っかった状態になっていた。

 だが、予想していたより威力はない。拳を撃っていたから拳の速さが減速したのか?

 

「錬慈くん!」


 鈴華さんの声が聞こえる。大丈夫ですよ~。生きてま~す。

 心で返事しといて、俺は俺を見上げる赤グランデを睨む。

 

「ざんね~ん。このとおり生きてるよ~」


 弱弱しい声になってしまった。まあ、それはどうでもいい。

 俺は右腕を動かし、赤グランデの心臓に照準を合わせた。

 

「バイバ~イ」


 俺はニヤッと不気味に笑い、引き金を引いた。

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